アトピー性皮膚炎の慢性的な痒みに関係する神経細胞とは?

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                       
今日は、九州大学が発表した、アトピー性皮膚炎の慢性的な痒みに関わる神経細胞が明らかになった、という記事を紹介したいと思います。
         
           
●アトピー性皮膚炎に伴う慢性的な痒み ~新しい原因細胞を特定~
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2015/2015_07_21.pdf
       
         
◆概要
九州大学大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠教授、白鳥美穂学術研究員らの研究グループは、皮膚を激しく引掻くアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて研究を行い、痒い皮膚と神経で繋がっている脊髄後角で「アストロサイト(※1)」と呼ばれるグリア細胞(※2)が長期にわたって活性化していること、一方でこの活性化を抑えることで慢性的な痒みを鎮めることができることを発見しました。また、活性化アストロサイトが作り出すタンパク質が、脊髄後角ニューロン(※3)での痒み伝達物質の作用を強めることも明らかとしました。
この研究成果は、アトピー性皮膚炎に伴う慢性的な痒みのメカニズムに、これまで注目されていなかった細胞の重要性を明らかにしたもので、その解明へ向けた大きな一歩となり、将来的に痒みを鎮める治療薬の開発にも応用できることが期待されます。
本研究成果は、2015年7月20日(月)午前11時(米国東部時間)に、米国科学誌『Nature Medicine』のオンライン版で公開されました。
          
         
■背景
痒みは、掻きたいという欲望を起こさせる不快な感覚です。通常では、皮膚などに付着,侵入しようとするダニや寄生虫などの外敵を引掻くことで除去する自己防衛反応と考えられています。しかし、アトピー性皮膚炎などに代表される耐え難い慢性的な痒みは、過剰な引掻き行動を起こし、それが原因で皮膚炎が悪化、さらに痒みが増すという悪循環に陥ります。これは「痒みと掻破の悪循環」といわれ、痒みを慢性化させる大きな原因となっています。
慢性的な痒みは、睡眠障害や過度の肉体疲労、精神的ストレスなどの原因となり、生活の質(QOL)が極度に低下するため、適切にコントロールする必要があります。しかし、このような痒みには市販の抗ヒスタミン薬(※4)などが効かず、著効する治療薬がありません。
全世界で推定数千万もの人がこのような慢性的な痒みを患っていることから、慢性的な痒みのメカニズムを明らかにし、画期的な治療薬を開発することが世界中で求められています。
これまで、痒みは単なる弱い痛みと考えられ、その基礎研究は非常に遅れていましたが、最近痒みを誘発する物質や痒み信号を伝える神経などが次々と発見され、少しずつその仕組みが解明されてきました。しかし、どのようなメカニズムで痒みが慢性的になってしまうのかは明らかとなっていません。
         
          
■内容
今回本研究グループは、皮膚を激しく引掻くアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて研究を行い、そのマウスが引掻く皮膚と神経で繋がっている脊髄後角で「アストロサイト」と呼ばれるグリア細胞が長期にわたって活性化していることを発見しました。さらに、遺伝子の発現を促すタンパク質 STAT3(※5)がこのアストロサイト内で働いていること、さらにそれを阻害することでアトピーマウスのアストロサイトの活性化と引掻き行動が共に抑えられることを明らかにしました。また、アトピーマウスの脊髄の遺伝子を調べたところ、STAT3の働きに伴って活性化アストロサイトがリポカリン 2(LCN2)(※6)というタンパク質を作り出し、それが脊髄後角ニューロンでの痒み伝達物質の作用を強めてしまうことも突き止めました。
したがって、アトピー性皮膚炎に伴って脊髄後角で活性化するアストロサイトが慢性的な痒みの新しい原因細胞であることが明らかとなりました(右図)。
            
          
■効 果
慢性的な痒みはこれまで主に皮膚を中心に研究されてきましたが、今回本研究グループが脊髄後角で活性化するアストロサイトの重要性を明らかにしたことで、痒みのメカニズムに新しい役者が加わり、全容解明へ向けた大きな一歩となりました。それは同時に、アストロサイトを標的に治療薬を開発するという新しいコンセプトにも繋がることが期待できます。
         
(以下、省略)
      
       
       
ここ数年、アトピー性皮膚炎の原因は、アレルギー的な要因から、皮膚機能の要因など、アレルギー的な要因以外が中心にある、という考え方が、専門家の研究では多くなっている傾向が見られます。
今回の研究も、アレルギー的な要因ではなく、痒みを知覚する神経の問題に焦点を当てています。
別の研究で、痒みを知覚する神経線維は通常、真皮内に留まっているはずですが、角質層の水分が不足した状態になると表皮に侵入、そして外部からの皮膚刺激などを痒みと知覚しやすくなる、というものがあります。
今回の研究も、そうした痒みが慢性化していくプロセスに迫っており、両者の結果をつなぎ合わせると、「痒みの発症原因」そして「痒みが慢性化するプロセス」の二つが明らかになってくるのかもしれません。

この「痒みが慢性化するプロセス」の中では、アレルギー的な要因は主要因と考えられておらず、実際、抗ヒスタミン剤などが効かない、と文中には書かれており、IgEなど免疫機能が関わる痒みとは違う視点から捉えていることは確かでしょう。

もちろん、実際の臨床例を考えると、食物アレルギーなど、免疫機能が中心で関わっている、と考えられる痒みも存在するわけですが、今回の研究のようにそうでない連鎖的な痒みの問題を並行して考えていくことは、「原因不明」という文字がアトピー性皮膚炎を説明するために使われることが少なくなっていくようにも思います。

あとぴナビでは、以前からこうしたアレルギー的な要因、皮膚機能的な要因について、着目してまいりましたが、こうした研究についても、今後、しっかりと注目して取材し、新たなアトピー性皮膚炎解決のための糸口については、読者の皆様にお伝えしてまいります。

                         
おまけ★★★★博士のつぶやき

確かに最近は、昔のような「アレルギー的な要因」よりも、「皮膚機能の要因」や今回のような「痒みを伝達する神経」に着目した研究が多くなっておる傾向があるの。
アレルギー的な要因がアトピー性皮膚炎の症状に関わることは確かなのじゃろうが、それは(アレルギー的な要因)あくまで「結果」の場合が多いのではないじゃろうか?
こうしたアトピー性皮膚炎に対してアレルギーが原因ではない、という視点から研究が進むと、これまでとは違った方向性の治療方法が模索されるようになるのかもしれん。
今後の研究に注目じゃな。