ステロイド剤のリスクを考える(3)

今日も、昨日の続きじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
ステロイド剤が持つリスクについて、3つ目を考えたい。
        
          
(3)ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を悪化させる

アトピー性皮膚炎の方には、黄色ブドウ球菌の定着(感染症)が9割程度にみられることが分かっておる。
これは、掻き壊しなどにより皮膚表面のバリア機能が低下しておることが原因になる場合と、ステロイド剤が持つ免疫抑制作用により感染症に弱くなる、という二つが主に考えられる。
この黄色ブドウ球菌は、2013年のネイチャーの論文において、黄色ブドウ球菌が出すデルタ毒素が、抗原の反応を介さずにIgEを増強させることが判明したのと、2015年に慶應大学から黄色ブドウ球菌が体内のIgEを増強、アトピー発症に関わることが発表されており、今、アトピー性皮膚炎の原因に対してかなり重要なファクターを占めておると考えてよいじゃろう。
いずれにせよ、IgEが増強される、ということはアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患を悪化させる方向に導くことは確かじゃ。一部の研究では、ここで増えたIgEはアトピー性皮膚炎の症状ではなく、他のアレルギー疾患の症状に関わる(アレルギーマーチ)、というものもあるようじゃが、いずれにせよ、アトピー性皮膚炎にとって黄色ブドウ球菌による影響はマイナス要因として考えた方が良いじゃろう。
そして、先にのべたように、ステロイド剤は黄色ブドウ球菌の影響を招きやすい、という問題点、というか課題がある、ということじゃな。
皮膚免疫は、ランゲルハンス細胞によりコントロールされておるわけじゃが、ステロイド剤は、このランゲルハンス細胞に影響を与えることが分かっておる(ランゲルハンス細胞は紫外線の影響も受けやすい)。
また、他の研究では、ステロイド剤の塗布により、IgEの産生コントロールに関わるIL-4(インターロイキン4)を増強させることで、これも抗原とは直接関係なくともIgEの増強に繋がることが分かっておる。
このように、アレルギー的なアトピー性皮膚炎症状悪化の要因と言えるIgEを増加させることは、結果的にアトピー性皮膚炎の症状悪化に繋がる恐れがある、と考えられるわけじゃな。

 

昨日と今日で、アトピー性皮膚炎に対してステロイド剤(塗布)が示すリスクについて、述べた。
これらのリスクは、一般的にステロイド剤が生体に示すリスクを示しておるのではなく、ステロイド剤の使用により、体に現れた影響により生じるリスクじゃ。
一般的に医師がステロイド剤を説明する際、「内服や注射で考えられるリスクは、塗布の場合、著しく低くなる」と話すことが多い。確かに、最強ランクのステロイド剤(塗布)を除いては、同じ使用期間で内服と同等の影響(リスク)を示す可能性は極めて低い、と言えるじゃろう。
じゃが、アトピー性皮膚炎に対して考えなければならないステロイド剤のリスクとは、そういった薬剤が持つ直接の「副作用」よりも、周辺への(生体に対して)影響から生じるリスクの方が、実際の影響としては強いものがあり、考えていく必要があるといえるじゃろう。

ステロイド剤は、確かに「優れた薬剤」であるじゃろう。
これは、アトピー性皮膚炎だけに限らず、救急救命の現場でも必要とされておるぐらい、多くの疾病に対して「効果」を発揮することが分かっておる。
じゃが、効果を得ること(ベネフィット)を優先しすぎると、マイナスの効果、つまり副作用の影響も使用期間に応じて受けやすくなることは確かじゃ。
なぜ、ステロイド剤を使用するのか、その目的と効果の範囲、そして起こりうるリスクを正しく把握し、アトピー性皮膚炎に対してステロイド剤が「できること」、そして「できないこと」を承知することが必要じゃろうの。

                          
おまけ★★★★西のつぶやき

ステロイド剤が抱える問題点は、他にも、塗布を続けることで皮膚の受容体(ステロイド剤に対する)が減少する、ということがある。これは、使い続けることで「効かなくなる」ということに繋がる。
また、一定期間の使用で、長期間、ステロイド剤が持つ薬理作用の反応が残ったことが、研究で分かっており、皮膚に「滞留」する恐れも考えられている。
リスクは患者側の不利益でもあるわけだから、患者側で一定の知識を持つことも大切だろう。