皮膚のバリア機能とアトピーの関係とは?(2)

今日は、昨日の続きじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                          
昨日はこれまでのアトピー性皮膚炎治療の歴史をざっと眺めながら、アトピー性皮膚炎がどのように診療の現場において取り扱われてきたのかを述べた。
今日は、「現在」のアトピー性皮膚炎の状況について述べてみたい。

昨日は最後で、アトピー性皮膚炎がアレルギー疾患以外の要因が重視されるようになった、ということを述べた。
これがどういう意味合いかと言うと、アトピー性皮膚炎はこれまで、アレルギー疾患として考えられ、「アレルギー疾患の治療」を中心に行われてきた。
じゃが、実際には「アレルギー疾患」としての側面はあるにしろ、根本的な原因はアレルギーにあるのではないことが、研究によって分かってきたのじゃ。
「アレルギー」という側面は、原因ではなく「結果」ということじゃな。

では、その原因が何かと言うと、それが「皮膚機能」の問題、とういことじゃ。
            
           
●皮膚バリア機能を高めることでアトピー性皮膚炎の症状を改善させる内服化合物を発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130918_2.htm
(京都大学、2013年9月17日)
        
         
●アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌巣が引き起こす
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000000t3i7-att/20150422_nagao.pdf
(慶応大学、2015年4月22日)
       
         
この二つの研究は、ある意味、これからのアトピー性皮膚炎治療の方向性を大きく変えようとしていくことになると思われる。
皮膚のバリア機能の低下が最初にあって、その結果、さまざまな状況が皮膚で生じ、そこからIgEが増加、そして、免疫要因が加わることで、アトピー性皮膚炎が難治化、重症になってくる、というものじゃ。
前者は、フィラグリンによるバリア機能の低下が、その後の異物の侵入によるアレルギー反応につながるとして、皮膚の保湿因子でもあるフィラグリンを補うことで、その後のアレルギー反応そのものを抑えようという考え方じゃな。
後者は、表皮の育成因子、あるいは育成因子の受容体が減少することで、バリア機能が低下、皮膚表面における菌相が変化し、黄色ブドウ球菌の定着を招くことで、IgEも増加、アレルギー反応が強くなって、アトピー性皮膚炎が重症化していく、という考え方じゃ。

後者については、ネイチャーでも同様の論文が出ており、黄色ブドウ球菌のデルタ毒素が、アレルゲンによる抗原抗体反応がなくても、IgEを増強する恐れがあることが分かっており、黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎の発症、あるいは症状悪化の「引き金」になっている可能性はかなり高いと思うの。

前者も後者も共通するのは、アレルギー的な要因は先発的なものではなく「後発的に現れたもの」として考えておることじゃ。
つまり「原因」ではなく「結果」としてアレルギー症状が生じておる、という考え方じゃな。
ある研究によると、これら皮膚機能が原因で増加した体内のIgEは、アトピー性皮膚炎の症状悪化の中心的な存在ではなく、他のアレルギー疾患(鼻炎やぜん息など)の原因になっておるのではないか、というものもあるようじゃ。

いずれにしろ、アトピー性皮膚炎の「原因」が、実はアレルギーにあるのではなく、皮膚機能にあるとするならば、着目すべき点、それは治療もそうじゃが予防と言う観点からも、皮膚機能、もっといえば皮膚のバリア機能を低下させない「方法」を模索する、ということにつながってくるのじゃろう。

では、そのバリア機能を低下させない方法として何があるのか、というと、単純に考えると「スキンケア」ということになるのじゃろうが、ことはそう単純ではない。
生活内においては、このバリア機能を低下させる要因は、皮膚の洗浄、大気中の化学物質、洗濯による衣類への残留、食事、そしてクーラーが効いた環境、運動をしない生活習慣といった「汗をかかない生活」も関わってくるからじゃ。
いくら、スキンケアを行ったとしても、毎日の生活の中で、皮膚のバリア機能を低下させる要因が至るところにあるようなら、スキンケアだけで補うことは難しくなる。
さらに、正しいと思っていたスキンケアが、逆に皮膚機能を低下させていた、と言うケースもあるじゃろう。
グリチルリチン酸の問題、防腐剤の問題、そして自分に合わない配合成分の問題、などじゃ。

いずれ、こうしたバリア機能を低下させない方法について述べたいと思うが、アトピー性皮膚炎にとって、アレルギー的な要因だけでなく、皮膚の機能を考えていくことも大切になることは覚えておくべきじゃろうの。

                            
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回、書いたことと、多少矛盾するかもしれんが、アトピー性皮膚炎を「アレルギー疾患ではない」と決めつけてしまうことも問題があるじゃろうの。
もちろん、アレルギー的な要因が先にくるケースについては、アトピー性皮膚炎ではなく、他の疾患名をつけられるのであれば良いのじゃが、実際には、アレルギー的な要因があきらかに関わるケースであっても、医師の診断は「アトピー性皮膚炎」であり、そしてその治療は免疫抑制に主眼を置いたものが多いからじゃ。
一つの原因と一つの結果が、イコールで必ず結びついているものでないことは承知しておくべきじゃろう。