安保先生からお聞きした話(1)

編集の北です。

 

 

 

 

 

 

 

                       
昨年のあとぴナビ本誌で、新潟大学名誉教授の安保徹先生が書かれた「ゼロからわかる安保理論、これさえわかれば健康で長生きできる」という記事を連載いたしましたが、ある出版社から内容が素晴らしいので出版したい、とのご要望をいただき、承諾をいただくため、先日、安保徹先生のところにお伺いいたしました。
出版については、ご快諾いただいのですが、雑談の中でためになる話をいくつかされていらっしゃいましたので、紹介したいと思います。

                                                   

●マー君とダルビッシュさんは、なぜ肘をいためたのか?

                                                

大リーグで大活躍を見せているお二人の投手ですが、昨年はマー君、そして今年はダルビッシュさんが、肘を傷めました。
プロ野球界で投手は、肘を酷使するため、傷める可能が高いものだと思っていましたが、安保先生は、誘発する要因を指摘されていました。
それが、投げ終わってから行っている「アイシング」です。
本来、あれだけ肘に負担をかけて投げ続けたならば、筋肉や関節部位には一定の炎症が生じても不思議ではありません。
しかし、熱を持ち、炎症が生じた状態とは、体にとって半ば治癒反応なのだそうです。
したがって、身体が「治そうと思って」わざわざ生じさせた炎症反応をアイシングで無理やり抑え込むことは、炎症反応を生じさせることで「得ようとした目的」が達成できないことになり、少しずつその負荷が積み重なることで、故障が発生しやすい状況が生み出されるのではないか、ということでした。
もちろん、では冷やさずに温めればよいのか、というとそうとも言えません。なぜなら、炎症が生じた肘を温めることは、炎症反応を促進させることになるからです。
では、どうすれば良いのでしょうか?
答えは、簡単なことで「何もしない」ことが、日々の「ケア」で考えるともっともよいことだそうです。せいぜい行ったとしても、常温の水で軽く熱を取る程度が良いだろう、ということでした。
もちろん、スポーツ医学からすると、アイシングには相応の効果が臨床で認められているのだと思いますが、免疫の働きから考えると、アイシング自体は、身体の治癒反応を妨げているのだそうです。

体には、いろいろな症状が生じます。
熱や痛み、そしてアトピー性皮膚炎の方がお悩みの「痒み」も、そうした症状に該当し、体に生じた異常状態と思う方がほとんどでしょう。
しかし、「異常」と感じるのは、あくまで私たちの意識であり、身体にとっては、「異常状態」ではなく「正常状態」に過ぎません。
もちろん、過剰な面があれば、生体に大きな影響をもたらすこともありますが、その症状は、身体が自らを治癒に導くために「必要だ」と判断したからこそ、生じさせているということが言えるでしょう。
一つ一つの反応だけ見れば、身体にとって異常状態に見えるかもしれませんが、そうした反応は、次の反応につながっており、それらの連続した反応をつなぎ合わせていくと、最終的には体にとって必要な「状態」であったことが見えてくるそうです。

風邪をひくと、寒気を感じることがあります。
これは、身体が熱を急激に上げることで、風邪のウィルスや細菌の増殖を抑えようとする治癒反応です。
その後、熱が頂点まで達すると、今度は寒気から火照りを感じることになり、汗をかき始めます。
体にとって、高熱は恒常性を維持するためには、危険な状態のため、外敵の増殖を抑えるため、止むを得ず一時的に高い熱を作り出したわけですが、その状態を維持させることは、身体にとってリスクも生じさせるため、皮膚から気化熱により熱を下げるために汗をかくことになるわけです。
そして、一定の自然と一定の体温に戻った時、風邪のウィルスや細菌との戦いに打ち勝ち、あとは療養することで治癒が訪れることになります。

この流れを見ていくと、体に生じた異常状態としては「寒気」「火照り」「汗」といったものがあるでしょう。
その状態を一つずつ切り取り、薬剤などで対処を行うことは可能ですが(例えば熱であれば解熱鎮痛剤を使う、など)、熱を上げて下げるという一連の流れは、外敵に対抗するために体が用いた「力」です。その「力」を取り除くことは、外敵にとっては「良い環境」を作り出しているにすぎませんから、免疫力という最終兵器が外敵を打ち砕くことができなければ、症状は停滞する(熱が上がったまま、あるいは上がったり下がったりを繰り返す)ことになるでしょう。

もちろん、熱が高い状態で保たれることは、体力を消耗しますし、また熱による内臓機能への影響もリスクとして生じます。ただ、熱を高い状態で保っているならば、身体は風邪のウィルスや細菌に打ち勝つために、その熱を「必要」としていることも確かなのです。
体の反応が「間違っている」ことはあるかもしれませんし、その間違いにより他の影響が生じることがあるかもしれません。
しかし、ほとんどのそうした体の反応は「正しい」ことであり「必要」なことであることを忘れないようにしましょう。

明日は、もう一つお聞きした話を紹介したいと思います。

                              
おまけ★★★★博士のつぶやき

人が「楽」に感じることは、身体にとって必ずしも有益であるとは限らない、ということじゃな。
熱、痛み、痒み、といった体が作り出す「症状」は、元の原因を解消するために必要であるからこそ、生み出された、と考えた方が良いじゃろう。
不快な症状を軽くすることは、もちろん間違いではないのじゃが、その軽くする過程は、場合によってリスクを生じさせておることを忘れてはならんじゃろうの。