学会が定める治療方針と治療の実態

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      
現在のアトピー性皮膚炎の治療は、日本皮膚科学会が治療のガイドラインを示している。
これは、他の疾患も同様のガイドラインが存在しているのだが、こうした各学会が定める指針についての記事があったので紹介したい。
            
            
●アレルギー科、学会指針と違う治療も 実態調査で判明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150105-00000008-asahi-ent
          
アレルギー科の医師が、関連学会の定める指針と違う治療をしている実態が目立つとする調査結果を厚生労働省研究班がまとめた。食物アレルギーによる呼吸困難などの症状の経験がある患者の例では、学会が勧める自己注射「エピペン」を処方するとした医師は約5割だった。
研究班は、2014年2~3月、アレルギー科を掲げる全国の医療機関に郵送によるアンケートを実施し、アレルギー関連の学会が示す病気ごとの標準的な治療がどれだけされているかを調べた。医師1052人が答えた。このうち、日本アレルギー学会が認めるアレルギー専門医は約30%だった。
アレルギーは、アトピー性皮膚炎や喘息(ぜんそく)、花粉症など多様な病気があり、全てに詳しい医師は少ない。
食物アレルギーなどでアナフィラキシーと呼ばれる症状が過去にあった患者には、緊急時に備え、その場で注射して病院に到着するまでの症状を和らげるエピペンの処方が推奨されている。だが、こうした患者の症例を示し、対処を選択式で問うと、エピペンを処方すると答えた医師は49%だった。
          
■推奨されるアレルギーの対処例と実際の対処の違いについて
        
・食物アレルギー
       
(推奨される対処)
呼吸困難などの発作があった患者に医師は、ショックを和らげる注射薬「エピペン」を処方。発作時に患者や家族が打つ。
         
(実際の対処)
エピペンを処方しない医師・・・51%
        
・アトピー性皮膚炎
        
(推奨される対処)
ステロイド剤は、すり込まず適量を覆うようにのばす
         
(実際の対処)
「できるだけ薄くのばす」と指導する医師・・・23%
「できるだけ薄くのばすよう指導されている患者」・・・56%(ネット調査)
          
        
記事にある「エピペン」はさておき、気になるのはやはり、最後に対処の違いについて書かれていたアトピー性皮膚炎に関する部分だろう。
推奨される「ステロイド剤は、すり込まず適量を覆うようにのばす」という使用方法と、実際に処方する医師の約4人に1人、そして、実際に処方された薬剤を使用する患者の2人に1人以上が「できるだけ薄くのばす」と答えていることは興味深い。
記事の中心であるエピペンについては、使用方法ではなく、緊急避難的な場合(発作時に救急車など医療を受けれるまでの間の緊急対処)の準備として持つかどうかを聞いているわけだが、アトピー性皮膚炎の場合には、実際の「治療」つまり使用方法に言及している。

この使用方法が、学会の指針と、実際の治療の現場においてズレが生じていることは、何故なのだろうか?
やはり、その根本たる原因は、学会が定める指針の「リスク」を、患者側、そして処方する医師自体が、決して低くない、と考えているところにあるのではないだろうか?
そして、そのリスクが生じるのは、使用する患者であることを考えると、実体験に基づいてそれを避けようと考えている場合もあるのではないだろうか?
もちろん、伝聞を元にリスクを過大評価している、という場合もあるかもしれない。
だが、ステロイド剤が持つベネフィットとリスクのバランスを考えた場合、長期使用に至った場合のリスク、さらにはステロイド剤がアトピー性皮膚炎の症状を一時的に抑えることができても、恒久的な効果ではないこととアトピー性皮膚炎という病気そのものの治療ではないこと(症状の治療であって病気の原因を治療しているのではない、という部分から)を考えると、患者側がリスクに対して慎重になることは決して間違いではないだろう。
学会がこの治療方針を定めた以降、アトピー性皮膚炎の研究が進まなかったわけでも、新たな発見がなかったわけでもない。
だが、そうした「現在進行形」の部分に目を向けず、過去に定めた手法に固執することが、患者側の利益につながっている、とは言えない部分があるのは確かだろう。

現在の患者の実態を把握した上で、実態の即した対応が望まれるのではないだろうか?

                                 
おまけ★★★★西のつぶやき

記事の中心は「エピペン」というアドレナリンの注射薬の話が中心だが、この記事だけ読んだ読者は、「処方しない医師が悪い」と感じるのではないだろうか?
「エピペン」自体は、使用した際のリスクを鑑みても、「迷ったら使うべき」とされる薬剤だ。なぜなら、緊急時の救命に直結するため、使わない時のリスクが大きすぎるからだ。
もし、医師に「呼吸困難などの発作が生じた患者に対する緊急処置として患者が所持するエピペンを使用するか?」と聞いた場合には、ほぼ全員の医師が「使用する」と答えるのではないだろうか?
予備的に所持するかどうかは、決して安い薬剤でない以上、患者側の意志もあるわけだし、さらには、患者側の自己申告で発作があったとしても、もし実際には発作はなくただ所持することを目的でいた場合、その後、第三者に対して悪用された場合、処方した医師自体が確認不足による責任が生じることもあり得るようだから、そうした実態に即した判断も加味されている部分も考慮すべきように思うのだが・・・