薬剤耐性の影響とは?

西だ。

 

 

 

 

 

 

             
今日は、アトピー性皮膚炎と直接、関係はないのだが、気になる記事をWebで見つけたので紹介したい。
              
          
●薬剤耐性の影響、2050年までに年間死者数1000万人に 英検証
http://www.afpbb.com/articles/-/3034410
            
英国政府が委託した抗生物質への耐性についての検証結果がこのたび公開された。この検証結果によると、薬剤耐性の影響により、2050年までに毎年世界で1000万人が死亡する他、各国の国内総生産(GDP)が2~3.5%減少するとされた。
デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相が発表した「抗菌薬耐性についての検証(Review on Antimicrobial Resistance)」は、米投資銀行大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の元チーフエコノミスト、ジム・オニール(Jim O’Neill)氏が率いた。英公衆衛生上級専門家らも参加した。
発表された検証結果によると、抗菌薬耐性による死者数が最も多くなるのはアジア地域の470万人で、アフリカの410万人がそれに続いた。また欧州では39万人、米国でも31万7000人に上る可能性があるという。
また死亡要因として2番目に多いとされたのはがんで、2050年までに年間820万人に上ると推計された。
シンクタンクのRand Europeとコンサルティング・グループのKPMGによる既存の調査結果を基に行われた今回の検証によると、肺炎かん菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌については、すでに薬剤への耐性獲得の兆候を示しているという。
米国では、年間約2万3000人の死亡例および200万人の疾患に抗生物質の効かない感染症が関係していると指摘されている。
また抗菌薬耐性による年間の経済的損失は、直接的な医療コストの超過で200億ドル(約2兆3800億円)、生産性の低下で350億ドル(約4兆1600億円)と試算された。
           
               
耐性菌の問題は、黄色ブドウ球菌が有名だが(MRSA)、緑膿菌など他の菌でも院内感染の問題を中心に、いろいろと出ている。
ヒトの寿命を急激に伸ばした一つの原因は、ペニシリンの発明にある、とされているのを見ても分かるように、抗生物質の発達は人々に大きな貢献をなしてきた。
だが、同時に、菌も生き延びるため抗生物質に対抗して変化(進化?)を遂げ、それが今回のような耐性菌の問題につながっていると言える。
耐性菌がやっかいなのは、対応するための薬剤がなく、その菌に罹患した場合には自然治癒力をメインに「戦っていく」しかない、ということにあるだろう。

アトピー性皮膚炎も、黄色ブドウ球菌が原因となって発症、悪化しているケースがあるが、MRSAなど耐性を持った黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎の症状をより難治化する恐れがある。
なぜなら、もともとステロイド剤などにより皮膚における免疫機能を低下させた状態にあるため、感染症そのものが悪化しやすい状況にあるからだ。
黄色ブドウ球菌が出すデルタ毒素は、脱顆粒により炎症を悪化させ、同時にIgEを増強することが分かっている。そして増強したIgEは、脱顆粒をさらに促進させ、悪循環の中に陥りやすい状況を生む。

通常の黄色ブドウ球菌ならば、抗生物質での「補助」を行うことができるが、MRSAの場合は、その「補助」を使うことができない。
皮膚の防御機能がしっかりしていれば、まだその範囲を留めることも可能だが、掻き壊しによる防御機能は著しく低下し、ステロイド剤で炎症を止めると、今度は感染症が悪化することになるから使いにくい。

今回の耐性菌の記事は、直接、アトピー性皮膚炎に関係はないが、アトピー性皮膚炎に関わる感染症の問題から見ると、やっかいな面を含んでいることは確かだろう。
抗生物質を使わなければ耐性菌が生まれることはないが、菌に対する対抗手段も減ることになる。
矛盾をはらんだ難しい問題だが、将来を見据えた際には考えておかないといけない問題なのだろう。

                    
おまけ★★★★北のつぶやき

今回、西さんが書いていた黄色ブドウ球菌によるデルタ毒素とアトピー性皮膚炎の問題は、少し前にあとぴナビで特集記事を取り上げました。
興味のある方は、ぜひご覧ください。

●アトピーと感染症の最新研究
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=134