マラリアに感染でアトピーが改善?(2)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

                    
今日は、昨日の続きです。
昨日は新聞記事を紹介いたしましたが、今日は、群馬大学の今回の研究に対するプレスリリースの文章を紹介します。
         
         
●感染によるアトピー性皮膚炎の症状改善のメカニズムを解明
―アトピー性皮膚炎治療の新規開発に向けて―
        
■趣旨
アトピー性皮膚炎は皮膚に痒みを伴う湿疹が生じる病気です。アトピー性皮膚炎の原因として、アレルギー機序、皮膚のバリア機能異常、ストレスの関与など様々な推測がされていますが、不明な点が多いのが現状です。一方、長年にわたる疫学的臨床研究でアトピー性皮膚炎の発症は先進国で多く、発展途上国で少ないことが分かっています。なぜこのような違いが生じるのかはまだ分かっていませんが、寄生虫感染がその原因の一つと考えられています。今回、私たちの研究グループは、寄生虫感染がアトピー性皮膚炎症状を良くするという事実をマウスを使って実験的・科学的に証明することを試みました。そして寄生虫(マラリア)感染によりマウスのアトピー性皮膚炎様症状が良くなること、その作用機序として皮膚にナチュラルキラー細胞が増加することを証明しました。この結果はアトピー性皮膚炎の病態解明と新たな治療法に繋がる可能性があります。この成果は、国際雑誌 「Allergy」に8 月18 日オンライン掲載されました。
         
■概要
群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学の石川 治 教授、天野 博雄 講師、岸 史子 大学院生のグループは、群馬大学大学院医学系研究科国際寄生虫病学の鈴江 一友 講師との共同研究により、マラリア感染によるアトピー性皮膚炎の症状改善の作用機序を明らかにすることに成功しました。
まず、私たちはアトピー性皮膚炎の動物モデルとして、自然に湿疹を発症するNC/Nga マウスを用いました。湿疹のあるNC/Nga マウスにマラリアを感染させたところ、マラリアの感染症状がすすむにつれ、アトピー性皮膚炎の湿疹病変が改善していきました。湿疹のある皮膚と湿疹が良くなった皮膚を病理組織学的に比較したところ、湿疹が良くなった皮膚ではナチュラルキラー細胞が増加していることが明らかになりました。次に、ナチュラルキラー細胞が増加しないような薬剤を投与した後にマラリアを感染させると、良くなるはずの湿疹病変が良くならずに湿疹病変が残ることが分かりました。さらに湿疹のあるNC/Nga マウスに、マラリア感染で増加したナチュラルキラー細胞を静脈から移入すると湿疹病変が改善しました。
これらの結果より、私たちは、アトピー性皮膚炎の皮膚病変の改善にはマラリア感染した別のマウスから採取したナチュラルキラー細胞が関与していることを突き止めました。
        
■社会的意義とこれからの展望
今回の研究による成果は、アトピー性皮膚炎の病態解明と新たな治療法に繋がる可能性があります。そして、将来的にアトピー性皮膚炎治療における医薬品の開発を含めた臨床応用に貢献できることが期待されます。今後はマラリア感染によりナチュラルキラー細胞が増加するメカニズムを解明することで、感染以外の方法でもナチュラルキラー細胞を増やすことができるかを探求していきたいと考えています。
             
             
昨日の新聞記事に掲載されていなかった部分で、ポイントとなるのは「ナチュラルキラー細胞が増加しないような薬剤を投与した後にマラリアを感染させると、良くなるはずの湿疹病変が良くならずに湿疹病変が残ることが分かりました。」という部分でしょう。
つまり、寄生虫に感染することが重要なのではなく、NK細胞を産生することが重要である、ということです。
ナチュラルキラー細胞については、免疫細胞療法などでがんなど他の疾患への治療や研究もおこなわれているようですが、本来、特定の抗原(あるいは外敵)のみに対抗するはずのNK細胞が湿疹を解消するのかを考えると、NK細胞が湿疹を治している、ということではなく、NK細胞が他の免疫機能とのバランスを調整することで、湿疹を「作る」免疫を抑えている、ということが考えられています。
つまり、免疫機能の異常状態から生じる「湿疹」であれば、このNK細胞による症状の改善は期待できるわけですが、アトピー性皮膚炎の原因は免疫機能の異常状態ばかりではありません。
皮膚機能の異常状態による原因で考えると、直接、痒みを知覚する神経線維が関わっていると考えられていますので、そうした痒みや炎症は、IgEなどの免疫機能とは関係なく生じることになります。
また、免疫機能のバランスで症状を改善している場合には、「免疫機能の異常状態」を生じさせた原因そのものにアプローチできているわけではありません。
例えば、睡眠不足が続いて免疫機能の異常状態が生じた場合、仮に、NK細胞を増加させることで一時的に免疫機能を改善させても、睡眠不足がその後も続けば、再び免疫機能の異常状態が生じることでしょう。
つまり、こうした治療法は「対症療法」の一部であり、原因療法でないことは承知しておいた方が良いでしょう。
ただ、これまでTh1、Th2のバランスで考えられていたIgEと寄生虫の関係が、NK細胞が中心となっていることがわかったのは、大きな前進でしょう。
今後の研究に期待したいと思います。

                               
おまけ★★★★博士のつぶやき

寄生虫は、ヒトと共生が必ずできる、というものではない。
したがって、寄生虫にあえて感染する、という方法は相応のリスクを生じさせる可能性もあったということじゃ。
それに対して、今回の研究では、NK細胞のみを移すことができれば、同様の影響を与えることができる、というところが大きなポイントと言えるじゃろう。
もっとも、東君が書いておったように、これだけでアトピー性皮膚炎を考えると、合致しないケースが当然でてくるので、あくまでアトピー性皮膚炎の一部に対して、という視点で研究を進めて欲しいものじゃの。