頭頸部の症状とマラセチア菌の関係とは?

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

                       
アトピー性皮膚炎の方の場合、夏場に症状が悪化する要因として、「感染症」がある。
その対象は、細菌やウィルス、真菌などさまざまだが、感染するルート、そして治療法はそれぞれ異なる。
こうしたアトピー性皮膚炎と感染症について、千葉県のホームページで掲載されていたものがあるので紹介したい。
             
            
●アトピー性皮膚炎と皮膚感染症について
http://www.pref.chiba.lg.jp/shippei/faq/026.html
            
健康な皮膚は、ウイルス、病原細菌、カビなどがついても、その場で病原体が増えないように、皮膚を守るしくみが備わってます。
例えば、多くの日本人が悩まされている水虫がありますが、水虫は真菌(カビ)の一種で、足などでは、健康な人の皮膚では、表層にカビを留めます。健康人であれば、カビを体の深部までは進ませないのです。皮膚の免疫(マスト細胞や、樹状細胞)が、監視の役目をしていて、カビの広がりを封じ込めているからです。
アトピー性皮膚炎では、こうした皮膚の感染症を防ぐ作用がうまく進まないことが、わかっています。アトピー性皮膚炎では、健康人では、増えないはずの菌が増えたり、ウイルス感染が重症化したりして、感染症から皮膚を守る能力が不足しています。しかし、皮膚を感染症から守る物質や、その働き方については、いまだ、全貌は解明されていません。従って、アトピー性皮膚炎のどこを治せば、感染症に強くなるのかは、わかっていません。
アトピー性皮膚炎とカビについても、いろいろな学説があります。皮膚には、酵母菌である、マラセチアと呼ばれる真菌が常在しています。この真菌は、フケの原因になったり、デンプウという病気の原因になったりもします。正常な皮膚では、マラセチア菌がいても、あまり影響がありませんが、アトピー性皮膚炎の人の皮膚では、この菌が増えているとの研究結果があります。
               
73人の中等度から重度のアトピー性皮膚炎、156人の喘息患者、212人の非喘息者を対象に、ダニ、真菌(アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、マラセチア、トリコフィテン)に対する血清中の特異IgEと、総IgEを調べた。結果:総IgEと、特異IgE抗体は相関した。マラセチア特異IgEは、小児より成人で多く保有した。アトピー性皮膚炎、喘息、喘息以外の順で、ダニに対する陽性率は、95%、42%、17%、マラセチアに対する陽性率は、53%、1%、0.5%、アルテルナリアに対する陽性率は、49%、29%、18%であった。結論:中等度から重度のアトピー性皮膚炎において、コントロール群に比べて、ダニは45.6倍、マラセチアに対して132倍で反応していた。マラセチアは、アトピー性皮膚炎の重症化に影響しているかもしれない。
A J Allergy Clin Immunol. 1999;104:1273
       
アトピー性皮膚炎のうち、頭頸部皮膚炎患者のサブグループは、マラセジア属に対して過剰に反応している人たちかもしれない。健康者や、頭頸部皮膚炎のないアトピー患者と比較すると、頭頸部皮膚炎患者のサブグループの人たちは、マラセチアの陽性率は、違いがないが、マラセチアの皮膚反応や、特異IgEが、他のグループとくらべ高い傾向がある。パッチテストとの結果ははっきりした違いがない。頭頸部皮膚炎患者のサブグループの人たちは、マラセジア属に対して、液性免疫、細胞性免疫が過剰に反応している。このグループに属すると思われる病型は、(1)頭と首がひどい;(2)青春期または若い成人期に悪化;(3)従来の治療に効かない(4)他のアトピー性疾患の合併などの条件を満たす患者群である。これらの患者群では、イトラコナゾールの2ヵ月のクール療法と、その後の継続療法が有効かもしれない。J Am Acad Dermatol. 2009 ;60:125
          
マラセチアは、首と頭のアトピー性皮膚炎の場所に多く寄生するとされます。首と頭に病変の強いアトピー性皮膚炎に、この感染症が疑われます。マラセチアに対する特異IgEも産生されます。皮膚反応やパッチテストが陽性化したり、リンパ球の反応も高まることが証明されています。この菌の感染には、イトラコナゾールと呼ばれる抗菌剤が有効です。首・頭タイプのアトピー性皮膚炎に、この薬が使われます。海外の治療検討によると、一応の効果はあるようです。菌が消えたり、IgEが下がる効果があるとの論文もありますが、アトピー性皮膚炎は、改善しないというものあります。効果は、全員に出るわけではありません。
これに関する日本の論文を紹介します。
                   
皮膚のプリックテストで陽性であったアトピー性皮膚炎の患者を対象として、抗真菌剤による治療を試みた。対象は、40名のアトピー性皮膚炎で、カンジタに対する即時型反応が陽性の人は20/40、カンジタの遅延型反応が陽性の人は、 10/27、マラセチアの即時型に陽性の人は、 30/40 、マラセチアの遅延型に陽性の人は、4/27であった。抗菌剤の効果がたかった人は、 プリックテストの反応の大きかった人で、カンジタの反応がなく、マラセチア単独の感作のある人であった。一部のアトピー性皮膚炎では、カビの感染が症状を悪化させているので、抗菌剤は、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢のひとつになりうる。
小林ら アレルギー2006;55:126

小児と成人では、頭頸部のアトピー性皮膚炎の部位から分離されるマラセチア菌の種類が異なる。又、成人では特異IgE保有者が多いことより、成人と小児では、アトピー性皮膚炎に影響するマラセチアの役割は、異なっていると思われた。Takahata ら Br J Dermatol. 2007 ;157:1178
                 
               
マラセチアについては、以前のブログでも取り上げたことがあるが、文中の「マラセチアは、アトピー性皮膚炎の重症化に影響しているかもしれない。」とあるのは興味深い。
また、小児より成人の方が、特異的IgEが多い、というのも特徴的だろう。
皮膚は、本来無菌状態ではない。
腸内と同じく、病原性がない菌で覆われることで、病原性の菌が繁殖するのを防いでいてくれる。
だが、ちょっとしたきっかけで、菌の群層は変わりやすく、そのきっかけは、掻き壊しや免疫を抑制する薬剤(ステロイド剤やプロトピック軟膏など)の連用、あるいは、皮膚の乾燥やバリア機能の低下、などさまざまな要因が考えられるだろう。

気をつけたいのは、では、皮膚の菌をなくせば、こうした感染症への対策になるのか、というとそうではなく、単に菌をなくす行為(消毒など)を行っても、その後、無菌状態が続くわけではないため、新たな菌群が形成された際、果たして良い菌だけでその群層が成り立っているのか、ということが問題となってくるだろう。
菌は、その存在を否定するものではなく、共生を考えることが大切だ。
そうした視点から、日々の生活を考えてみることは大切だろう。

                      
おまけ★★★★西のつぶやき

菌との共生を考える生活、といってもピンとは来ないかもしれない。
具体的には、良い菌だけ残して悪い菌だけを人工的に排除する、ということが難しいことを知っておくべきだろう。
悪い菌の排除は同時に良い菌も排除する。
したがって、皮膚の洗浄や消毒だけでは感染症の対策に十分つながるとは言いづらい。
基本的には、良い菌を摂取、あるいは良い菌が育ちやすい環境を作る、ということになる。
そうした環境づくりには、睡眠や食事、運動などが深く関わることになることから考えても、日々の生活習慣を見直していくことが大切であるとも言えるだろう。