アトピーの検査薬について

東です。

 

 

 

 

 

 

 
アトピー性皮膚炎の病態は、基本的に皮膚に現れます。
炎症→痒み、あるいは乾燥から来る痒みなどが主な症状を引き起こす要因ですが、そこにはいろいろな因子が関わってきます。
これまで、アトピー性皮膚炎の「検査」といえば、アレルギーの度合いを図るIgE検査、個々のアレルゲンを判定するRAST検査などいろいろありますが、そういった項目の一つに皮膚細胞で産生されているTARCというたんぱく質を測定するTARC検査があります。

今回、このTARCの検査が短時間でできる試験薬が販売される、との記事がWebに出ていました。
             
               
●シスメックス アトピー性皮膚炎の重症度判定試薬発売 17分で検査可能に
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/47867/Default.aspx
            
シスメックスは4月21日、塩野義製薬と共同で開発したアトピー性皮膚炎の重症度を判定する試薬「HISCL TARC試薬」を23日に発売すると発表した。
これまでの製品は、院外の検査センターでの測定が必要で、測定時間は3時間15分かかっていた。今回発売する試薬は、同社の全自動免疫測定装置HISCL-5000やHISCL-2000iで使用でき、約17分で検査可能になる。院内検査室で測定することで、診療前に検査でき、治療方針の決定にかかる時間や患者の待ち時間の短縮が期待できるという。
この検査試薬は、患者の皮膚細胞で産生されているTARCというたんぱく質を測定し、重症度を判定する。TARC検査は、従来の血液検査値(血清総IgE値、好酸球数、LDH)に比べ、病勢を鋭敏に反映するマーカーとして、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(日本皮膚科学会雑誌2009年)に掲載されているという。この試薬は化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)の原理を利用した測定キット。保険点数は194点。
製造販売元は塩野義製薬、販売はシスメックスが行う。
            
            
アレルギーの重症度を判断する方法としては、国際的に標準化されているSCORADという方法があります。皮膚表面の炎症部位の割合や、状態、などをスコア化して判定する方法です。
今回のTARC検査は、白血球に対して走化性などを示すケモカインの一つであるTARCの数値を図る検査です。SCORADを元に、その数値を軽症と中等症以上に分類でき、成人の場合は700pg/ml未満が軽症、それ以上が中等症以上となります。小児(2歳以上)の場合は760pg/ml未満が軽症、それ以上が中等症という区分されています。

保険点数が194点、ということなので、高い検査ではなく、今後、皮膚科医で広まっていくかもしれません。
注意して欲しい点があるとすれば、この検査は、Th2優位の免疫応答により、IgE産生や好酸球の活性化がなされることでアレルギー症状が出現するとする考え方に基づいたものですから、ステロイド剤やプロトピック軟膏など、免疫抑制作用を持つ薬剤を使用中の場合には、病変部の表皮角化細胞により産生されるTARCが抑えられることも考えられますので、薬剤の使用により皮膚の病変部がどのように変化していくかを示す指標に過ぎない、とも言えるでしょう。
また、ある意味これは、ステロイド、プロトピック軟膏を必要以上に肯定する検査という側面もあるので、薬物依存を加速させる可能性も考えられます。
つまり、症状が消える=アトピー性皮膚炎が治る、に必ずしも直結するわけではないことは何度も述べた通りですが、見た目の症状とTARCの数値はかなりリンクしてくるように思いますので、実際のアトピー性皮膚炎の「重症度」というより、アトピー性皮膚炎により生じる炎症の度合いを示す意味での「重症度」となると考えられますから、検査の必要性、というよりも重要度は高くないようにも感じます(見た目で判断できるのでは、ということです)。

また、免疫応答による部分に対する指標でもあるため、皮膚機能の異常からくるかゆみに対して正確に測定することは難しい部分はあるでしょう。
皮膚機能の異常を残したまま症状を抑えても、症状を抑える要因(ステロイド剤などの薬剤)が弱まれば、再び症状は現れてきます。ステロイド剤を使っても、すぐに症状が現れる場合には、こうした皮膚機能の異常状態も考えていくことが大切になりますが、TARCの数値を元に判定・治療をしていくと、皮膚機能の異常によるかゆみへの対処が遅れることがあるかもしれません。

いずれにしても、こうした検査薬が実用化されること、そしてこの検査薬で図れる項目と図れていない部分は把握しておくようにしましょう。

              
おまけ★★★★東のつぶやき

保険点数は、1点10円で計算されます。今回の検査薬は194点ですので、194×10円=1,940円となり、健康保険が3割負担であれば、患者の方の負担は1,940円×0.3=582円、ということなりますから、アトピー性皮膚炎で行う他の検査と比較して、それほど高い検査ではないでしょう。
また短時間で行えることから、多くの病院が取り入れることになるように思います。
この検査で中等症以上だから、強いお薬を、と処方されることもありますが、先に述べたようにSCORADに基づく重症度範囲を数値に当てはめている部分がありますから、所見と大きな違いが出てこないことが多いことも知っておくようにしましょう。