グリチルリチン酸にステロイド様の働きは?(3)

中田です。

 

 

 

 

 

                                   
今日も、昨日の続きを書きたいと思います。

今日は、グリチルリチン酸のリスクと、問題の根本的な部分がどこにあるのかを「1.グリチルリチン酸には、ステロイド剤と同じ副作用はない」とする意見に対する部分として述べたいと思います。

「1.グリチルリチン酸には、ステロイド剤と同じ副作用はない」という意見に対しては、その意見がアトピー性皮膚炎の方に対してのものであった場合、正しい部分と誤った部分があります。
最初の日に書いたように、グリチルリチン酸は、副腎皮質ホルモンの中の鉱質コルチコイド(アルドステロン)と似た成分で、似ているからこそ、アルドステロンが持つ抗炎症効果も有しているわけです。
ただ、アルドステロンが持つ抗炎症効果は、コルチゾール(糖質コルチコイド:ステロイド剤に使われている成分)をサポートするような働きによるもののため、ステロイド剤ほど強いものではありません。
同時に、効果と副作用は比例しやすい関係にありますから、作用が弱ければ、副作用も弱くなり、そういって点においては、ステロイド剤と同じ副作用がない、とする意見は正しい部分があると言えるでしょう。
また、アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤の副作用を、薬剤が持つ直接的な副作用に限ってみれば、グリチルリチン酸の副作用、つまりアルドステロンの副作用は、ステロイド剤、つまりコルチゾールが持つ副作用とは異なりますから、薬学的な観点においてみれば、グリチルリチン酸の副作用とステロイド剤の副作用が同一でないことは正しいでしょう。

しかし、使用したことによる「結果」から考えると、共通している部分があるのも確かです。
ステロイド剤によるリバウンド症状を、ステロイド剤が持つ薬剤の直接の副作用のみで考えると、そうした点が見えなくなりますから、「グリチルリチン酸にはステロイド剤と同じ副作用はない」と考える人は、こうした成分が直接影響する部分を中心に考えているのでしょう。

ところが、ステロイド剤による「副作用」は、間接的な影響も見られます。
その一つが、「免疫抑制作用による感染症の悪化」という部分です。
過去のブログで他のスタッフが何度か書いていると思いますが、ステロイド剤の中断によるリバウンド症状の何割かは、「感染症による悪化症状」と言えます。
もちろん、ステロイド剤が持つ直接の副作用が加味されることもありますが、この「感染症の悪化」が、リバウンドを長引かせやすいやっかいな原因の一つになります。
グリチルリチン酸も、昨日書いたように、皮膚のバリア機能が低下した状態(掻き壊しが見られるなど)で使用すれば、免疫抑制作用に伴う抗炎症効果は得られますが、同時に、免疫を抑制したことによる「感染症のリスク」も高まります。
もちろん、抗炎症効果そのものが弱いために、感染症のリスクも低いことは確かですが、使用が継続して、同時に、皮膚の状態が安定しない(バリア機能が回復しない)状態が続けば、やがては、その感染症に対するリスクは少しずつ高まってくるでしょう。

つまり、グリチルリチン酸による「副作用」とは、ステロイド剤が薬剤として持つ副作用と同じなのではなく、ステロイド剤を使用したことにより生じる皮膚の異常状態と同じ状態(感染症に対するリスクなど)を生む部分が問題なのであって、特にアトピー性皮膚炎の方のように、使用する目的が日頃のスキンケアの一環として反復継続する場合には、皮膚の状態が悪ければそうした副作用の影響は、使用した期間に合わせて受けやすくなる、ということが言えます。

ここが、グリチルリチン酸の副作用に対する見解の「大きな勘違い」になっていると思います。
グリチルリチン酸による「副作用」として現れる部分は、「グリチルリチン酸を吸収できる肌の状態にあること(掻き壊しがある、バリア機能が低下している、などの肌状態)」、「グリチルリチン酸の免疫抑制効果が感染症に対してマイナスの影響を与えている」といった条件が整っている方の「一部」の方に見られるのであって(元々の免疫抑制効果が弱いため、使用者のほとんどに影響が現れるのではなく、一部の方に限定されて現れていることが多い)、結果的にこうした「感染症を悪化させる」といった要因は、ステロイド剤のリバウンド時に見られる悪化要因の一つと同じであるため、「同じ副作用」と考えられているのだと思います。

なお、グリチルリチン酸は「甘草」として加工食品などに使用されていますが、経口摂取と経皮摂取は影響部位が異なりますし、また本来グリチルリチン酸が持つ免疫抑制作用は生理作用ではなく二次的な作用である薬理作用の一部であり、ステロイド剤を服用した場合と違い、経口摂取により皮膚に免疫抑制作用をもたらすことは、厚生労働省が通達した摂取制限されている量からみれば考えづらく、免疫抑制作用がなければ、当然、免疫が抑制されたことによるリスクを受けることもありません。
グリチルリチン酸を漢方薬など大量に反復継続して摂取して、偽アルドステロン症の症状を心配しなければならないような状態を除けば、そうした「日常生活内で知らず知らずのうちに経口摂取している」部分においては、アトピー性皮膚炎の悪化要因(に限って考えるのであれば)として心配する必要はほとんどないと言えるでしょう。

問題なのは、皮膚に直接「塗る」場合の影響です。
何度も繰り返しになりますが、グリチルリチン酸は、ステロイドホルモンの一つの種類であるアルドステロン(鉱質コルチコイド)とは似た作用を持つ成分といえますが、アトピー性皮膚炎の方に使用されるステロイド剤(コルチゾール:糖質コルチコイド)とは、異なったホルモンですし、成分が持つ直接の副作用も異なります。
また、問題となる免疫抑制作用はステロイド剤のように強くはありませんから、作用が弱い=副作用も弱い、ということですので、こうしたマイナスの影響が多くの方に普遍的に現れる、というものでもありません。
しかし、今のグリチルリチン酸が安全と説明している多くは、グリチリチン酸の成分としての安全性を示しているだけであり、アトピー性皮膚炎の方が使用した場合に生じる問題点(感染症の悪化)は、一定の条件下(皮膚のバリア機能が掻き壊しなどで低下した状態)においては、ステロイド剤が抱える問題と同様の問題点が生じる可能性があり、そうした観点から見れば、「グリチルリチン酸は、ステロイド剤が持つ問題点と同様の問題が生じる可能性がある」といえます。

グリチルリチン酸が持つ働きと、化粧品などに配合している目的、さらにその目的がどういった状況下において役立つのか、役だった場合のリスクはどういったことがあるのかを、広く考えてみる必要があるでしょう。

現在、アトピー性皮膚炎の方で、皮膚に掻き壊しなど皮膚のバリア機能が低下している状態にある方は、使っているスキンケアアイテム、シャンプー、ソープ類など、お肌につけるアイテムの成分を一度、チェックしてみましょう。
ステロイド剤もそうなのですが、生じるリスクを回避する最もよい手段は、「使わない」ことにあります。
もちろん、使った場合のベネフィット(利益)と使わなかった場合のリスク(不利益)は比較して考えることは必要です。しかし、スキンケアアイテムは、「グリチルリチン酸入りのものしかない」わけではありません。
できる限り、不利益が生じる(リスク)ものは避けるように注意しましょう。

                                    
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回、中田君が書いたように、グリチルリチン酸を配合した化粧品などを使用した場合に生じる「ベネフィット(利益)」は、一定の条件下(皮膚のバリア機能が低下した状態)においてのみ得られるわけであって、使用する全ての人が得られるものではないし、ベネフィットが得られることでリスクも生じることになる。
作用=副作用と表裏一体に位置しておる。もちろん、その「強さ」は必ずしも一致するわけではないが、似た強さになる傾向はある。強い作用は副作用も強く、弱い作用は副作用も弱い、という関係じゃな。
万一、副作用が生じた場合、それをリスクとして捉えて考えて、どこまでのリスクを「許容」できるのかは、使用する人自身が考えていく必要はあるじゃろうの。
必要ないリスクと考えて使わないのか、必要なリスクとして考えて使用するのは、使用者自身が決めることじゃ。
一つ、目安として考えるならば、作用が見られることが副作用のリスクについて考える必要がある一つの要素と言えるから、使用して、赤みがひいたり、かゆみがおさまった場合には、注意が必要じゃろうの。
そういったプラスの影響が必ずしもグリチルリチン酸の影響とは限らんのじゃが、もし、グリチルリチン酸の影響でないなら、無理にグリチルリチン酸が配合されたものを使用する必要はないじゃろうし、もしグリチルリチン酸の影響によるものならば、リスクの心配をしなければならんということになる。つまり、効いても効かなくても、その必要性は(ベネフィットとリスクの部分を対比させた上で)高くないことは確かじゃろうの。