インフルエンザ治療の勘違いと、アトピー治療(2)

西だ。

 

 

 

 

 

 

                                 
今日は昨日の続きで、アトピー性皮膚炎の治療においては、どのような勘違いがあるのかを述べてみたい。

アトピー性皮膚炎に対する病院での治療は、現在、ステロイド剤やプロトピック軟膏などの薬剤が中心だ。
患者が、こうした薬剤の治療を受ける上で「勘違い」していることは大きく取り上げると2つある。

                                         
1.かゆみの治療

アトピー性皮膚炎のかゆみの原因は、主に、IgEなど免疫機能の働きにより炎症が生じた炎症性のかゆみ(免疫機能の異常)と、角質層の乾燥状態によりかゆみを知覚する神経線維が真皮内から角質層内に侵入してきたことによる神経性のかゆみ(皮膚機能の異常)の二つがある。
ステロイド剤やプロトピック軟膏は、それらの薬剤が持つ「免疫抑制作用」により、炎症を生じさせないようにすることで、かゆみを抑える働きがある。
つまり、前者の「免疫機能の異常」に対しては有効性がある、ということだ。
だが、後者の「皮膚機能の異常」に対しては、皮膚に対する外部からの刺激などがかゆみを直接知覚する要因となるため、その有効性は高くない。
もちろん、後者においても、最初に刺激を受けてかゆみが生じた結果、掻くことで「炎症」は生じるため、そこから二次的に連鎖する炎症性のかゆみに対しては、それらの薬剤は有効性がある。
だが、後者のかゆみ対しては、大元の「かゆみを知覚する神経線維」を、通常である真皮内まで戻さねば、刺激を受けてかゆみが生じる「最初のきっかけ」を断つことはできない。
それが可能なのは、「角質層内に水分を保持させること」、つまり乾燥対策のケアが必要になる。
もっとも、ステロイド剤やプロトピック軟膏は、薬剤の基材として、ワセリンやクリームなど「保湿」機能を持っているため、ある程度の対応は可能だが、薬剤が目的とする本来の機能ではない。
ステロイド剤やプロトピック軟膏の長期連用に至る一つの原因は、こうした薬剤が持つ機能で対応できないかゆみに対してケアが不十分であることが挙げられる。

                                              
2.「病気」の治療と「症状」の治療

もう一つの大きな勘違いは、これらの薬剤が「アトピー性皮膚炎という病気を治療している」と考えてしまうことだ。
アトピー性皮膚炎の場合、病気が持つ自覚できる主症状は「炎症」と「かゆみ」の二つに限られるため、ステロイド剤などはこれら二つの症状の対応をカバーできることから、そう捉えてしまうことが多い。
例えば、他の疾患で考えると、今回の記事にあったインフルエンザの場合、「熱」「倦怠感」「せき」「くしゃみ」「頭痛」「関節痛」など、いろいろな症状を伴うことが多い。
そのため、日本では多剤併用が治療の基本でもあることから、そうした複数の症状を併発していると、「抗ウィルス剤」「抗生物質」以外に、頭痛や熱に対して「解熱鎮痛剤」が処方され、「せき」には咳止め、「くしゃみ」にはくしゃみ止めの薬が処方される。さらに、抗生物質が処方されていると腸内の良い菌にも影響を与えることがあるため「整腸剤」が処方されることも珍しくないだろう。
では、インフルエンザに罹って、「解熱剤」だけ処方されたとしたら患者はどう考えるだろうか?
熱が下がる=インフルエンザが治った、ことではもちろんないため、患者自身は「解熱剤の処方目的」は、熱を下げる、痛みをとる、といった「症状」に対する治療であることを意識できるだろう。
また、解熱剤が咳の治療のため使用する、とは考えないだろうし、インフルエンザそのものの治療(病気そのものの治療)を行っているとも考えないだろう。
これは、インフルエンザの場合、異なった複数の症状が現れやすく、一つの薬剤がそれら複数の症状をカバーできないため、患者自身で理解しやすいといえる。
だが、アトピー性皮膚炎の場合、先述したとおり、ステロイド剤やプロトピック軟膏が、主な症状を全てカバーできてしまうため、症状を治療していることが病気の治療もしてくれている、と勘違いしやすくなってしまうのだ。
もちろん、症状の治療を行うメリットはあり、例えばかゆみで睡眠がとれなくなっていた方が、薬剤でかゆみを抑えることで、睡眠がとれるようになり、結果的に自分の体が免疫機能を調整しやすくなることで、アトピー性皮膚炎そのものの回復に役立つことはある。
だが、少なくとも薬剤を使用する全ての方に、そうした副次的な効果が見られるわけではなく、間接的にアトピー性皮膚炎の治療に必ず役立つ、ということではない。
また逆に、症状を抑えることで、アトピー性皮膚炎の「病気」が生じた原因(睡眠不足、運動不足、ストレス、食事のバランスが悪い、化学物質の摂取が多い、など)に目を向ける機会を失い、薬剤の効果がなくなると繰り返し症状が現れることで、薬剤の長期連用に至り、薬剤のリスク(副作用)が生じる可能性が高まることもある。
                         

                         

このように、アトピー性皮膚炎の治療に対してステロイド剤やプロトピック軟膏が、どのような「役割」を持っているのか、そしてそれらの薬剤は「何ができて」「何ができないのか」を、使用する患者は、知っておくことが、「治療に失敗しない」ための「秘訣」にもなるのではないだろうか?

                                   
おまけ★★★★西のつぶやき

今回のブログで述べたように、正しい意味において考えれば、ステロイド剤やプロトピック軟膏は、炎症・かゆみといった「症状」の治療はできても、アトピー性皮膚炎という「病気」そのものを治すための治療はできない、といえる。
難しいのは、本来、アトピー性皮膚炎は「自然治癒」しやすい疾患のため、多くの患者は、初発の状況でステロイド剤などの治療を短期間受けただけで、病気そのものが治ってしまう。
その場合、本来は、体が持つ治癒力が免疫機能のバランスを正常化させることで、自らの体がアトピー性皮膚炎を「必要としない」=「治った」状態にしたわけだが、ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を治してくれた、と「勘違い」することが多く、次にアトピー性皮膚炎が再発した場合も、同じ治療を繰り返すことで、長期連用のリスクが生じてくることになる。
薬剤を使用して「症状」を治療するのであれば、同時に「アトピー性皮膚炎の原因」そのものの治療も並行して行うことが、薬剤の使用を最低限にとどめ、薬剤によるリスク(副作用)よりもベネフィット(効果、利益)を多くできることにつながると言えるだろう。