ジニ係数の縮小とアトピーの現状と・・・(2)

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

                             
今日は、昨日の続きを述べたい。
まず、ステロイド剤を長期使用した場合の問題点は、次の3つが心配な点として考えられる。

                                       

1.ステロイド剤の受容体が減少していくことで、より強いステロイド剤に移行する
2.皮膚に貯留することで、ベネフィットの持続と同時にリスクも高まる
3.長期連用により、Gal-3の受容体と結合するB細胞(sIgE+B細胞)を増加させることで、連鎖的にIgEを増強し、アレルギーの閾値をあげてしまうことになる
                                        

1と2については、エビデンスで証明されており、ステロイド剤の長期連用に至る一般的なパターンだろう。
3については、アトピー性皮膚炎の症状を抑え続ける限り、アトピー性皮膚炎と言う病気そのものを悪化させてしまう、という矛盾した「悪循環」を形成する可能性がある。
昔は、このサイクルが短く(病院が強く症状を抑える治療に専念していたため)、抑えられない状況になるまでの期間が早かったのだが、最近は、処方と使用方法が「上手」になったため、使用頻度が増える、あるいは強さのランクが強いものに変わっていくことは、そのリスクが軽減したことは確かだろう。
同時に、最近は病院においてアトピー性皮膚炎の病気の原因そのものを解消できるように、生活指導なども行われるようになった話も聞くようになった。

だが、そのリスクは緩やかになっただけで、リスクそのものがなくなったわけではない。
なぜなら、リスクを「なくす」ためには、ステロイド剤を使わない、という方法しかないからだ。ステロイド剤を使う以上、そのリスクは多かれ少なかれ生じることは確かだろう。
もっとも、現在は、そのリスクが最小限にとどめられ、そしてステロイド剤を使用したことによるベネフィット(利益、効果)が最大限に生かせている状況とも言え、現状では問題は多くない。
心配なのは、この状況が10年後、20年後も同じ状況にあるかどうか、ということと、問題が生じた場合、長期間の連用による皮膚への直接のダメージは、短期間で影響が現れるよりも解消するのに大きな時間を要するケースが多いことから、問題が現れた際の「問題の大きさ」にある。

ステロイド剤の使用期間が長くなればなるほど、リスクが生じる確率は高くなり、また同時にそのリスクの度合いも高くなるわけだが、逆にいえば、ステロイド剤の使用期間が短ければ短いほど、リスクが生じる可能性は低く、また同時にリスクの度合いも低くなりやすい、ということだ。
ステロイド剤の中断によるリバウンド症状は、状態が悪いと、日常生活に大きな支障をきたすことになる。
さらに、皮膚の元々のダメージ(掻き壊しの状態、バリア機能が低下した状態などにより)が大きいと、その皮膚の状態が回復するまでの期間が余計にかかり、またバリア機能が低下した状態が続けば、本来のアトピー性皮膚炎そのものを悪化させる要因につながるため、季節的な外的要因が加わることで、良くなったり悪くなったりを繰り返しやすくなる。
リバウンド状態を何度も繰り返す方がいるが、これは、ステロイド剤が「できらない」のではなく、ステロイド剤によりダメージを受けた機能が回復しきっていないことを元にして起こる場合が多い。

このように、ステロイド剤を長期間使用することは、使用期間に応じたリスクが生じる可能性がある、ということだ。
もちろん、こうしたリスクが低く済む方もいる。
だが同時に、リスクが高く現れる方もいて、その比率も、使用期間が長くなればなるほど、後者の方が多くなる傾向がみられる。

プロトピック軟膏の場合も、長期連用によって「感染症悪化のリスク」「発ガンのリスク」など、ベネフィットだけではなくリスクも考える必要がでてくる。

このように、アトピー性皮膚炎に治療における薬剤のリスクは、短期間では顕在化することはあまりないのだが、長期間の使用により、その使用期間に応じてリスクが高まる、といえる。
そして、ここで示す「長期間」とは個人差は大きいが、それは「ヒトの一生の期間」よりもはるかに短いことが多い。「一生使い続けても、使用者が満足できるレベルのリスクにとどまる」ことは、マイノリティ(少数派)の方だといえるだろう。
マジョリティ(多数派)は、十年単位で、使用者が許容できないリスクが生じ、医師のステロイド剤治療以外を探すことになるのが実情だ。

こうしたことから、「今、症状が落ち着いている人」は、同時に、今後、症状がでないような対策、つまりアトピー性皮膚炎という病気そのものを克服できるような対策を行うことが望まれるともいえる。
漫然と、症状がでれば時々ステロイド剤で抑えていく、というのは、今は良くても、十年後、二十年後のリスクにつながっていることを忘れてはならないだろう。

ジニ係数の拡大したように見えても実際は縮小していたのと同様に、薬剤の使用でアトピー性皮膚炎の症状が落ち着いているように見えることが、アトピー性皮膚炎という病気そのものを落ち着かせているとは限らないのだ。
一年前、一か月前、先週、そして昨日を「生活していく中」で積み重ねた結果が「今」の状況を作っている。
同時に、今日、明日、一週間後、一ヶ月後、一年後と積み重ねていく先に「十年後の自分」があること、そして「十年後の自分」の姿が望むべき姿であるためには何が必要なのかを考えて欲しいと思う。

                                  
おまけ★★★★西のつぶやき

なぜ、今回、このように「先のリスク」を考えて欲しい、という内容を書いたのかというと、ステロイド剤を中断した方の多くは、「もっと早くできていれば・・・」と考えることが多いからだ。
もちろん、リスクの度合いは可能性でしかなく、必然ではない。
しかし、リスクが現れる可能性は、使用期間に比例して高まる傾向はどうしてもあるため、そのリスクがどこまで「許容」できるのかは、自分の中で、しっかり向き合っておくことも必要だろう。