【Q&A】リバウンドについて(1)

今日は、読者の方から、メールでいただいたご質問にお答えしたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                       
●Wさんからのご質問

最近、ブログに気づいて読みはじめました。
ブログの量が多すぎて、まだ全部は読めていないのですが、病院で治療を受けている医師の説明と違う部分があったので、質問します。
ステロイド剤の使用についての質問です。
Webでステロイド剤については、いろいろ調べて、さらに医師の意見の踏まえて、自分なりに理解して使用してきたつもりです。
ただ、ほぼ毎日ステロイド剤を使い続けて10年以上になりますが、肌の状態はいわゆる色素沈着があって、また肌の目も粗くなって固くなっています。
今までは、医師のいうように長くコントロールしながら使っていけると考えていましたが、実際、自分がこうした状態になると、このまま使って良いのか疑問が出てきました。
特に、最近、ステロイド剤とプロトピック軟膏を併用しているアトピー歴が30年以上の方に会ったときのことです。
今の私の肌の状態もは悪い方だと思っていたのですが、その方の状態は、まだ私がましな方だと思えるような悪い状況でした。
そしてその方が言うには、私のような肌の状況はもう10年以上前に経験したが、そこから少しずつ悪くなっていって今はこのような状況になった、ということ、そして、今ではステロイド剤もプロトピック軟膏もあまり効かない状態だが、ときどき襲ってくる狂うようなかゆみは、薬でないと紛らわすことができないから、悪いと分かっていても使わざるを得ない、そして、今の私の状態なら次のステップにいくまで、まだ少しの時間があるから、今のうちにステロイド剤の使用が止められるように努力した方が良い、という話をされていました。
医師からは、専門医が薬剤を注意深く処方することで何十年でもコントロールしながら使うことができる、と言われていて、自分でもそう思ってきましたが、その方が言うには、何十年でも確かに使えるが肌の状態が健康な状態を保ちながら使うことはできないだろう、実際、何十年も使ってきている同じような知り合いが数人いるが、ほぼ自分と同じような肌の状態になっている、ということでした。
そこでお聞きしたいのは、

・専門医が処方すれば、ステロイド剤は何十年でも安全に使うことができるのか?
・何十年も使うと、肌の状態はどんどん悪化していくのか?
・仮に、今、ステロイド剤の使用を中断した場合、リバウンドを乗り越えることができるのか?

ということです。
自分としては、医師が言うように、アトピー性皮膚炎は一生治らないが薬剤で日常生活に支障がないよう一生コントロールできると思っていました。
でも、一生コントロールできていても肌の状態が、どんどん悪くなっていくのは辛いです。
その方も言っていましたが、症状が悪化する時期には入院を余儀なくされることもあるようで、日常生活に支障がない、とはとても思えません。
現在、使っているステロイド剤はストロングのレベルです。
今、ステロイド剤の治療を続けていくべきか、迷っています。
博士の考えを聞かせてください。
よろしくお願いします。

                               
Wさん、こんにちは。
いただいたメール自体が長かったので、質問の答えは数日に分けて回答したいと思う。

まず、最初の質問である

・専門医が処方すれば、ステロイド剤は何十年でも安全に使うことができるのか?

というところから、見ていきたい。
ここで、一つ「キー」といえるのは「安全」という言葉の範囲じゃろう。
患者側の「安全」とは、副作用がない、あるいは副作用の範囲が極めて少ないことを意味しておると思う。
じゃが、医師が「安全」という言葉を発するとき、その意味合いは「重大な副作用が生じない」ことを指しておる。
なぜなら、効果がある薬剤は、効果に見合った「副反応」が生じやすく、ステロイド剤でかゆみを効果的に抑えられれば、相応のリスクが生じておることは、医師としては「常識」の範疇じゃろう。
そこで、その「相応のリスク」が生体に出現しないように「さじ加減」することが、専門医はできると言っておるわけじゃが、そこでは「重大な副作用」は現れなくても、「軽い副作用」は現れることを「容認」しておる状況とも言えるじゃろう。
これは、そうした医師からみた軽い副作用が現れること自体が誤り、ということを意味しておるのではない。
医師は、そうした「軽い副作用」というリスクと、痒みを抑えて日常生活が送れるというベネフィット(効果、利益)を比較した場合、リスクが生じたとしてもベネフィットの方を優先すべきで、それを患者側も望んでおる、と考えておるからじゃ。

実は、ここに医師と患者の認識の「ズレ」があるのかもしれん。
医師側は、一定のリスクは容認しながら薬剤を処方するわけじゃが、医師が容認したリスクは、必ずしも患者側が容認できる、とは限らんからじゃ。
例えば、今回、Wさんに生じておる、皮膚の色素沈着、皮膚自体の硬化状況などは、Wさんは心配になるわけじゃが、医師はかゆみを抑え続ける代償として容認すべきである、と考えておると仮定すれば、患者によっては、かゆみが抑えられるメリットはとても大きく、そうした皮膚の異常状態を招くというリスクは容認できる方もおるじゃろうが、Wさんのように容認できない方もおる、ということじゃ。

つまり、そうした「重篤な副作用」の「重篤」という部分をどのように認識するか、ということはあるのじゃ。
「重篤」の範囲を日常生活を送るのが常に著しく困難になっている(常に入院を余儀なくされる状況など)、あるいは生命に危険があったり生活を送る上で支障が起きる障害が生じている、と考えれば、確かに医師がいうように、そこまでの異常状態を生じることなく、何十年も使用することは可能じゃろう。
じゃが、Wさんが今心配になっているような、肌状態の異変(色素沈着や固くなっている、粗くなっているなど)を「重篤」と考えるのであれば、何十年も使用することは、相当に難しくなってくる。
当然、「何十年の使用」という部分は、毎日使用するのか、一週間に一度なのか、という「頻度」の問題もあるから、一概にいうことが難しい部分もあるのじゃが、Wさんのように「ほぼ毎日」使用した場合には、Wさんが考えている重篤な副作用(皮膚に異常が生じる状態)、という範囲で影響が生じる可能性は、かなり高いと言えるじゃろう。

このように、「薬自体を何十年も使い続けること」自体は不可能ではないが、使い続けることで生じる影響は、その頻度や薬剤の強さ、そして使用部位と量によって、使用期間が長くなればなるほど、リスクは高くなる、と言えるじゃろう。
そして、その「リスク」の範囲は、医師が考える「リスク」と患者側が考える「リスク」は、必ずしも一致してはおらん、ということじゃ。
したがって、少なくともWさんが考える「安全」のレベルを基準にすれば、「長期間の連続使用は難しい」と言えるじゃろう。

続きは明日じゃ。

             
おまけ★★★★博士のつぶやき

ステロイド剤が「効かない」状況になって、はじめてステロイド剤の使用に疑問を抱く方は多い。
本来なら、アトピー性皮膚炎という疾患自体は、急性の状態で始まり、多くの方は、慢性化せずに落ち着くわけじゃが、元の原因が解消できずにその影響が強いと、症状が繰り返し現れることで、徐々に慢性化していって、慢性化していく中で、ステロイド剤の使用が知らず知らずのうちに長期連用につながっていくと、ステロイド剤の使用で受けられるベネフィットを、ステロイド剤の使用によるリスクが上回る危険性が高まることになるといえるじゃろう。
ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を「治す」ことはできる薬剤じゃ。
じゃが、アトピー性皮膚炎という病気自体を治すことはできず、使用期間が長引くと、病気を悪化させる要因(IgEを増強させるなど)にもなりうることを忘れないようにして欲しいと思うの。