夏場の脱保湿?(2)

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

                          
今日は、昨日の続きです。

今回、ご質問いただいたAさんが、7~8月の暑い時期に乾燥状態が悪くなかったのは、暑さによる発汗作用で、スキンケア機能が高まったことも要因と考えられます。
ところが9月に入って、気温が少し下がってきて、汗がでにくくなると、自らの力で行うスキンケアの働きが低下することで再び、乾燥状態が見られ、「皮膚機能の異常状態」による痒みが生じている可能性があるものと思われます。

「脱保湿」と言われる方法が成功するかどうかの大きなカギは、「汗をかけるかどうか」にあると考えられます。
実際、過去、あとぴナビにご相談いただいた方の中で、脱保湿で上手くいった方、失敗した方に共通していたのは「汗をかけていたかどうか」にありました。
汗をかきにくい状態が続く中、無理に脱保湿を行うことは、生理機能的に痒みを知覚する神経線維が表皮内に侵入することで生じる痒みからの逸脱ができずに、その痒みをきっかけに、免疫機能の異常状態からくる痒みも誘発することで、長期の症状悪化、もしくは停滞期に陥る恐れがある、ということです。

自らの力による「スキンケア」ではなく、外部から行う「スキンケア」は、確かにマイナス点がないわけではありません。
特に、皮膚にとって反応しやすいかどうか別にしても「異物」であることに違いはなく、そこからくる刺激による症状の悪化、停滞、という恐れは常に抱えていることは確かです。
しかし、スキンケアを自らの力に頼りきりにすることは、その機能が回復する条件(汗がかけるかどうか)が整っていなければ、いつまでたっても皮膚機能の異常状態から生じる痒みから逃れられなくなり、痒みの改善、皮膚の改善が見込みづらくなってきます。

こうしたことをまとめて考えると、「脱保湿」という方法については、自らスキンケアを行うために必要な「汗をかくことができる」という条件が整っている人であれば、それがアトピー性皮膚炎そのものの改善につながる可能性はありますが、汗をかきにく状態の人が行うことは、悪循環によるさらなる状態の悪化を招く恐れもある、ということです。
当然、後者の方の場合には、外部から適切なスキンケアで皮膚機能を「補助」してあげることが大切であり、その「補助」によるベネフィットは、リスク(マイナス点)を十分に上回ると言えます。
逆に、後者の方がスキンケアを一切行わないことは、「行わないベネフィット」が非常に低く、相対するリスク(マイナス点)が大きいことで、回復に支障を生じるとも言えるでしょう。

アトピー性皮膚炎に対して「脱保湿」が有効かどうか、という議論がされることが時々ありますが、実は、有効かどうかの対象を「アトピー性皮膚炎」に置くことは、ある意味でナンセンスとも言えます。
「脱保湿」という方法がアトピー性皮膚炎を治しているのではありません。
脱保湿することで、自らのスキンケア機能を高め、その自らが行った「スキンケア機能を高める」という働きこそが、アトピー性皮膚炎を治している要因であることを間違えないにしなければならないでしょう。
同時に、スキンケアの機能は確かに、外部から補助することで、高まりづらくはなります。
しかし、外部から補助することで、スキンケア機能が「失われる」わけではありません。
自らの力で行うスキンケアは、外部からの「補助」があっても、その補助の方法が適切ならば、スピードは遅くても少しずつ回復させることも可能と言えます。

例えば、今回、Aさんが体験したように夏場で汗をかきやすい環境であれば、自ら持つスキンケア機能は、その時点での力としては最大限に高まっているとも言えます。
大切なことは、今のアトピー性皮膚炎の「痒み」を引き起こしている原因がどこにあるのか(今回でいえば、皮膚の乾燥状態が一つのポイントです)、そしてその原因を解消するためには、いくつか選択できる方法の中でどの方法をチョイスすることが良いのか(汗がかける状態の人は脱保湿という選択肢も良いでしょうし、汗がかきづらい人ならば、適切な外部からのスキンケアを行う、という方法が最良の選択肢と言えます)を見極めることでしょう。

今回ご質問いただいたAさんから、詳しいお話をお伺いすると、元々、汗をかきにく体質だったということです。
それでも今年の夏のように極端に暑い状況下では汗はかいていたようですが、9月に入ってからは、汗が出にくい状況になっていたそうです。
そこで、脱保湿を行う上で必要な条件をお話して、少なくとも脱保湿を再開するためには、まず汗をしっかりかける体づくりを行いましょう(運動や入浴で)、それまでは、当面、皮膚機能に対する適切な「お手伝い」をすることで、今、生じている痒みの緩和をお薬以外で図りましょう、とお話し、ジェルとクリームによる保水・保湿を行ってもらいました。
ご相談があったのが先週金曜日でしたが、数日、適切なスキンケアを行った結果、一昨日にいただいた電話では、ちくちく、ムズムズした痒みはおさまったとのことでした。
それだけでも、気持ち的に楽になりました、と喜んでおられました。

このように、アトピー性皮膚炎に対して、何らかの対処(治療やケア)を行う場合、その対処は常に一定の方法が望ましいのではなく、「現在の状況」に対して必要なことが変化することを忘れないようにしましょう。

              
おまけ★★★★西のつぶやき

脱保湿を勧められた場合、その治療を行う医師などが「脱保湿に役立つ特性の塗り薬」のようなものを渡すケースがある。
注意して欲しいのは、そうした「特製の塗り薬」も、皮膚にとっては異物であり、ジェル状、クリーム状になっていれば、当然だが「スキンケア」の機能を持っている、ということだ。
医師が渡すものは脱保湿をじゃましない、などということはあり得ないと考えた方が良い。
ステロイド剤に特別な処方を加えて副作用が出ないようにした、という事例と同じで、そこにエビデンスがあるわけではないことは忘れてはならないだろう。