医業と医療の境目

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                                          
今日は、Webで見つけたある記事を紹介したい。

                                      
●「皆さん、どんどん心筋梗塞に」…演説会で市長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130708-00000617-yom-soci

大阪府柏原市の中野隆司市長が7日夜、同市内で開かれた参院選大阪選挙区の日本維新の会公認候補の演説会で、市立柏原病院をPRする際、「市民の皆さん、どんどん心筋梗塞になって下さい」と呼びかけた。
 
病気になることを奨励すると受け取れる発言で、中野市長は終了後、読売新聞の取材に対し、「誤解を招いたなら、申し訳ない」と釈明した。
 
演説会には市民ら約200人が出席。応援演説に立った中野市長は、心筋梗塞について同病院の診療体制が充実したとアピールしたうえで、「どんどん心筋梗塞になって下さい」「1回手術をやったら、病院に250万円入る」と述べた。
 
中野市長は、「心臓病のいい先生が来てくれたので、安心して柏原病院を使ってほしい、という意味だった」と話した。
 
中野市長は2月の市長選で、地域政党・大阪維新の会の公認で立候補し、初当選した。

                                              
市長の発言は、演説の中の一部で出たものであり、ニュアンス的には、記事に書かれているようなものではなく、単なるブラックジョークとして出たものかしれない。
ただ、一つ確かなことは「1回手術をやったら、病院に250万円入る」ことだ。

一般的に、心臓や脳の外科手術を行うと、その後のICUの利用や入院を加えて、保険点数で20万点~30万点が計上される。
保険点数は1点が10円のため、一回の外科手術で200万~300万円は普通だから、市長が発言した「250万円」は妥当な金額ではある。
だが、ここには二つの問題点がある。

まず一つ目は、病院の「経営」の問題だ。
市長の発言は裏を返せば、病院側にとってこうした高額の収入が得られる手術が必要、ということでもあり、実際に、病院経営においては、こうした高額の外科手術は「ドル箱」という話を医療関係者から聞いたこともある。
逆にいえば、今の病院経営は、こうした高額の外科手術が定期的にないと「成り立たない」苦しい状況ともいえる。

もう一つは、負担の問題だ。
心筋梗塞で250万円の費用が必要な場合、今の保険制度から考えれば、患者は3割負担(高齢者は1割負担)であるから、約75万円の費用が必要なのでは、と思うかもしれないが、実はそうではない。
高額な医療に対する負担制度は日本の場合、ある程度、整っており、こうした高額な費用がかかる医療行為(救命など、不可欠な医療の場合。整形などは除く)に対しては、患者の負担は数万円で良い。

●厚生労働省のホームページから「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf

今の日本の医療費は財政に占めるウェイトが大きくなっているが、こうした高額療養費の負担も関わっている。
もちろん、こうした高額療養費制度があるからこそ、重大な疾病に罹っても、手術を安心して受けられるわけだが、問題は、こうした高額療養費制度に頼らないと、ある意味、今の「医療」が崩壊しかねない、状態にある、ということだ。

医療は本来、患者のためにこそ、必要なものであるはずなのに、その制度を維持していくためには「医業」として成り立たせないといけない、というのはやりきれない部分もある。

例えば、絶対必要でなくても検査をとりあえず患者に行う、といったことも「医療では不要」でも「医業では必要」だからこそ行っていることだ。
こうした医療が医業によりそっていくことは、過剰な医療の問題点もあるため、「必要な医療」から遠ざかることにもなりかねない。

アトピー性皮膚炎の場合も、本来、患者にとって必要なのは「アトピー性皮膚炎という病気の原因」につながるための追究だが、実際の医療においては、アトピー性皮膚炎により生じた「痒み」「炎症」といった「症状」の治療に焦点があてられ、「症状の治療」は行えても「病気の治療」につながっていないことがある。
これも「病気の治療」の部分は、生活面や生活環境面を改善する必要があるわけだが、その部分では病院側は「収入」が得られないから、行うことができないのだ。

医療が医業によりそわないでよい仕組み作りが望まれるところだ。

                                         
おまけ★★★★博士のつぶやき

診療科がいくつもあるような、ある程度大きな病院では、毎月、責任者(医者じゃ)が集まって、経営会議が行われるのが普通じゃ。
「今月は手術の件数が少ない」とか言われるわけじゃが、だからといって無理やり手術を行うことは、患者側にとって利益は少ないし、国民の税金も医療費として負担が増えるわけじゃ。
じゃが、それをしないと病院が立ち行かなくなる=患者の不利益になる、ということにつながるようでは困る。
本末転倒とも思える事態が、医療においては根強く残っていることは、デリケートな問題でもあり難しいことではあるが、医療を利用する患者側も「医療」と「医業」のバランスについて知っておいた方が良いかもしれんの。