痒みは心臓から?

6月に入って、今月は、湿度が高いじめじめした日が続くことになるのじゃろうか?

 

 

 

 

 

  
感染症には十分、気をつけながら過ごして欲しいと思うの。

さて、アトピー性皮膚炎の方の最大の悩みは、当然ながら痒みにある。
この痒みとは、昔は「痛点」で感じるものじゃと考えられた時期もあったのじゃが、最近は、痒みは痛みとは別の神経回路により感じておることが分かっておる。
角質層の乾燥により生じる痒みは、通常、真皮内にとどまっておるはずの痒みを知覚する神経線維が角質層の乾燥により表皮内に侵入することで、外部からの刺激を痒みと知覚しやすいことに由来しておるわけじゃが、先日、Webで非常に興味深い記事を見つけたので、紹介したい。
 
    
●痒みのメカニズム、意外な正体が判明
http://eco.goo.ne.jp/news/nationalgeographic/detail.html?20130527001-ng
  
なぜわれわれは痒(かゆ)みを感じるのか? それは科学の大きな謎だ。
 
マウスを使った研究によって、痒みの感覚を引き起こす“犯人”が見つかった可能性がある。心臓で用いられている分子が脊髄にメッセージを送る役割も担っており、これを受けた脊髄がおなじみの皮膚がムズムズする感覚を生み出しているという。

従来、痒みは弱い痛みと考えられていたが、この研究結果によって痛みとは別の現象であり、「独自の回線で脳に伝わる」ことが明らかになったと、研究共著者でメリーランド州ベセスダにある米国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)の分子遺伝学者マーク・フーン(Mark Hoon)氏は声明の中で述べている。
マウスとヒトは生物学的に似ているため、人間もこれと同じ回路を持っているのではないかと研究チームは考えている。
また、今回の研究をきっかけに、分子が痒みを引き起こすのを阻止する方法が見つかる可能性もある。特に湿疹や乾癬などで慢性的な痒みに苦しむ多くの人々にとって、人生を変える治療法になるかもしれない。

痒みは痛み以上に治療を必要とする深刻な症状として認められつつある」と、カリフォルニア大学デービス校の神経生物学者で痒みを研究するアール・カーステンズ(Earl Carstens)氏は話す。カーステンズ氏は今回の研究には参加していない。
痒みがあまりにひどく、頭蓋骨をかき貫いて脳まで達してしまった女性の例もあるとカーステンズ氏は言う。「痛みに比べ、われわれは痒みのことをあまりに知らない。今回の研究は痒みの基本メカニズムに関する知見を増やしてくれる」。
 
◆痒みの源に迫る
 
痒みを引き起こすのは、B型ナトリウム利尿ペプチド(NPPB)という心臓から分泌される分子で、腎臓が排泄するナトリウム量を調節することで血圧を制御するはたらきが知られている。
チームがNPPBを研究することに決めたのは、痒みを感じる細胞から適切な分子を見つけ出す過程で、NPPBが有力候補として浮上したためだ。
しかし、それにはまずNPPBが脳に痒みを感じさせる神経伝達物質として作用していることを突きとめなければならなかった。
そこでチームはマウスの皮膚にNPPBを注入したが、何も起こらなかった。ところがNPPBを脊髄が他の神経と連絡する部位に注入したところ、マウスは体をかき始めた。痒みの発生を示す何よりの指標だ。
続いてチームは、NPPBをもたないマウスを遺伝子操作で作りだした。痒みの原因となる複数の化合物にさらしたところ、マウスは全く体をかかず、「これだとわかった」とフーン氏は述べる。NPPBをもたないマウスは痒みを感じることがなかった。
痒みの感覚それ自体は、おそらくわれわれを疾患から守るために進化したものだとフーン氏は述べる。「痒みというと、あの皮膚を伝わるいやな感覚を思い浮かべるかもしれないが、痒みはわれわれを守り、皮膚についた刺激物を害になる前に取り除くための手段だ」。
 
◆2つの役割を兼ねる分子
 
カリフォルニア大学デービス校のカーステンズ氏は、痒みとは縁遠い役割を担うNPPBが痒みを引き起こしているとは「思ってもみなかった」と話す。
研究を手がけたフーン氏も、「この分子が心臓から分泌されているというのが実に奇妙」だと述べる。
しかし、われわれの体はきわめて効率的にできており、NPPBのように特定部分に複数の仕事をさせる方法を見出すこともよくあると両氏は指摘する。
フーン氏はこれを「生物学的なカセットテープ」にたとえる。体の異なる器官で「再生する」と異なる反応を示すからだ。今回はたまたま痒みを引き起こす分子が見つかっただけで、われわれの体には2つの仕事をこなす分子がほかにも存在するのではないかとフーン氏は考えている。

今回の研究は「Science」誌5月24日号に発表された。
   
 
今までは、痒みを引き起こす部位におけるヒスタミンなどの化学伝達物質による炎症→痒みというところは分かっておったわけじゃが、今回は、その各からだの部位で「作られた」痒みを「脳」で知覚させるための神経伝達物質が明らかになった、ということじゃろう。

例えば、「痛み」も痛みを生じている部位で作られた情報を、伝達物質により脳で知覚するわけじゃが、鎮痛剤のような脳で知覚することを遮断する薬剤に似た薬剤の開発が可能になるのかもしれん。

そうなれば、今のアトピー性皮膚炎の治療も劇的に変わるじゃろう。
つまり、皮膚で炎症は起きておる、痒みも作られておる、じゃがその痒みを脳で知覚することを遮断できれば、当然ながら「掻く」行為が必要なくなる。
痒みを脳で感じないわけじゃから当たり前なのじゃが、皮膚を掻かなければ、さらなる炎症→皮膚のダメージ、といった部分が避けられることになる。

もちろん、痒みを脳で感じさせなくすることが、何らかの弊害を生む可能性は否定できんのじゃが、そのリスクが軽微ならば、画期的な治療とも言えるかもしれん。

ステロイド剤やプロトピック軟膏の大きな問題点は、「免疫を抑制すること」にあるといってよいじゃろう。
じゃが、皮膚に生じた炎症も、免疫を抑制することなく「放置」できるわけじゃから、時間の経過とともに、ほとんどの炎症は引いてゆくことになるじゃろう。

今回の報告は「サイエンス」という有名な科学雑誌に掲載されておるから、今後、さまざまな研究者が追試やこれを元にした基礎研究を行うことになるのかと思う。
ぜひ、このことは一つの情報として知っておいて欲しいと思うの。

    
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回の研究が進んで、鎮痛剤と同様に「鎮痒剤」のようなものができたとして、それが副作用のリスクなども鑑みながら実用化されるまでには、まだ十年単位の月日が必要になるとは思う。
じゃが、これまでは痒みを生じた部位の治療が中心じゃったわけじゃが、痒みを生じた部位を放置しながら痒みを感じない、という治療ができれば、本当に画期的な治療になるのかもしれん。
もっとも、痛みを感じない=痛みが治る、のではなく痛みを生じさせている原因(骨折など)を取り除かない限り、原疾患が治療できていないのと同じように、痒みを感じない=痒みが治る、ではないことは承知しておいた方が良いじゃろうの。