マクロファージとアレルギー(2)

東です。

 

 

 

 

 

 

  
今日は昨日の続きです。

 
●「組織常在型M2様マクロファージ」は免疫担当ではなかった – 阪大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130328-00000031-mycomj-sci
 
 
(昨日の続きより)
 
続いて、どのような分子メカニズムによってTrib1が周囲のタンパク質に作用しているのかを明らかにするために、研究グループは野生型とTrib1-/-骨髄細胞とを用いて、「コロニーアッセイ」による調査を行った。コロニーアッセイとは、近年になって、ES細胞やiPS細胞由来の造血幹細胞の分化能を調べるシステムとして頻繁に用いられているシステムで、細胞表面マーカー、遺伝子発現解析では得られない分化能を示すコロニー数やコロニーの種類についての解析結果を得ることが可能だ。その結果、これも抹消器官における結果と一致し、Trib1-/-骨髄からは正常なマクロファージコロニーや好酸球コロニーの出現はほとんど確認できないというものとなったのである。
 
なおTrib1は、「C末端」側にタンパク質分解に関与する「E3ユビキチンリガーゼ」である「COP1」との結合部位を所持しているという構造的な特徴を持つ。そこで研究グループは、Trib1を欠損させた骨髄細胞に、野生型のTrib1とCOP1結合部位を削った変異型Trib1とを各々再発現させ、それらの細胞を用いたコロニーアッセイを再度実施することにした。
 
そして、前者の野生型を発現させた細胞ではマクロファージコロニーなどが再発現したが、後者の変異型を発現させた細胞では同コロニーの再発現は観察できないという結果が得られたのである(画像3)。以上の結果から、「Trib1-COP1複合体」は未知の目的遺伝子の発現量を調節することによって、これらの分化に寄与していることが明らかとなった。
 
さらに実験は進められ、研究グループはそこでTrib1-COP1複合体のターゲットとなっている遺伝子を同定するため、分化に重要であることが報告されている転写因子の発現量について、野生型とTrib1-/-細胞とで網羅的な比較を行った。すると、転写因子「C/EBPα」の発現量がTrib1-/-細胞で上昇していることが確認されたのである。
 
それを受け、次にTrib1-/-骨髄細胞においてC/EBPαの発現量を低下させた細胞を用いて、RNAi(RNA干渉)の技術を応用したコロニーアッセイが行われた。すると、正常なマクロファージコロニーの再形成が観察されたのである。以上の結果から、Trib1はC/EBPαの発現量をCOP1依存的に調節することによって、マクロファージの分化を司っていることが明らかとなった次第だ。
 
なお、これまでの報告によると、「全ゲノム相関解析」による結果として、遺伝的にTrib1に変異を所持する患者は脂質代謝に異常をきたすことがわかっている。そこで、研究グループは次にTrib1-/-の脂肪組織の調査を行うことにした。するとTrib1-/-マウスでは、脂肪組織においても組織常在型M2様マクロファージが著明に減弱していることがわかったのである。
 
さらにMRIを用いた解析も実施され、Trib1-/-マウスでは、冒頭で述べたようにリポディストロフィーの症状を呈していることが明らかとなった(画像4)。研究グループは、この点について「興味深いこと」と形容している。また、この遺伝子欠損マウスにM2様マクロファージを移植したところ、リポディストロフィーが改善することも確かめられた。リポディストロフィーはM2様マクロファージの欠損から生じること、つまりこの組織常在型M2様マクロファージが脂肪細胞のメンテナンスを行っていることが明らかとなったのである。
 
リポディストロフィーの発症は、しばしば重篤なメタボリックシンドロームを発症させてしまうことから、通常の食事下におけるコレステロールや中性脂肪「トリグリセリド(トリアシルグリセロール)」の血中濃度も調べられた。すると、Trib1-/-マウスでは野生型と同程度のものだったが、高脂肪食を与えた場合は値が大きく変化したのである。Trib1-/-マウスは野生型と比較して著しく上昇したほか、糖尿病患者が示す「耐糖能異常」や「インスリン抵抗性」といった病状を呈したのだ(画像5)。またTrib1-/-マウスの脂肪組織では、炎症性サイトカイン「TNFα」の発現が上昇していることも確認された。
 
以上の結果から高脂肪食下において、Trib1-/-マウスでは、リポディストロフィーを起因とした重度のメタボリックシンドロームの病態を発症していることが明らかとなった次第だ。
 
これまでマクロファージは、生体内に侵入してきた病原性のバクテリアやウイルスを排除する攻撃的な役割の細胞集団がと考えられてきた。しかし、そうした従来のとらえ方とは対照的に、今回の組織常在型M2様マクロファージは脂肪細胞という抹消組織のメンテナンスを行っていることが明らかとなった。なお、研究グループが以前に報告した、アレルギー反応と深く関与しているJmjd3依存的M2マクロファージのタイプは、脂肪組織などのメンテナンスには関与していないことも今回の研究により判明した。また研究グループによれば、Trib1によって分化してくるM2様マクロファージがアレルゲンに対して正常に応答したことを興味深いことだという。なお以上の研究結果から、ヒトの体内にはさまざまなタイプのM2マクロファージが存在していることが予想されると、研究グループは考察を述べている。
 
またヒトにおける全ゲノム相関解析から、Trib1に点変異を所持している場合において、代謝疾患を引き起こす可能性があるという報告もあることから、今回のマウスを用いた各種実験によって確かめられたTrib1の作用機序と非常に類似した方法で、ヒトでも機能していることが推測されるという。そうしたことから、この遺伝子発現の調節が代謝疾患を克服するための創薬の新たな切り口となることが考えられるとした。
 
さらに、がんの転移や浸潤、動脈硬化などの疾患にも、このM2マクロファージの関与が示唆されていることから、各々の疾患に関与するM2マクロファージの分化や活性化、そしてどのようにその疾患にこの細胞が影響を与えているかという作用機序を調べることにより、これらの病態の克服に向けての大いなる1歩を踏み出すことが可能となるとも研究グループはコメントしている。

   
かなり長い文章で、また専門用語ばかりで大変わかりづらかったかと思いますが、このマクロファージに関する研究が進むと、アトピー性皮膚炎の治療にも大いに役立つ可能性があります。
アトピー性皮膚炎は、病態自体は似ていますが、その原因は多岐にわたることが分かっています。
これまでは、発症要因、あるいは悪化要因として生活内の要因から、免疫システム(昨日、説明した第二次防衛システムの方)、皮膚の機能の二つを絡めて その原因と対策が考えられてきました。
しかし、今回の記事にある「マクロファージ」は、同じ免疫システムでも、その役割とマクロファージが働くシステムは、第二次防衛システムであるヘルパー細胞が作り出す抗体とは全く別物であると言ってよいでしょう。
したがって、このマクロファージが関与するアレルギーの仕組みが判明することは、アトピー性皮膚炎の原因と対策をさらに細分化して、個々に合わせた対応が可能になる可能性があります。
例えば、ステロイド剤は「免疫抑制の働き」により、炎症を抑え、痒みを抑制するわけですが、ステロイド剤はマクロファージの制御に働くのではありませんから(一部、関与する部分はあります)、マクロファージが関与する痒みというものがはっきりすることで、治療法も新たな方向性が見出せる可能性が考えられるわけです。

今回、紹介した記事は、アレルギーとマクロファージの関係について書かれたものではないのですが、この研究が進むことで、マクロファージがアレルギーに関わる役割が解明されてくる可能性があるため、紹介いたしました。

今後の新たな進展に期待したいと思います。

  
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回、東君が紹介した記事は、マクロファージがアレルギーに関与する割合が高ければ高いほど「重要」になってくることは確かじゃろう。
もちろん、関与する割合がごくわずかで、その影響も小さかった、ということもあり得るのじゃが、千差万別ともいえるアトピー性皮膚炎の原因を考えていく上では、こうした方向性も大切と言えるじゃろう。