マクロファージとアレルギー(1)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
アトピー性皮膚炎などアレルギーの症状を引き起こす免疫システムは主に、Bリンパ球が関係していると考えられていますが、マクロファージも関与していることが分かってきました。
阪大が英国科学雑誌「Nature」で発表した記事を紹介したいと思いますが、全文がかなり長いため、二日に分けて掲載いたします。

 
●「組織常在型M2様マクロファージ」は免疫担当ではなかった – 阪大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130328-00000031-mycomj-sci
 
大阪大学(阪大)は3月21日、白血球「M2マクロファージ」の内、体内のさまざまな抹消組織に存在しているものを「組織常在型M2様マクロファージ(tissue-resident M2-like macrophage)」と命名し、その細胞分化を司る遺伝子として「Tribble1(Trib1)」を発見、さらに同遺伝子を欠損したマウスでは、脂肪組織が萎縮する疾患である「リポディストロフィー」およびそれに起因して発症するメタボリックシンドロームの病態を呈することを証明したと発表した。

成果は、阪大 免疫学フロンティア研究センターの佐藤荘助教と審良静男教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、現地時間3月20日付けで英国科学雑誌「Nature」オンライン版に掲載された。
 
マクロファージはヒトなどの体内において自然免疫において中心的な役割を果たす存在で、細菌やウイルス感染の際に活性化し、それらを排除するという役割を持つ存在だ。また近年の研究により、寄生虫感染、アレルギー応答、脂肪代謝、創傷治癒およびがんの転移・浸潤などにも寄与している可能性も明らかとなってきている。病気ごとにそれぞれ異なったマクロファージが担当を受け持っているものと考えられており、病原体の感染の際に活性化する細胞集団を「M1マクロファージ」、寄生虫感染などの病気の際に活性化する細胞集団を「M2マクロファージ」という。
 
しかし、これまでの研究ではマクロファージが実際にどのように生体内で働いているのか、そしてどのようにそれらの細胞は生まれてきているのかについて、実はほとんどわかっていなかった。そこで研究グループは今回、M2マクロファージが生まれてくるメカニズムや、生体内での役割に焦点を当てて研究を進めることにしたのである。
 
研究グループはこれまでにもM2マクロファージに関する研究成果として2010年に、エピジェネティックな遺伝子発現制御因子「Jmjd3」が、アレルギー応答や寄生虫感染の際に活性化するM2マクロファージの分化を司っているということを報告している。加えて、最近の研究結果から、ほ乳類の体内にはさまざまな種類のM2マクロファージが存在していることがわかってきている。
 
今回の研究では、それを受けて、まずは生体内に存在しているすべてのM2マクロファージが、Jmjd3によって制御を受けているかどうかの解析からスタートした。Jmjd3遺伝子を欠損させたマウスを用いて、M2型のマクロファージの1つとして報告されている組織常在型マクロファージについて解析がなされたのである(画像1)。
 
その結果、Jmjd3が欠損している状況下においても脾臓や肝臓、脂肪組織などの組織常在型マクロファージは正常に存在することが判明。さらに、その遺伝子発現も野生型と比較して同等であることが確認された。このことから研究グループは、組織常在型マクロファージはJmjd3非依存的な分化の経路を辿っている可能性を推測するに至ったというわけだ。
 
続いて研究グループは、マクロファージを用いたさまざまなDNAマイクロアレイのデータを網羅的に解析。その結果、浮かび上がってきたのが、「Trib2」および「Trib3」と共にTribbleファミリーを形成するTrib1遺伝子である。これらの遺伝子はさまざまな生物種を超えて広く保存されており、Trib1とTrib2は白血病との関連も示唆されているという特徴を持つ。しかし、Trib1と免疫系細胞の分化との関係性については、これまでのところ不明だったのである。
 
そこで、研究グループは作成したTribbleファミリーの遺伝子を欠損したマウスたち(Trib1-/-、Trib2-/-およびTrib3-/-マウス)を用いて、これらの遺伝子の生体における機能解析を実施した。その結果、Trib1-/-マウスにおいてのみ、組織常在型マクロファージが著明に減弱していることが明らかとなったのである(画像2)。このほか、このTrib1-/-マウスでは免疫細胞の1種「好酸球」が減少しており、同じく免疫細胞の「好中球」はわずかに増加していることも確認された。
 
次に、研究グループがこれらのマクロファージの遺伝子発現を調べたところ、M2マクロファージが発現している「Arg1」や「Fizz1」などの遺伝子を、「強く」発現していることを確認。しかし、Jmjd3によって分化するタイプのM2マクロファージとは異なるものであったため、研究グループは、これらのマクロファージを組織常在型M2様マクロファージと命名したというわけだ。
 
免疫系に関与している細胞の分化は、そのほとんどの場合が骨髄で始まり、それらが血流に乗って抹消の組織に移行していくことから、続いては骨髄が調べられた。すると、抹消のさまざまな組織で確認された結果と同じように、Trib1-/-の骨髄でもマクロファージの割合は著明に減弱していたのである。
 
さらに研究グループは、野生型およびTrib1-/-骨髄細胞を回収し、放射線照射した別のマウスへの骨髄移植を実施。この場合でも同様の結果が得られたことから、Trib1は骨髄細胞側で作用することにより、マクロファージなどの細胞の分化に影響を与えていることが明らかとなった次第だ。
 
(以下、明日に続く)

   

ヒトの免疫システムは、「第一次防衛システム」と表現される「マクロファージ」と「第二次防衛システム」の「ヘルパー細胞」の二つに大別されます。
細菌やウィルスなどの外敵が体内に侵入した際には、まず第一次の防衛システムといえるマクロファージが、それらの外敵を退治し、同時にその情報をヘルパーT細胞に渡します。
数が多い外敵にはマクロファージは対応できないため、ヘルパーT細胞はBリンパ球に銘じて抗体を作らせ、その抗体が第二次防衛システムとして外敵を退治することになります。
このように免疫システムは二段構えになっているのですが、これまでアレルギーを引き起こしているのは第二次防衛システムの方だと考えられていたのが、第一次防衛システムも関与していることが記事には書かれています。

続きは明日にしたいと思います。

   
おまけ★★★★博士のつぶやき

外敵を退治する働きとして、マクロファージと抗体を「単体」で比較すると、その「強さ」はマクロファージの方が強いとされておる。
ただ、マクロファージでは増殖を繰り返す細菌やウィルスに全て対応することが数的な問題を含めて難しく、そこで抗体の出番が必要になるわけじゃ。
ただ、抗体は外敵を認知してからヘルパーT細胞がBリンパ球に指示して作られるまでに、若干のタイムラグが出てきてしまうため、抗体がつくられるまでが問題となる。
よく、重い病気にかかった場合「今日がヤマになるでしょう」というのは、この抗体が十分作られてしまえば、病原菌を退治することはたやすいのだが、抗体が十分作られる前に、病原菌やウィルスの増殖が勝ってしまえば、間に合わない、ということなのじゃ。
ヒトの免疫システムは、複雑じゃが、優秀なシステムでも、あると言えるじゃろうの。