アレルギー抑える新たな仕組みの詳細について

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 
2/23(土)にブログに書いた、アレルギーの症状を発症させる白血球が炎症反応を治癒させている、という新たな発見があった、という一報を紹介いたしましたが、この記事の詳細な内容がブログにアップされていました。
 
●アレルギーを抑える新たな仕組みを発見
~アレルギーの「火付け役」を「火消し役」に変換~
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20130222/
 

<ポイント>
○アレルギー性の炎症を誘導する仕組みに比べ抑える仕組みは十分な解析が進んでいない。
○「アレルギーを悪化させる細胞(火付け役)」を「アレルギーを抑える細胞(火消し役)」に変身させるユニークな仕組みがあることを発見。
○アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する新たな治療法の開発に期待。

 
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 免疫アレルギー学分野の烏山 一 教授らの研究グループは、皮膚アレルギーにおいてアレルギーの「火付け役」を「火消し役」に変身させることで炎症を抑制して、アレルギーを終焉に向かわせる新たな仕組みを発見しました。

これまで、アレルギー性炎症を誘導・悪化させる仕組みに関して多くの研究が行われてきましたが、アレルギー性炎症を抑制・終了させる仕組みについては十分解析が進んでいませんでした。

本研究グループは、皮膚の慢性アレルギーで、白血球の一種である好塩基球注1)が「炎症を悪化させる細胞(炎症性単球注2))」を「炎症を抑える細胞(2型マクロファージ注3))」に変換することでアレルギー性炎症を抑制することを、モデルマウスを用いた実験から明らかにしました。この変換がうまくいかないと、炎症の抑制がかからず、皮膚のアレルギー性炎症が重症化・長期化しました。

本研究で発見されたアレルギーの「火付け役」を「火消し役」に変身させる仕組みを応用することで、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患に対する新たな治療法の開発が進むものと期待されます。

本研究は、金沢大学 がん進展制御研究所の向田 直史 教授の協力を得て行われ、本研究成果は、2013年2月21日12時(米国東部時間)に国際科学誌「Immunity」のオンライン速報版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

 
(中略)
 
 
<研究の背景と経緯>
 
近年、先進諸国においてアレルギー患者数が年々増加し、日本でも人口の3割近くを悩ます国民的な病気としてアレルギーが大きな社会問題となっています。しかし、アトピー性皮膚炎やぜんそくに代表される重篤なアレルギー疾患に関しては、発症・悪化のメカニズムなどを含め、根本的治療に向けた病態解明はまだ十分に進んでいません。

本研究グループはこれまでに、アトピー性皮膚炎の病態解明と新たな治療標的の探索を目的として、アトピー性皮膚炎に類似した慢性皮膚アレルギー炎症のモデルマウスを開発し、抗体の一種であるIgEと白血球の一種である好塩基球がアレルギーの発症に深く関わっていることを明らかにしてきました。この慢性皮膚アレルギーモデルでは、好塩基球のほかにさまざまな種類の白血球が皮膚の炎症部位に集まっていますが、それぞれがアレルギー性炎症においてどのような役割を果たしているのかが、よく分かっていませんでした。

 
<研究の内容>
 
本研究グループは、慢性皮膚アレルギー炎症のモデルマウスで炎症部位に集まっている白血球を調べたところ、そのうち半数近くがマクロファージであることを見いだしました。これらは血中を循環している炎症性単球に由来し、血中から皮膚に浸み出した単球が、マクロファージへと分化することが分かりました(図1)。このマクロファージの特徴を詳しく調べたところ、マクロファージの中でも2型マクロファージと呼ばれるものであることが明らかとなりました。炎症性単球は、その名が示す通り炎症を引き起こす細胞とされ、これまで炎症の誘導・悪化に関与すると考えられてきました。2型マクロファージもアレルギー炎症の誘導・悪化に寄与すると報告されていましたので、当初はこれらの細胞がアレルギー炎症の誘導に深く関わっていると予想しました。ところが、この炎症性単球が皮膚内に浸み出せないように遺伝子を操作したCCR2欠損マウス注4)では、予想に反して、炎症が軽快するのではなく、かえって悪化・長期化してしまいました。そこで、正常マウス由来の炎症性単球をこのCCR2欠損マウスに注射すると、炎症性単球が皮膚アレルギー炎症部位に浸み出して2型マクロファージへと成熟する結果、ひどかった炎症を抑えることを発見しました(図2)。さらなる解析から、好塩基球が産生するサイトカインの1つであるインターロイキン4(IL-4)が、皮膚に浸み出してきた炎症性単球に作用して、2型マクロファージへと変化させることも明らかとなりました(図1)。

以上のように、本研究では、炎症性単球が血中から皮膚に浸み出した後に、好塩基球の産生するIL-4の影響を受けて2型マクロファージへと変化することで炎症を抑制させる能力を獲得して、アレルギー性炎症を抑え、アレルギーを終焉に向かわせるという新事実を世界に先駆けて発見しました。これまで、2型マクロファージの生い立ちに関しては、常在性単球からの生成経路と組織常在マクロファージからの生成経路の2つが知られていましたが、本研究で炎症性単球からの生成経路が存在することが判明するとともに、炎症性単球由来の2型マクロファージがアレルギーを抑制することが明らかとなりました(図3)。

 
<今後の展開>
 
本研究で、「アレルギー性炎症を悪化させる細胞(炎症性単球)」を「アレルギー性炎症を抑える細胞(2型マクロファージ)」に変換できることが明らかとなりました。この変換のメカニズムと2型マクロファージによる炎症抑制に関わる分子群を探索することで、アレルギーに対する新たな治療標的が見つかり、新しいタイプの治療法の開発が進むものと期待されます。

 
記事の全文、図表はリンク先でご覧ください。  
記事の最後の方に出てくるIL-4(インターロイキン4)は、サイトカインですが、IL-4が、アトピー性皮膚炎の症状を悪化の方向に向かわせていることは他の研究でも発表されています。
しかし、今回は同じIL-4が、炎症を抑制させる能力に関わっている、ということが書かれており、ヒトの体が行っている各働きは、体の機能の大きな流れの中で、複雑の両面を持って絡み合っている、ということが考えれます。

今後の展開に書かれているように、まだこの研究が何らかの実用化を生むには、いろいろな研究が積み重ねていかなければいけないのでしょうが、ぜひ期待したいと思います。

  
おまけ★★★★博士のつぶやき

記事中に「2型マクロファージもアレルギー炎症の誘導・悪化に寄与すると報告されていましたので、当初はこれらの細胞がアレルギー炎症の誘導に深く関わっていると予想しました」とあるように、今回の研究は違う角度から当初は行っておったのじゃろう。
じゃが、2型マクロファージがない状態でも炎症が悪化した、ということから、逆の働き(悪化させているのではなく、回復に向かわせている)が考えられるようになった、というのは面白いところでもある。
今、我々が受けている「医療」そして「医学」は、まだ解決がされておらん分野も多く、そういった中に、治療の糸口は潜んでおるのかもしれんの。