日本人の受診回数は世界一?

西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 
社会保障における医療費の増加は、今後の老齢化日本の現状を考えても、かなり深刻な問題と言えるが、日本人は、病院の受診回数が世界で一番多いそうだ。

 
●日本人の受診回数は世界一?
http://apital.asahi.com/article/sakai/2013011100005.html
 
海外ではインフルエンザ程度では病院に受診せずに寝て治す、という話を聞きます。海外といってもさまざまな国があるでしょうが、日本がもっとも医療機関に受診しやすい国の一つであるのは確かなところでしょう。

近年では2009年の「新型インフルエンザ」(もはや新型と呼ぶのは不正確ですが)への対応として、日本感染症学会はガイドラインで「ハイリスク患者のみならず、すべての新型インフルエンザ患者に対して、ノイラミニダーゼ阻害薬の治療が必要である」と述べています。ノイラミニダーゼ阻害薬とは、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザウイルス薬のことです。私の知る限りにおいて、このような対応を取った国は他にありません。

WHO(世界保健機構)やCDC(アメリカ疾病管理予防センター)は、2009年の新型インフルエンザに対し、高齢者や基礎疾患があるハイリスクの患者に対しては早期の抗ウイルス薬の使用を推奨していましたが、もともと健康である人に対しては推奨していません。日本と海外で対応が異なる理由はいろいろありますが、おそらくは日本のような対応を取れる国は世界でも限られていたでしょう。すべての新型インフルエンザ患者に対して抗ウイルス薬を投与したくても、多くの国では難しかっただろうと思います。

低リスクの新型インフルエンザ患者にも抗ウイルス薬を処方することが本当に必要だったかどうかは検討の余地はありますが、それが可能であるところは、日本の医療機関のアクセスの良さを示していると言えます。これは新型インフルエンザへの対応に限りません。

経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、人口1人あたりの外来受診件数は13.2件(2009年)で日本が第一位です。OECD加盟国で第一位ということはおそらく世界一位でしょう。OECDの平均は6.5件ですから、日本人はOECDの平均の2倍以上も医療機関に受診していることになります。国によって統計の取り方が異なりますし、年齢分布も異なりますので単純な比較はできませんが、それでも日本では病院に受診するような病気でも海外では寝て治すというのはある程度は正しいでしょう。

外来受診件数が多いことには、マイナスの面もあれば、プラスの面もあります。マイナスの面は不必要な受診行動が医療資源を消費してしまうことです。寝ていれば治る病気で病院に受診し薬を処方してもらうのは無駄です。日本の医師数や医療費は国際的にみて多くはありません。重い病気で苦しんでいる人に重点的に資源を配分したほうが望ましいです。

もちろん、寝ていれば治るかどうかは患者さん自身では判断しがたいので医師に診察してもらうのでしょう。もしかしたら早期に治療が必要な病気かもしれません。医療機関に受診しやすければ病気を早期に発見でき早期に治療ができます。これがプラスの面です。その他にも外来に定期的に通院していただき、高血圧や糖尿病をきちんとコントロールすることで脳血管障害や心疾患を減らすことができます。

この辺りは程度問題です。あまりに受診を控えるのも考えものですが、適切な受診行動を心がけていただければ助かります。

  
医療の分野で考えると、治療が効果的に「疾患」を治癒させる方向に向かわせる場合と、疾患ではなく症状を抑える「対症療法」がある。
このブログでも何度も述べているが、「病気の治療」と「症状の治療」は、重なる部分はあるにしろ、根本的な意味合いは異なることが多い。
アトピー性皮膚炎に対する現在の病院の治療は、無論、「症状の治療」がメインである。

もちろん、症状の治療も大きな意味合いはあるが、問題は、「症状の治療」が「病気の治療」につながっていないときに、どうなるのか?、ということだ。
これは、アトピー性皮膚炎に限らず、多くの「対症療法」に共通していることだが、いずれの場合も「病気の治療」を行うことができなければ(自然治癒を含めて)、当然のことだが「症状の治療」は継続しなければならない。
さらに、「症状の治療」反復継続すれば、それが薬剤による治療である場合には、影響の度合いや期間の差はあれど、何らかの負荷が生体にかかってくることになる。

もし、反復継続した「症状の治療」が、病気の治療の足枷になるようなことがあれば、さらに治療の範囲と期間は大きくなってくるだろう。

今回の記事で考えなければならないのは、なぜ日本人の診療回数が最も多いのか、ということだ。
記事にあるように初期段階での診療の部分も確かにあるだろうが、診療回数が多い理由の一つは「病気の治療ができていない」ということ、そしてそのことに患者自身が気づいていない、という部分もウェイトが大きいように感じる。

日本においては残念ながら、医療は「経済」の一つに分類されている要素がある。
処方されたが使われなかった薬剤の量は、間接的に、薬局、製薬会社の売り上げを税金で支えていたことになる。
昨年問題になった生活保護に占める医療費の問題も、そこに患者側、病院側の両方に「利権」が生じていたケースもある。
老人医療も同様の部分は多い。

もちろん、本当に必要な医療も多いわけだし、その医療の中で救われた患者が多いことも事実だ。
だが、こうしたある意味「余剰」な医療も決して少なくないのが現実だ。

医療を受けることで、より医療が必要になる、見方を変えれば「マッチ、ポンプ」のような状況は、少なくとも患者側もそして保険制度を税金で支えている「国民」も望んではいないだろう。
記事中にある「寝てれば治る」という「治療法」は、ヒト以外の動物が行う「メインの治療法」といっても良いだろう。
もちろん「寝てれば悪化する」こともあるわけだが、全ての疾患の中で「寝てれば治る」病気の割合は決して少なくないことも知っておくべきだろう。

  
おまけ★★★★博士のつぶやき

医師に「延命治療を望むか?」と質問すると、圧倒的に「望まない」というたぐいの回答が占めることになるそうじゃ。
医師、つまり専門家が望まないであろう治療は、「治療の正当性」の意味合いから考えると、正当性の意味合いは決して高くはないと言えるじゃろう。
なぜ、そこで医師と患者側の意見が食い違うのかといえば、医師側は専門家だからこそ、「医療が行えること」を熟知しておるからじゃ。
患者側は「医療」に対して万能に近いイメージを持つことがあるが、医療は絶対的な意味合いよりも相対的な意味合いの方が強い。
患者側も今少し「医療ができること」を、「知識」として習得しておくべきなのかもしれんの。