腸管免疫と腸内細菌のバランス

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 
アトピー性皮膚炎に対して腸管免疫へのアプローチによる対処(乳酸菌など)は、良く行われており、腸管免疫とアレルギーについてはさまざまな研究がおこなわれています。
少し前になりますが、Webで報告されていた研究について紹介したいと思います。

 
●腸管での免疫機構と腸内細菌のバランス、疾患との関係を探求
http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/275

ヒトの腸は食べ物や外界からの病原菌などの異物に常にさらされている。しかし、腸管免疫はこのような宿主にとって排除するべきものと許容するべきものを選択しながら、500~1000種類、約100兆個といわれる腸内細菌ともバランスを保っている。この腸管免疫のシステムの調子が悪くなると、炎症性腸疾患や自己免疫疾患、食物アレルギーなどが起こることが知られている。ただ、その詳細には未解明な部分が多い。

独立行政法人 理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 粘膜免疫研究チームのシドニア・ファガラサン チームリーダーらのグループは、腸内細菌と免疫や病気の関係の探求に取り組み、近年、主にリンパ球の一種であるT細胞の腸管におけるふるまいについて、新しい知見を次々と報告している。

T細胞は、骨髄で前駆細胞が作られ、その大部分は胸腺で、①ウイルスなどを殺すキラーT細胞、②抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞などを活性化するヘルパーT細胞に分化して成熟細胞となる。

抗原からの刺激を受けたB細胞は、末梢のリンパ組織内に“胚中心”を形成し、体細胞突然変異を誘導して、刺激となっている抗原に新しく結合できるB 細胞へと変化する。また、その際にB細胞が産生する抗体の型(クラス)がIgMから、IgG、IgE、IgAなどに変わる(クラススイッチ)も起こる。この過程においてヘルパーT細胞の補助が非常に重要な役割を果たしており、T細胞の補助が十分に得られない不完全なB細胞は胚中心内で死ぬように選択される。

腸管では “パイエル板”という絨毛を持たない平板な組織に胚中心は誘導され、ここで腸管に大量に分泌されるIgA抗体が産生される仕組みになっている。

ファガラサン チームリーダーやチームメンバーの河本新平研究員らは、このほどヘルパーT細胞に発現している免疫抑制因子PD-1が腸管粘膜で働くIgA抗体の質の維持に関わり、腸内細菌のバランス調節に大きな役割を果たしていることを明らかにした。

これまでにPD-1ノックアウトマウスは自己免疫疾患を発症すること、また、PD-1ノックアウトマウスから腸内細菌を除くと自己免疫疾患を起こさないこと、さらに、胚中心でB細胞がIgA抗体を産生する際に働く酵素AID(activation-induced cytidine deaminase)を欠損したPD-1ノックアウトマウスでは、自己免疫疾患が起きないことが知られており、「PD-1ノックアウトマウスで産生されるIgAが腸内細菌や自己免疫疾患に何らかの影響を及ぼしているのではないかと考え、PD-1とIgA抗体を軸に、腸内細菌と免疫系、自己免疫疾患の関係を調べることにした」(ファガラサン チームリーダー)。

同チームでは、まず、PD-1ノックアウトマウスと野生型マウスの腸内細菌の構成を比較。すると、PD-1ノックアウトマウスでは善玉菌として働くビフィズス菌が検出限界近くまで減少し、大腸菌などの悪玉菌が野生型マウスの400倍となっていた。この理由を探るため、IgA抗体とIgA抗体を産生するB細胞を調べたところ、PD-1ノックアウトマウスでは、IgA抗体の産生量やB細胞の数は野生型マウスと変わらないにも関わらず、IgA抗体の腸内細菌への結合力が落ちていることがわかった。そこで、パイエル板を詳細に検討すると、PD-1ノックアウトマウスでは胚中心が大きくなり、ヘルパーT細胞が3倍に増加していた。

「PD-1はヘルパーT細胞のブレーキの役割をしており、PD-1ノックアウトマウスではヘルパーT細胞が多くなったために過剰にB細胞を補助してしまい、淘汰されるべき不完全なB細胞が残って、結合力の落ちたIgA抗体が増え、腸内細菌のバランスが悪くなったと考えられる」とファガラサン チームリーダーは話す(図参照)。

また、全身の免疫も影響を受け、炎症を起こすサイトカインを産生するヘルパーT細胞が4倍に増加、腸管以外の胚中心とT細胞やB細胞の数が増え、本来は血中には存在しないはずの腸内細菌に対するIgG抗体が血中から検出された。これは、本来腸管内に留められるべき腸内細菌が血中に漏れ出ていることを意味しており、「腸管でできるIgA抗体の質が悪いと腸管粘膜のバリアが落ち、全身の免疫に影響する。この仕組みが自己免疫疾患を発症・増悪する因子になると推測している」。実際にヒトのIgA抗体の欠損症では自己免疫疾患を起こしやすいことが最近わかってきており、その原因解明にもつながっていく成果といえるだろう。

(以下、省略)

 
腸管においては、全身の免疫活動の約7割が行われているとされており、ここでの状態が良いか悪いかが、免疫そのものの機能の異常状況に関わると言われています。
実際、腸内環境を整える方法により、アレルギー疾患が緩和した例などもあります。
問題があるとすれば、そういったアレルギー疾患に関わる全てに対して、腸管免疫の改善が有効に働く、といった表現を行うことが多いことでしょう。
なぜなら、腸管免疫に「誰しもが問題を持っている」ということはありません。
きちんとした食生活を送っている人であれば、腸管免疫に異常をきたしていない人も当然ながらおられるからです。
腸管免疫に異常がないアトピー性皮膚炎の人に、腸管免疫の改善を行ったとしても、その優位性が少なくなることは仕方ないでしょう。
また、腸管免疫に異常が見られても、それが悩んでいるアレルギーに直結しているかどうか、という問題も関わってきます。

とはいえ、記事中に「腸管でできるIgA抗体の質が悪いと腸管粘膜のバリアが落ち、全身の免疫に影響する。この仕組みが自己免疫疾患を発症・増悪する因子になると推測している」とあるように、腸内環境が明らかに異常が見られた場合、それが症状を増悪させる因子になったり、また病気の発症に関わることは十分に考えられます。

腸内環境は、毎日の食生活を中心とした「生活習慣」が最も大きく関わることを考えると、食事の内容、バランスには注意をしておきたいところですね。

 
おまけ★★★★東のつぶやき

記事中に出ていますが、IgAとアレルギーは関わりを持っています。
以前、あとぴナビでも取材していますので、興味のある方はご覧ください。

●IgA免疫複合体がアトピー・アレルギーを予防する
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=70