腸管内の免疫の研究

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 
今日は、理化学研究所の発表で腸管内の免疫に関するものがありましたので、紹介したいと思います。

 
●理研など、腸管内の免疫に重要な「M細胞」の分化に必須の転写因子を解明
http://news.mynavi.jp/news/2012/06/19/005/

理化学研究所(理研)は6月18日、腸管粘膜に分布し、腸管内の抗原を取り込んで免疫応答を発動する「M細胞」の分化に、転写因子「Spi-B」が必須であることが見出されたと発表した。

成果は、理研 免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫系構築研究チームの大野博司チームリーダー(横浜市立大学客員教授を兼務)、金谷高史研究員(横浜市立大学客員研究員を兼務)と、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの改正恒康教授、米国エモリー大学医学部のイフォー・ウイリアムズ(Ifor R. Williams)准教授らの国際共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間6月18日付けで英科学誌「Nature Immunology」オンライン版に掲載された。

体内と外界の境界は皮膚と粘膜で分けられている。体表面を形成する皮膚は、重層する表皮細胞と角質層で構成されており、比較的堅牢な防壁という具合だ。
一方、体の内側にある粘膜の多くは単層の細胞だけで覆われている。特に腸管粘膜は、栄養や水分の吸収効率を高めるため、約400平方mにも及ぶ広い表面積を持ち、食物や食物と共に侵入する外来微生物、さらには100兆個もの腸内細菌といった異物(抗原)に常にさらされている状況だ。

したがって腸管粘膜は、多くの感染症における病原性微生物の初期侵入経路でもあり、感染から個体を守る最前線というわけだ。腸管には体内の全免疫細胞の60~70%が存在し、体内最大の免疫組織である腸管免疫組織が構築されている。

パイエル板に代表される腸管免疫組織は、腸管内腔から腸管粘膜を介して直接抗原の供給を受け、免疫応答を発動させる仕組みだ。腸管粘膜は「腸管上皮細胞」で構成されており、その中で腸管免疫組織を覆う部分には、腸管内の抗原を盛んに取り込むM細胞(画像1)が分布している。

取り込まれた抗原は直下にある樹状細胞などの免疫細胞に受け渡され、免疫応答が発動される形だ。しかし、M細胞自身の分化のメカニズムに関しては、ほとんど明らかになっていなかった。

研究グループは、M細胞の分化を誘導する因子として知られる分泌タンパク質「RANKL」を用いて、M細胞が分化する過程を追跡。

野生型マウスにRANKLを3~4日間連続で投与すると、腸管粘膜の内、本来M細胞が存在しない部分にM細胞が出現してくるのが確認されたのである。RANKL投与後のマウスの腸管粘膜を採取し、遺伝子を網羅的に解析した結果、M細胞の出現に伴い、Spi-B遺伝子が発現してくることが判明した。

そこで、パイエル板を覆う腸管粘膜に着目してSpi-B遺伝子の発現が調べられたところ、M細胞だけに発現していることを突き止めたのである。また、ヒトの内視鏡で得られたサンプルを用いて解析すると、ヒトM細胞でもSpi-B遺伝子の発現が確認された。

次に、Spi-B遺伝子を欠損したマウス(Spi-B欠損マウス)でM細胞の形成を観察したところ、M細胞の存在を示す目印(マーカー分子)は観察できず(画像2・3)、M細胞と判断できる細胞が完全に消失していることが判明。さらに、Spi-B欠損マウスにネズミチフス菌及びエルシニア属菌を経口感染させたところ、パイエル板への取り込みが10~20%に減少していた(画像4・5)。

Spi-B欠損マウスにおけるM細胞の消失。画像2(左)は野生型マウスで、画像3はSpi-B欠損マウスのもの。マウスのパイエル板(白点線内)を覆う上皮層の染色画像。Spi-B欠損マウスでは、M細胞(緑色)が完全に消失していた

Spi-B欠損マウスにおける抗原取り込みの減少。画像4(左)はネズミチフス菌。画像5はエルシニア・エンテロコリチカ。野生型マウスとSpi-B欠損マウスに、抗原としてネズミチフス菌とエルシニア・エンテロコリチカ菌を経口感染させ、パイエル板への取り込み量が測定された。Spi-B欠損マウスでは野生型マウスと比較して取り込み量が10~20%に減少していた

続いて、このパイエル板への抗原取り込みの減少が、実際に免疫応答の障害につながるかどうかの評価が行われた。まず、野生型マウスとSpi-B欠損マウスに、ネズミチフス菌を認識して活性化するTリンパ球を移入。次に、ネズミチフス菌を経口感染させてパイエル板でのTリンパ球の活性化を観察した。その結果、野生型マウスではTリンパ球の活性化を確認したが、Spi-B欠損マウスでは活性化が4分の1程度に低下していた(画像6)。

今回、Spi-B欠損マウスではM細胞が完全に消失することが判明。Spi-B欠損マウスをM細胞欠損モデル動物として活用できるようになるため、今後は腸管免疫系におけるM細胞の機能解明に貢献することが期待できるという。現在、M細胞を標的とした経口ワクチンの開発が進められているが、その有効性を評価する強力なツールにもなるとした。

また、M細胞はネズミチフス菌などの病原体の感染口であることが報告されているため、Spi-B欠損マウスは、これらの病原体の感染機構を解明する上でも有用だと、研究グループはコメントしている。

 
記事中に出てくる画像については、ブログでは紹介できないため、リンク先でご覧いただければと思います。
腸管免疫は体内で行われる免疫活動の70%程度を占めると言われており、そのため、アトピー性皮膚炎の免疫機能を原因とする痒みについては、関係性が考えられており、それが腸内環境の乳酸菌などの研究につながっているわけです。

今後、免疫応答の仕組みが解明されていく中で、病原体に対する免疫の働きが分かれば、その免疫に影響を受けているアレルギーの免疫の働きもいろいろ解明されていくのではないでしょうか?

今後の研究に期待したいと思います。

  
おまけ★★★★大田のつぶやき

免疫機能が直接的に関与しないアトピー性皮膚炎の原因もありますから(皮膚機能の異常など)、これらの研究がアトピー性皮膚炎の全体像を示すまでは難しいと思いますが、少なくとも、免疫機能が関わるアトピー性皮膚炎に対しては研究が進むように思いますし、進んで欲しいと思います。
先日も、佐賀大学の研究発表がありましたが、少しずつ解明されていくと良いですね。