ステロイド剤のリスクとは?

昨日は、西君が瓦礫処理と放射性物質の問題について取り上げておった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
その中であったように、情報を発信する側の「リスク」の度合いと、情報を受けとる側の「リスク」の度合いが違っておることは多々ある。

アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤の問題も、同様の状況が見て取れる。

そこで今日は、ステロイド剤のリスクについて、少し考えてみたい。

まず、情報を発信するが、つまり治療を施す医師側が、患者に説明するステロイド剤のリスクはどのようなものかというと、

1.医師の指示通り使用すればリスクは生じない(ほとんど生じない)
2.リバウンドなどひどいステロイド剤の副作用は、外用剤では生じることはなく(ほとんどなく)、内服の場合に生じるものである

といったように、外用剤でリスクが生じることは稀であることを強調し、医師の指示通り「使ってもらえるような」説明を行っておることが多い。

それに対して、ステロイド剤のリスクを「受けたことがある」患者側が考えるリスクはどうかというと、

1.感染症が悪化した
2.痒みや炎症が増加した
3.黄色い体液が流出し、皮膚が黒ずんだ
4.皮膚が厚くなり、ひび割れた状態になった
5.睡眠が取れず、生活に支障が生じた
6.うつ状態になった

など、ほぼリバウンド状態の際に見られる症状が多い。

もっとも、こういった「ステロイド剤のリスクを受けた患者」というのも、医師側にとってみれば「ステロイド剤の使用中断によるアトピー性皮膚炎の悪化」であって、「ステロイド剤のリスクではない」と説明することが多い。
特に、「自分が処方した患者」に対しては、そういう傾向は強まるようじゃ。

確かに、ステロイド剤の副作用と患者が感じる症状の中には、アトピー性皮膚炎が悪化したため生じたものもあるはずじゃ。
じゃが、長期連用を続けてきた患者の場合は特に、その悪化した状態のほとんどはステロイド剤の影響によるもので、、ステロイド剤の影響が「関与していない」というケースは少ないと言えよう。

ここで問題として考えた方が良いのは、最初の医師の説明を受けた段階で、医師は「100%副作用が出ない、とは言っていない」と考えていても、その説明を受けた患者の方は「医師の指示通り使用すれば100%副作用は現れない」と感じ取っておる、ということじゃ。
もちろん、医師は、ステロイド剤を「使わせたい」わけじゃから、患者がその使用をためらう「情報」「説明」を患者側に強くは伝えない、あるいは使用をためられわないような「情報」「説明」を患者側に強く伝える、ということがあっても仕方がないかもしれん。

じゃが、実際、医師がいう「万が一」の状況に陥るのは、「医師」ではなく、「患者」なのじゃ。
少なくとも、一つの治療に相応のリスクが生じる可能性がある場合、そのリスクについて正しく患者側に伝えることは、大切なことであり必要なはずじゃ。
残念ながら、アトピー性皮膚炎の治療におけるステロイド剤に対する「情報」は、患者側が不利益になる情報=医師側も不利益になる情報、として、患者側に正しく伝え切れていないのが現状じゃし、また、その結果、ステロイド剤の副作用に悩む患者は後を絶たないことにもなっておる。

そして、ややこしいことに、ここでもう一つ考えておかねばならんのは、ステロイド剤のリスクが生じる患者は、大多数の患者、ではない、ということじゃ。
正式な統計は、治療を施す医師側が望まないため、行われておらんが、過去の相談者の状況からみる限り、おそらく、ステロイド剤のリスクを受ける患者は、アトピー性皮膚炎治療を受けている患者全体の5~10%程度と思われる。
ただし、これは、短期に回復したケースも含んでのもので、一年以上、ステロイド剤治療を継続した場合、5年以上継続した場合、10年以上継続した場合には、それぞれ対象の患者割合は大きく上がることになる。

推定じゃが、単発使用(1週間以内)であればほぼ0%、短期使用(1カ月以内)であれば0.1%程度(1000人に1人ぐらい)、1年以内で0.5%程度(500人に1人ぐらい)、5年以内で10%程度(10人に1人ぐらい)、10年以上になるとその数は大きく上がり50%(2人に1人ぐらい)を越えることになるじゃろう。

実際、アトピー性皮膚炎の患者数は数百万人じゃが、重度のアトピー性皮膚炎の患者数は数十万人と推測されておるように、重度以外の患者の中には、「薬を使いながら」短期使用の間に、自然治癒している患者も多いはずじゃ。
その大多数の患者を前提に、医師は、ステロイド剤の副作用を「稀」と考えておるのじゃろう。

じゃが、アトピー性皮膚炎患者全体の1割程度とみられる重症患者の数は、決して少ない数字とはいえないことも忘れてはならんじゃろう。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

もう一つ付け加えておくなら、今のアトピー性皮膚炎治療の主体が「ステロイド剤」を中心とする薬剤治療となっておるせいもあるのじゃが、重度のアトピー性皮膚炎患者の大多数がステロイド剤治療の経験者であり、長くなればなるほど、ステロイド剤治療に限界を感じておることが、以前、行ったアンケート結果でも出ておる。
こういった「リスク」は常に患者が負うべきものである以上、その「防衛」も患者側で意識することは大切なのかもしれんの。