NKT細胞とアレルギーの研究

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 
ブログで、時々、アトピー性皮膚炎やアレルギーに関わる最新研究を紹介していますが、今回は、理研の研究結果について紹介したいと思います。

 
●理研ら、「IL-17RB陽性NKT細胞」が小児ぜん息のカギを握っていることを確認
http://news.mynavi.jp/news/2012/02/09/016/
 
理化学研究所(理研)と科学技術振興機構は2月8日、「気道過敏性」発症に中心的な役割をする「IL-17RB陽性NKT細胞」が、胸腺で独立に分化することを突き止め、小児ぜんそく発症のカギを握る細胞であることを明らかにしたと共同で発表した。研究は理研免疫・アレルギー科学総合研究センター免疫制御研究グループの谷口克グループディレクターと渡会浩志上級研究員(独立行政法人科学技術振興機構(JST)・さきがけ研究者兼任)らの研究グループによるもので、成果は米科学雑誌「PLoS Biology」オンライン版に日本時間2月8日に掲載された。

アレルギー疾患は日本人の約30%がかかっており、国民的な病気の1つとなっている。中でもアレルギー性ぜんそくの患者数は世界で3億人、日本で約300万人と報告され、死亡者数は世界で年間25万人超、日本でも3000人超にもおよび、年々増加の一途をたどっている状況だ(世界保健機関の疾病および関連保健問題の国際統計分類)。特に小児ぜんそくは、小学校入学前の約6%の子どもが発症し、その数は1980年代に比べて6倍に増加しており、治療法の確立が強く求められている次第である。

アレルギーは、外来性の物質(抗原)に対して免疫系が過剰に反応して起こる炎症性反応だ。多くのぜんそく患者では、気管支が収縮して呼吸困難となる発作である気道過敏性が見られる。

その発症の仕組みは、気道から侵入した抗原に対して免疫系細胞である「ヘルパーT(Th)細胞」がIL(インターロイキン)-4、IL-5、IL-13といった「サイトカイン」(細胞どうしの情報伝達に関わるさまざまな生理活性を持つタンパク質の総称)を産生し、気道の炎症を引き起こすというものだ。なおインターロイキンとは、白血球によって分泌され細胞間コミュニケーションの機能を果たす細胞伝達物質のこと。

そして、抗原刺激の度にこの反応が繰り返され、気道組織の損傷とそれを修復しようという反応がたび重なる結果、炎症が慢性化して組織の構造が変化し、さらに気道過敏性が悪化して少量の抗原にも発作が起こるようになってしまうのである。

2008年に研究チームは、ヘルパーT細胞の分化の誘導・活性化や気道壁の肥厚に関与すると考えられ、このような病態形成に至る引き金を引く細胞の1つがNKT細胞の内でもIL-17RBを細胞表面に有する特定の細胞集団のIL-17RB陽性NKT細胞であることを突き止めた(画像1)。
 

(中略)

 

これまでに研究チームは、IL-17RB陽性NKT細胞がTh2サイトカインを大量に産生することを確認済みだ。今回、IL-17RB陽性NKT細胞の機能を確かめるため、IL-17RBをコードする「Il17rb遺伝子」を欠損させたIl17rbノックアウトマウスが作製され、サイトカイン産生能力の調査も行われた。

その結果、Th2サイトカインだけでなく、Th9サイトカイン(IL-9、IL-10)やTh17サイトカイン(IL-17A、IL-22)の生産能力が低下したため、IL-17RB陽性NKT細胞はTh2サイトカインだけでなく、Th9サイトカインやTh17サイトカインも産生する能力を有していることが確かめられたのである。

前述したように、IL-17RB陽性NKT細胞は、CD4の有無によって陽性と陰性に分かれ、IL-17RB陽性CD4陰性NKT細胞はTh17サイトカインを、IL-17RB陽性CD4陽性NKT細胞はTh2、Th9、Th17サイトカインを産生することが判明。これらのサイトカインは、直接アレルギー反応を誘導するサイトカイン群として知られる一方、ほかの免疫細胞や「多形核白血球」に作用して炎症を誘導することが知られている。従って、IL-17RB陽性NKT細胞の活性化が引き金となり、免疫反応の経路のあらゆるところで炎症誘導が引き起こされることが示されているというわけだ。

IL-17RB陽性NKT細胞は、マウスでは肺などの限られた場所に集積し、幼少期に多く存在する。そして小児ぜんそく患者は、冬季に流行するRSウイルスに感染すると、重篤な細気管支炎や肺炎を引き起こしてしまう。そこで、RSウイルスに感染したモデルマウスを解析したところ、NKT細胞ノックアウトマウスやIl17rbノックアウトマウスでは、アレルギー気道炎症が誘導されなかった(画像3)。

しかし、NKT細胞ノックアウトマウスにIL-17RB陽性NKT細胞を移入すると、RSウイルスによって誘発されるアレルギー気道炎症が細胞数の増加とともに悪化することが判明。従って、IL-17RB陽性NKT細胞がRSウイルスによる炎症誘導の中心を担っていると考えられるという結論に至ったのである。

今回の研究により、IL-17RB陽性NKT細胞が胸腺で、独自の経路をたどって分化すること、そしてこの細胞がさまざまな炎症の誘導に関わるサイトカインの産生に関与していることがわかった。今回の研究ではマウスが用いられたが、今後は、乳児や小児におけるIL-17RB陽性NKT細胞の役割を詳細に解析することが重要となると、研究グループでは考えている。この細胞の機能を抗体治療などで人為的に抑制することで、気道過敏性の悪化を抑えることができ、社会的要請の高い小児ぜんそくの効果的な治療法の開発につながるものと期待できるとしている。

  

記事全文はかなり長いので、途中を省略いたしました。
図表を含めてご覧になりたい方は、サイトにてご確認ください。

今回の記事は、喘息についてですが、基本的に、アトピー性皮膚炎のいくつかある原因のうち、免疫機能に関わる部分については、アレルギーの炎症機序で考えると、かなり類似したものがあります。
もちろん、気管支に対する炎症と皮膚に対する炎症は違いますが、インターロイキンがヘルパーT細胞に関与している図式は、似たものがあると思われます。
果たして、IL-17RB陽性NKT細胞を抑制することで、どの程度の炎症を抑えられるのか、またどのような部分にリスクを生じるのかは、これからの研究を待つしかありませんが、何らかの福音がもたらせることを期待したいところです。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

アレルギーに関わる免疫の解明は、ここ数年でかなり進んでおるじゃろう。
研究機関もいくつかあるようじゃが、できるだけ垣根を越えた研究が進むことを望みたいの。