粉ミルクのセシウムの報道から見えてくるもの

西だ。


先日、明治の粉ミルクからセシウムが検出されたことはニュースでご覧になった方も多いだろう。
●食品の明治、粉ミルクからセシウム、40万缶無償交換へ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111207-00000303-alterna-soci

食品大手の明治は6日、乳児向け粉ミルク「明治ステップ」の850グラム入り缶の一部から、最大1キログラム当たり30.8ベクレルの放射性セシウムを検出したと、発表した。
同日から無償交換を行う。生産時期の同じ粉ミルクは約40万缶という。粉ミルクの暫定規制値は同200ベクレルだが、厚生労働省は回収を命じない。
同省によれば福島の原発事故以来、粉ミルクから放射性セシウムが検出されたのは初めて。明治によれば、検出されたのは同社の埼玉工場(春日部市)で3月14日から20日にかけて、原料乾燥の工程を経た製品。
消費者からの指摘で同社は検査を行ったという。原料の脱脂粉乳は、原発事故前に加工したものだが、空気で乾燥させる製造過程で混ざったものと見られる。検出された「明治ステップ」は、賞味期限が12年10月4日、10月21日、10月22日、10月24日の4製造日分で、他の粉ミルク製品と取り替える。
明治ステップは200ミリリットルの湯に粉ミルク30グラムを混ぜて生後1年未満の乳児に飲ませるもので、同社は毎日飲んでも健康への影響の可能性は少ないとしている。同社は乳児用ミルクの全製品種の検査を今後行う。同社は原発事故以降、製品の放射性物質の検査をしていたが、検出例はなかった。
問い合わせは「明治 お客様相談センター」電話0120・077・369まで。(オルタナ編集部=石井孝明)

今回の件で、検出された値の安全性などの問題はさておき、気になるのは、初期の報道、もしくは明治の発表で「この問題がどうやって発覚したのか?」という点が明らかにされなかったことだ。
実は、これは明治が自主検査して発覚したのではなく、赤ちゃんの口にするものが大丈夫か心配になった秋田の主婦がNPOに検査を依頼したのがきっかけになったようだ。
●粉ミルク「基準値以下でも不安」
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20111206-873388.html

多くの赤ちゃんが飲む粉ミルクから放射性セシウムが検出された。「基準値以下でも与えるわけにはいかない」とお母さんたち。各メーカーは検査態勢の見直しを迫られた。
1歳8カ月になる長女がいる秋田県の主婦(34)は11月下旬、近所で売っていた「明治ステップ」の検査を福島県の市民団体「TEAM二本松」に依頼。セシウムが検出されるきっかけの1つとなった。
この主婦は「子どもには1ベクレルも与えたくない。知らなければ買って飲ませていたかもしれない。ほかの商品は大丈夫なのか」と不安を口にする。
主婦連合会(東京)の佐野真理子事務局長は「直ちに影響がないと国が言っても、何十年も先になって影響が出るかもしれないという不安がある。各メーカーはきちんと検査をして、数値を公表すべきだ」と検査態勢の強化を求めた。
野口邦和・日本大専任講師(放射線防護学)は「粉ミルクは、お湯で薄めればセシウムの濃度は下がる。明治の製品は国の基準値(1キログラム当たり200ベクレル)以下で、健康には影響がない。それでも気になる人は別の商品を選べば良い。消費者の選択の問題だろう」と冷静な対応を呼び掛ける。
明治は今後、抽出検査数を増やし、結果をホームページで公開するとしている。明治以外の粉ミルク各社は、これまでの自主検査で放射性セシウムは未検出だが、検査態勢を見直す社もある。(共同)

最初の日に報道を見た人は、企業が自主検査で発覚したため公表した、と捉えた人が多いようだ。
だが、実際には、消費者からの指摘で、改めて検査することで気づいて、慌てて公表した、という状況なのだろう。
さらに、今回、明治がこの問題を公表したのは12月6日だが、明治の検査結果のホームページを見ると、一番早いものでは、12月3日の段階で検出されていたことが分かる。

●「明治ステップ(850g缶)」のお取り替えに関するお詫びとお知らせ
http://www.meiji.co.jp/notice/2011/detail/20111206_fig2.html

少し極端だが、12月4日に初めて、自分の赤ちゃんにこの粉ミルクを与えた親は、なぜ判明した段階ですぐに公表しなかったのかについて、憤りを感じても不思議ではない。
企業(明治)を責めるつもりはないが、一部の情報によると、明治では外国向けの輸出品については、管理された外国産の原乳を使用し、国内向けの流通品についてのみ国内産の原乳を使用していたようだ(なお、今回のセシウムの混入については春日部市での乾燥作業が原因とされている)
上記のNPOのホームページを見ると、牛乳でもセシウムは検出されている結果が報告されている。

●測定結果報告1 【牛乳について】
http://team-nihonmatsu.r-cms.biz/blog_detail/id=13#comment_form

諸外国は、放射能基準が「厳しい」から国内産の原乳を使用したのでは販売ができない、ということなのかもしれないが、では国内の「放射性物質を気にする消費者への対応は?」ということが、特に今回のような状況が発生した際には問題になるだろう。
もちろん、今回検出された値は、さらに薄めて飲料する粉ミルクであることを考えると、健康への影響は「軽微」かもしれない。
だが、低レベルの放射性物質の影響は「皆無」ではなく「軽微」であることを忘れてはいけないだろう。
今の報道は、暫定基準値内であれば健康に影響がない、と聞き手側が「安全」だと受け取ってしまう報道になっているが、放射性物質の影響は一定確率で現れる以上、「ゼロ」ではないのだ。
もちろん情報を伝える側は「ゼロ」とは言っていない、ということだろうが、聞いている側は「ゼロ」と受け止めているケースが多い。
これは現在の放射性物質の報道全てにいえることだが、「安全性」を拡大解釈して伝えることは、他から情報を得られる現在の社会では、かえってその情報の信頼性そのものに疑問を抱かせることを、そろそろ気づいて欲しいところだ。
特に、諸外国からみた日本の現状に関する報道はYouTubeなどで翻訳つきのものを見ることができるが、その内容と、日本で発信されている情報の内容との齟齬(どちらが正しいかは定かではないが)があることを、日本で情報を発信する側は気づいて欲しいと思う。
おまけ★★★★西のつぶやき

問題が以前から指摘されていながら対応せず、実際に明らかになってから対応を行うことは、今のステロイド剤なども同様の状況が言える。
マイナスの影響(放射性物質でいえば健康被害、ステロイド剤でいえば副作用)は、一定の範囲でとどまっている段階では、影響を受けていない人たちを最大公約数と考え、「因果関係が明らかでない」とする考え方は、少なくともマイナスの影響を「受けてしまった人たち」にとっては納得できるものではないだろう。
リスクを回避できる方法がない状況ならいざしらず、少なくとも選択肢によって最大限リスクを回避できる場合、リスクの存在そのものを認めないことについては、使用する側は望んではいないことを知って欲しいと思う。