【Q&A】アトピーは薬で治るの?(3)

今日は、「ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を治しているのではない」ということの補足として、アトピー性皮膚炎の場合の「病気」と「症状」について考えたい。

 

 

 

 

 

 

 

昨日、書いたように、「病気」とは体に生じた異常状態、そして「症状」とは病気から体を回復させるために体が引き起こした自然治癒力の一部ということじゃ。
もちろん、「症状」は体が作り出しているものじゃが、その働きが過剰じゃったり、誤ったりすることもある。
「アレルギー」などの自己免疫反応がそうじゃな。

では、アトピー性皮膚炎の場合、どのような病気でどのような症状をもたらすのじゃろうか?

一般の人に「アトピーとはどういう病気?」と聞くと、ほとんどの人が「皮膚が痒い病気」と答える。
じゃが、「痒み」とは、炎症から引き起こされた症状に過ぎず(炎症も「症状」じゃが・・・)、病気ではない。

同様に一般の人に「風邪とはどういう病気?」と聞くと「風邪の細菌やウィルスに感染した病気」と正しく答えられる人が多い。
「骨折とは?」と聞くと、ほとんどの人は「骨が折れた状態(病気)」と答える。
「痛い病気」と、誤って「症状」のことを指し示す人の方が少ないぐらいじゃ。
このように、アトピー性皮膚炎に対しては、多くの人が病気と症状を混同しており、症状を治す治療=病気を治す治療、この両者が等しいと考えておるのじゃ。

病気を治す治療は、当然ながら症状を治す治療になる。
じゃが、症状を治す治療は、必ずしも病気を治す治療とはなりえない。

ここに、ステロイド剤とアトピー性皮膚炎の、ある意味、複雑な関係があるとも言えるじゃろう。

では、アトピー性皮膚炎とは、どういった「病気」なのじゃろうか?
結論から言うと、単体の「病気」ではない。

まず、免疫系の異常状態からIgEを作り出しやすく、そのIgEが皮膚で炎症をもたらす疾患、ということが言える。
昔から言われておる「アレルギー疾患」としての側面じゃな。

もう一つは、皮膚の角質層が乾燥しやすく、痒みを知覚する神経線維の角質層内に侵入しやすかったり、角質層の水分不足によりバリア機能が低下するなどにより、皮膚が外部からの刺激を痒みとして感知しやすい皮膚状態にある疾患、ということが言える。
いわゆる、皮膚の機能の異常状態が関わっておると言える。

実際のアトピー患者を見ると、このどちらからが関わっておる、というより両者が関わっておる場合が多い。
このように、アトピー性皮膚炎とは、最低でも二つの「病気」の集合体といえよう。
おそらく、これ以外にも、原因はあるじゃろう(皮膚に症状を現わす、という共通部分を持つ、事実上、アトピー性皮膚炎と診断される疾患として)
そういった点を考えると、ある意味、アトピー性皮膚炎とは、単一の病気ではなく、「症候群」とも言えるじゃろう。

アトピー性皮膚炎とは「痒い病気」ではなく、「免疫系か肌の機能に異常がある病気」であることが分かったじゃろうか?

では、話を本題に戻すが、現在、アトピー性皮膚炎の治療として用いられているステロイド剤やプロトピック軟膏は、免疫抑制作用により、皮膚下における炎症を抑え、炎症を抑えることで痒みを生みださない、ということを期待して用いられる薬剤じゃ。

もう分かったと思うが、ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎の痒みという「症状」を抑えることができる薬剤じゃが、アトピー性皮膚炎という本来の病気である「免疫系を治す」あるいは「肌の機能の異常状態を治す」薬剤ではない、ということじゃ。

風邪の例でいえば、解熱剤で熱は下げられても風邪は治せないのと同じじゃ。
骨折の例でいれば、痛み止めで痛みは止められても、骨折した状態を痛みどめが治せるわけではないのと同じじゃ。

ということで、説明がずいぶん長くなってしまったが、Oさんの質問の一つ目に対する答えじゃ。

1.ステロイド剤やプロトピック軟膏で、皮膚を普通の状態に保ったまま、症状を一生抑え続けることが可能なのか?

答えは、NO、ということじゃな。
ステロイド剤やプロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎という病気を治すことはできん。
また、連用し続けることで、受容体の減少から効果がなくなってくる恐れがある。
実際、Oさんも症状が悪化したから入院したのじゃろう?
症状の変化は常に行われているにしろ、薬剤が効果的に働き続けることを維持させられるなら、少なくとも入院するまで悪化させることはない。
もちろん、感染症などを併発したなども考えられるが、いずれにせよ症状を抑えられなかっという「事実」がそこには存在したわけじゃ。

もし、正しく表現するならば、

ステロイド剤やプロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎という病気そのものを治すことはできないが、アトピー性皮膚炎により生じる痒みなどの症状を、「一時的に」抑えることが可能である

ということじゃ。
ポイントは、あくまで「一時的に」ということであって、「恒久的に」ということではない、ということじゃ。

では、アトピー性皮膚炎とは治らない疾患なのか?もう一つの質問は、明日じゃ。

 
おまけ★★★★大田のつぶやき

ステロイド剤などを長期連用した場合、いつの場合でも、皮膚を普通に保つことは、使用した期間に比例しながら難しくなるといえます。
どうしても、長期間、繰り返しステロイド剤を使用している状況=痒みが続いてる状況、とも言えるため、掻くことにより色素沈着が生じたり、皮膚の防御反応の一つとして皮膚が固く厚くなることがあります。
もちろん、こういった皮膚の状況も、一定期間、皮膚を掻かないことでダメージが軽減されてきますから悲観することはありませんが、症状だけ抑える治療のリスクは、皮膚そのものに現れてくることがあることも忘れないようにしましょう。