「抑える」治療と、「治す」治療

東です。

 

 

 

 

 

 

 
今日は、先日発表があったアレルギーに対する理化学研究所の発表を紹介したいと思います。

 
●喘息・花粉症の原因物質産生は、合成酵素の2つのアルギニン残基が鍵
-気管支喘息や花粉症の発症機序の理解に加え、新薬剤の開発に寄与-
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110302/

風邪を引くと鼻水や鼻づまりに悩まされ、シーズンが到来すれば花粉症で頭痛・涙目・クシャミなどに苦しめられます。これらの症状は、生体防御を担う免疫反応が原因です。気管支喘息やアトピー性皮膚炎も、この生体防御反応が関わっていますが、この反応が過剰になると、アナフィラキシーショックで知られるように、命を脅かす危険さえあります。

免疫反応は、免疫系細胞である肥満細胞が体内に入り込んだ異物を認識すると、システイニルロイコトリエン(Cys-LT)などさまざまな情報伝達物質を放出することで開始します。細胞から放出されたCys-LT は、粘液の分泌促進、毛細血管の透過性亢進など異物排除に欠かせない防御作用を誘導します。このCys-LTの代謝に関わるタンパク質の構造や機能を明らかにすると、気管支喘息や花粉症を含む複雑な生体防御反応を原子レベルで理解し、制御することが可能になります。

放射光科学総合研究センター宮野構造生物物理研究室らは、Cys-LT 産生の鍵となる膜タンパク質の「ロイコトリエンC4合成酵素」(LTC4S)の立体構造を、ヒト由来の膜タンパク質のX線構造解析で最高水準となる1.9Åという高い分解能で解析しました。その結果をもとに、タンパク質工学を使った生化学実験を行ったところ、 LTC4Sの活性部位に存在する2つのアルギニン残基が協調して働くことで酵素機能を発揮することを突き止めました。Cys-LTの特異的な受容体への結合を抑制する薬が、気管支喘息や花粉症に有効とされており、今回の成果は、これらの慢性アレルギー疾患の発症機序の理解に加え、副作用の少ない抗炎症・抗アレルギー創薬につながる可能性が期待できます。

 
アレルゲンとの接触による肥満細胞から放出される情報伝達物質の制御を行うことで、その後の免疫反応を抑えようとする考え方は、抗ヒスタミン剤の機序に類似していると言えるでしょう。
抗ヒスタミン剤の場合、ヒスタミン自体が化学伝達物質として体が必要としている物質のため、長期連用すると、徐々に効きづらくなってくる傾向があります。
今回の場合も、このシスティニルロイコトリエンという情報伝達物質が、本来、恒常性機能を維持させるために必要な物質の場合は、長期的効果の維持への問題があったり、そもそも、この方法では「反応したあと」に対する対処、つまり病気に対する治療ではなく、「症状」に対する治療のため、根本的治療とはなりえません。
とはいえ、花粉症など時期が限定された症状の場合は、できる限り、副作用が少ない薬剤で対処することは有効な治療の一つと言えますので、今回の方法がどれくらいデメリットが少ない方法なのかに期待したいところです。

あとは、使用する患者が「正しくその薬剤の使用する意味合いを理解する」ということを念頭においた説明を望みたいと思います。
病気が治る、症状が抑えられる、患者側の体感では同一の意味合いを感じるのかもしれませんが、「治療」という観点からすると、全く別の意味合いとなることを治療する側、治療を受ける側の両者がしっかり理解して欲しいところです。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

アトピー性皮膚炎の場合、症状は類似していても、原因は個々人で異なる場合が多い。
つまり、単体の「疾患」というより「症候群」という位置づけが近いじゃろう。
今回の研究のように、病気の「結果」といえる「症状」を対処するのは、研究しやすいのじゃろうが(複数の原因から導かれる同一の「結果」に対応しているため)、できれば、その元となる原因そのものを解決する研究も望みたいところじゃの。