副作用のない新薬??

西だ。

 

 

 

 

 

 
先日、相談員がある会員の方から、少々信じがたい話を聞いた。

Yさんは、長年アトピー性皮膚炎で悩んでいたが、今回、某大学病院にて診療を受けたところ、途中でその大学病院の皮膚科の教授が現れ、「今、アトピー性皮膚炎の新薬が出たので、これを試してみて欲しい。副作用は全くないから」という説明を受けたそうだ。

その新薬とは、「ネ●ーラル」だ。
ネオー●ルとは、確かに、アトピー性皮膚炎の新薬として発売された内服薬だが、これは、免疫抑制剤(シクロスポリン)で、以前から臓器移植などの免疫抑制を目的として使われてきた成分だ。

そして、何が信じられないかと言うと、「副作用が全くない」と患者に説明したことだ。
いや、もしかすると、「適切な使用を行えば」など、何らかの条件付きでその教授は話したのかもしれないが、少なくともYさんは、「全く副作用がない安全な薬」と理解していた。

そもそも免疫抑制剤は、強力な免疫抑制効果を有する反面、副作用も強い。
薬の添付書が、Webに公開されているが、
  
http://www.novartis.co.jp/product/neo/pi/pi_neo.pdf
 

まず、最初に「警告」として下記の文章が記されている。

 
2.アトピー性皮膚炎における本剤の投与は、アトピー性皮膚炎の治療に精通している医師のもとで、患者又はその家族に有効性及び危険性を予め十分説明し、理解したことを確認した上で投与を開始すること。

 
そして、副作用の項目には、

 
アトピー性皮膚炎205例中、何らかの副作用が報告されたのは123例(60.0%)で、主なものは毛包炎21例(10.2%)、血中トリグリセリド増加18例(8.8%)、血中ビリルビン増加18例(8.8%)、鼻咽頭炎11例(5.4%)等であった。
(承認時までの集計)

 
とある。
副作用の報告された割合が6割もあるのに、なぜ、その教授が「副作用が”全く”ない」と強調したのかが理解できない。
さらに、警告として「患者又はその家族に有効性及び危険性を予め十分説明し」とあるのにも関わらずだ。
これが、臨床が中心で行っている開業医であるなら、あまたにある薬剤の副作用情報を十分把握していないこともあるかもしれない(とはいえ、患者からすれば許されることではないが)。
しかし、基礎も研究も行っている大学病院において、薬剤の副作用情報を把握していないこと自体、さらに、新薬として認識した上で患者に「使用を求める」説明を教授自らが行ったわけである。

ネオーラ●の薬剤を使用する際には、プロトピック軟膏と同じく、定期的な血液検査で副作用が出ていないかを確認するよう、求められている。
それぐらい、副作用に神経質にならなければならないはずなのに、患者側が「副作用が全くない」と理解するような説明を行っていることは、全くもって信じがたいといえよう。

●オーラルの副作用は、いくつもあるが、アトピー性皮膚炎の症状に対して深刻なのは、感染症に関わる部分だろう。

 
 
5)感染症:細菌、真菌あるいはウイルスによる重篤な感染症(肺炎、敗血症、尿路感染症、単純疱疹、帯状疱疹等)を併発することがある。強力な免疫抑制下では急激に重症化することがあるので、このような場合には減量又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。 ( 1 %~ 5 %未満)

 
アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる重要な要因の一つは、感染症だ。
ステロイド剤もプロトピック軟膏も、なぜその使用が問題になるのかというと、皮膚の感染症を悪化させ、アトピー性皮膚炎の症状そのものの悪化要因となる要素があるからだが、このネオー●ルも全く同様だ。いや、内服である分、その吸収力は外用薬の比ではなく、より慎重な対応が求められるべきだ。

もちろん、さまざまな理由により、他のもっと副作用が緩やかな手段で対応できないと医師が判断し、この薬剤しか有効性が認められないから、ということで処方することはあり得るだろうし、それを否定するものではない。
しかし、「副作用が全くない」薬剤ではないのに、それを安全だからと処方しているのでは、患者自身が副作用の「兆候」に注意を払わなくなり、副作用が現れても服用をもし続けていたら・・・と考えると、ぞっとする。

Yさんには、相談を受けた相談員が、免疫抑制剤の働きと、その働きがアトピー性皮膚炎の「症状」に対してどのように有効性があるのか、また、副作用として考えられるのはどのようなものなのか、薬剤を使用する上でどのような注意点が必要なのかを説明した。
Yさんとしても、当初、説明を受けていたような「無害」な薬ではないことを理解し、その使用については、主治医と再度相談するなどして判断したい、ということだったが、少なくともYさんは、薬の「危険性」を聞いた段階ではその使用に疑問をいただいたわけである。
本来、この危険性を説明するのは、処方する医療機関の役目であるはずなのに、それを怠ったいることは、全く信じられないことだ。
医師の治療を受ける上で、その治療に疑問を常に抱いて治療を受けているのでは、治療の効果にも影響が現れることがある。
したがって、治療を受けるならば、しっかりその医師を信頼して治療を受けて欲しいのだが、そもそも信頼関係を医師側が構築しないと思われても仕方がないような状況そのものが問題と言えよう。

いつも言っていることだが、「医療」とはその恩恵は全て「患者」側が得るべきものであることを、医師も患者も再度認識が必要ではないだろうか?

 
おまけ★★★★西のつぶやき

今回のことは、Yさんから聞いていない部分で、何らかの誤解が生じていたのかもしれないし、あるいは単に説明が不足していただけ、ということがあるかもしれない。
しかし、少々うがった見方をすれば、製薬会社は病院側から副作用情報などを得て、今後の研究に生かしたい、という思いがあるため、大学病院に対して臨床を依頼していた、そのため病院側は「使用してもらう」ことを大前提に説明していた、ということもあり得る。
もちろん、臨床試験は薬剤を研究する上で必要なことだが、そうならば、なおさらリスクの説明は不可欠だ。
悲しいことだが、患者側も自分が受ける治療について、自己防衛の意味で調べることは必要かもしれない。