薬害の再発を防ぐには?

月一、ブログを担当している西だ。

 

 

 

 

 

 

 

 
少し前の記事だが、薬害について中学生に学んでもらおうと、厚生労働省が教材を作成することになった、という記事が出ていた。

 
●中3向けに薬害学ぶ教材 厚労省が来年度配布へ
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/214321

厚生労働省は7日の検討会で、サリドマイドや薬害エイズなどの薬害について学ぶ中学3年生用の冊子の内容をまとめた。社会科の授業での使用を想定し来年度から中3全員に配る方針。

国が薬害に絞った教材を作るのは初めて。国や製薬会社の対応の遅れなど薬害が起きた理由や、再発を防ぐためには何が必要かを考えてもらいたいとしている。

冊子は8ページ。薬害の歴史や、スモンやサリドマイド、薬害エイズ、薬害C型肝炎などの被害者の声を盛り込み、関連するウェブサイトのアドレスも掲載する。

薬害C型肝炎をきっかけに厚労省が設置した有識者検討会が4月、学校で薬害を学ぶ機会をつくるよう提言。厚労省は別の検討会をつくり議論してきた。

 
現在、薬害とされるものの多くは、記事中にあるように、国や製薬会社の対応の遅れが原因とされている。
その理由を、どのように述べるのかが分からないが、その原因として潜んでいる企業の利益の優先というのは、本来は避けては通れないだろう。
どこまで、そのことに触れることができるのかは興味があるが、同時に、その再発を防ぐために何が必要か、という部分も、どこまで踏み込んでいるのかが気になるところだ。

アトピー性皮膚炎も、現在、皮膚科医が治療として使用しているステロイド剤、プロトピック軟膏は、そのリスクが表面化している。
特にプロトピック軟膏については、諸外国において、論文でその発がん性が発表されたり、使用について大きな制限を科していたり(アメリカのFDA(日本の厚生労働省にあたる機関)は、乳児への使用を制限するなど)している状況だ。
しかし、日本においては、そういったネガティブな情報が公になることは少なく、昨年の3月に国内における発がん事例の報道があった際にも、日本皮膚科学会では、「静観する」という声明を出している。

 
●タクロリムス報道に関連する最近の新聞報道について
http://www.dermatol.or.jp/news/news_100423.pdf

先般、我が国でタクロリムス軟膏に関連する新聞報道が行われました。
この報道は、3 月22 日に開催された米国FDA の小児科諮問委員会(Pediatric AdvisoryCommittee)での討議事項に関するもので、情報源は共同通信・ワシントン支局2010.3.21のようです。カルシニューリン抑制外用剤(プロトピックやエリデル)を使用した0-16歳の47 人の患者に皮膚癌やリンパ腫、白血病を発症したというものです。

http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/PediatricAdvisoryCommittee/ucm201876.htm
http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/PediatricAdvisoryCommittee/ucm204710.htm

日本皮膚科学会では日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療問題検討委員会を直ちに立ち上げ、海外(米国、イギリス、ドイツ)の報道状況の確認、小児科諮問委員会での検討事項の内容確認を行いました。
現時点では、FDA からの議事録の発表などはなく、海外では全くといっていいほど報道されておりません。また皮膚癌,リンパ腫の発症者の内訳は、プロトピック15 名,エリデル27 名,両者が4 名です。今回報告の半数以上が日本で販売されていないエリデルに関連するものです。さらに、この報告は米国に限らず世界中から集積されており数百万人が母集団となっていると推測されますが,母集団についての記載がないので、自然発生率を超える発生率なのかどうかも不明です。症例の詳細なる発症経過も不明です
ので、現時点では「適正使用を守る」以外に対応はございません。各国皮膚科学会も静観している状態です。
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、2 歳未満の患者には使用しないこと、使用量(体重およそ10kg あたり1 回1g 未満、1 日2 回)の明示もすでに行っております。他国に比べれば、プロトピック軟膏の不適正使用は少ないと考えられます。そこで、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療問題検討委員会では、今まで通り本ガイドライン(
http://www.dermatol.or.jp/index.html のガイドラインのところを参照)を遵守して使用することを確認し、また患者さんへの対応は2003 年12 月12 日に日本皮膚科学会よりWeb 公開している「タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)使用中およびこれから使用される患者さんへ」(日本皮膚科学会ホームページの「市民のみなさまへ」のところを参照)をこれまで通りご利用いただくことにし、FDA からの何らかの新規の動きがあるまで静観することといたしました。

平成22 年4 月13 日
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療問題検討委員会

 
ちなみに、プロトピック軟膏の発がんに関する報道は、今回が初めてではない。
さらに、海外の科学雑誌には、いくつもの発がんに関する論文発表がされている。
上記の発表にあるように「現時点では「適正使用を守る」以外に対応はございません」ということは、患者のことを本当に考えていると言えるのだろうか?
リスクが表面化している以上、そのリスクが「本当にあるのかどうか」を、臨床上でしっかり検証することが、「患者のため」ではないだろうか?
もちろん、検証することは、それが事実と判明した場合、悪影響をもたらすところは多いだろう。
では、その悪影響をもたらされるのはどこかと言えば、製薬会社と、安全だと言い続けてきた学会だ。
逆に、利益を得ることができるのは、以降の発がんのリスクが避けられた「患者」だ。

今回のプロトピック軟膏の発がん報道が、すぐに「薬害」につながる、といっているわけではない。
だが、その「可能性」は少なくとも存在しているわけである。

「薬害」の再発を防ぐにはどうすることが大切なのか?

中学生に教材を配布することも大切なことだと思うが、今回のプロトピック軟膏のように、当事者が「薬害」の検証そのものを「放棄」しているような現状の中、未然に薬害を防ぐために第三者の監視機関の設立など、「実効力」のある対策も考え、ぜひ教材にも載せて欲しいところだ。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

薬は、どのような薬であっても「主作用(薬効)」「副作用」という表裏を合わせもつものじゃ。
「副作用」の頻度、そしてその度合いが「主作用」の恩恵を大幅に下回るのであれば、「副作用」も許容されてしかるべきじゃろう。
じゃが、「副作用」の頻度が少なくても、その度合い(今回の場合でいえば発がん)が「主作用」と比較してあまり重大なものである場合、その使用の権限については、使用する患者側にも与えるべきではないじゃろうか?
特に、アトピー性皮膚炎の場合、プロトピック軟膏は「アトピー性皮膚炎を治す」ための方法ではなく、「アトピー性皮膚炎の症状を抑える」ための方法に過ぎないことを考えれば、なおさらだと思うのじゃがの。