【Q&A】副腎機能とステロイドについて(2)

今日は昨日の続きじゃ。

 

 

 

 

 
甘草と副腎機能の関係について述べる前に、おさらいとして、副腎皮質ホルモンについて見ていきたい。

  
●副腎皮質ホルモンとは?

腎臓の上にある小さな臓器である「副腎」からは、昨日、述べたように、主に三つのホルモンが放出されておる。

  

1.糖質代謝ホルモン(糖質コルチコイド)

まず、この糖質代謝ホルモンの構造式を化学的に再現したのが、一般的にアトピー性皮膚炎の人が使っている「ステロイド剤」じゃ。
ホルモンとは、「生理作用」と「薬理作用」の二つの作用を持っておるが、糖質代謝ホルモンには「生理作用」として、文字通り「糖質の代謝」、そして、薬理作用として「抗ストレス作用」と「抗炎症作用」がある。
ヒトが、強いショックを受けた際(精神的なショックや、肉体的なショックいずれも)、そのショックから身を守ってくれておるのは、実は、この糖質代謝ホルモンの抗ストレス作用によるんじゃ。
交通事故などでショック状態に陥った際に、ステロイド剤を注射されることがあるのじゃが、これも、抗ストレス作用を期待してのものじゃ。
副腎皮質ホルモンは、ヒトの生命維持には欠かせないホルモンとされておるのは、この抗ストレス作用にあると言えよう。
そして、同じく薬理作用の働きとしてあるのが、「抗炎症作用」じゃ。
体内の免疫活動を抑制することで、炎症を抑えるという作用じゃ。
この、免疫を抑制する働きを期待して使われておるのが、アトピー性皮膚炎の人が一般的に使用している「ステロイド剤」じゃ。

  
2.塩類代謝ホルモン(鉱質コルチコイド)

塩類代謝ホルモンの生理作用とは、文字通り、体内のナトリウムとカリウムなど、塩類を調整する働きじゃ。
そして、薬理作用は、糖質コルチコイドとほぼ同じような働きを持っておるとされておる。
抗ストレス作用や、抗炎症作用じゃな。
実は、先に述べた糖質代謝ホルモンと、この塩類代謝ホルモンの違いは、主たる働きの方向性の違いに過ぎない。
糖質代謝ホルモンは微弱ながら塩類代謝ホルモンの働きを有しておるし、逆に塩類代謝ホルモンも糖質代謝ホルモンの働きを持っていることが分かっておる。
コレステロールから作られるホルモンを総称して「ステロイドホルモン」と呼ばれておるが、糖質代謝ホルモンはもちろん、塩類代謝ホルモンも、ステロイドホルモンの一つじゃな。

  
3.性ホルモン

最後が性ホルモンじゃ。
上の二つと同じくステロイドホルモンじゃ。
主に、男性ホルモンが主体となるが、今回のMMさんの質問とは直接関係しないため、詳しくは省きたいと思う。

 

ここでMMさんの質問の本題に戻りたいと思う。
昨日述べたように、漢方薬でよく使われる「甘草」は、この副腎皮質ホルモンの中の「塩類コルチコイド」と同じ働きをすることが分かっておる。
副腎機能の器質異常により、塩類コルチコイドが高値を示す病気に「アルドステロン症」というのがあるが、甘草を一定期間以上使用した場合の副作用で気をつけなければならないのが「アルドステロン症」と同じ症状を示す「疑アルドステロン症」じゃ。
そのため、甘草を含む漢方薬の場合、定期的に血液検査を行うように言われておるほどじゃ。
この甘草は、塩類コルチコイドと同じ働き=抗炎症作用を持っておる、ということでもあり、このためアトピー性皮膚炎の症状を抑える働きを持っておるのじゃ。
ただ、この抗炎症作用は、ステロイド剤と同じく「免疫抑制作用」によるものじゃ。
また、先に述べたように、塩類コルチコイドは、糖類コルチコイドの働きをカバーしておる性質も持っておる。
つまり、甘草成分を多く含む漢方薬を使用=体内で糖類コルチコイドの働きをカバー=糖類コルチコイドの体内の分泌を体が必要としていない、ということが考えられる。
この場合、過剰な塩類コルチコイドが、不足した糖類コルチコイドをカバーしているため、コルチゾールが低値になるのはもちろん、コルチゾールそのものを必要としていない(他でカバーしてくれているので)ことで、ACTHも低くなることは考えられることじゃ。

したがって、可能性としては、やはりこの「3.漢方薬の影響」を疑った方が良いかもしれんの。
ちなみに、甘草を多く含む漢方薬としては、「芍薬甘草湯、甘麦大棗湯、小青竜湯、人参湯、五淋散、炙甘草湯、黄連湯」などがある。
また、漢方薬の7割には、この甘草が含まれておる、とも言われており、MMさんの場合、独自処方の漢方ということじゃったが、甘草が含まれておる可能性はかなり高いように思われるから注意が必要じゃろう。
  

最後に「4.検査のタイミングによるもの」じゃが、コルチゾール、ACTHともに、その正常値は「早朝安静時」に計った場合じゃ。
なぜ、早朝なのかというと、コルチゾールは一日の中で産生量の変動が大きく、が最も分泌されるのが午前4時~7時とされておるからじゃ。
当然、コルチゾールが作られるためにはACTHが必要じゃから、同じように早朝が高くなる。
そして、なぜ安静時なのかというと、コルチゾールは抗ストレスホルモンでもあるので、精神的ストレス、肉体的ストレスによって消費されてしまう。
じゃが、通常、血液検査を行うのは、入院でもしていない限り「早朝安静時」に行われることは難しい。
MMさんが、いつ血液を採取されたのかがわからんが、もし夕方に採取されたのであれば、採取日に激しい運動を行ったり、感情の起伏が激しかったりした日であれば、コルチゾールが通常よりも低値になったことは十分に考えられる。
ACTHも低値なのは気になるが、一応、この「検査のタイミング」も可能性としては残されておるじゃろう。

  

ということで、結論じゃが、最も可能性が高いのは「3.漢方薬の影響」で、可能性が残されておるのが「4.検査のタイミングによるもの」、他の二つは、可能性がゼロとは言わんが、かなり考えづらいところじゃ。

いずれにせよ、必要に応じて、他の検査が必要になることもあるじゃろうから、専門医によく、相談いただくことが大切じゃろう。

MMさんが、早期に回復されることを祈っておる。

  
おまけ★★★★博士のつぶやき

今日、取り上げた漢方薬に含まれる「甘草」は、実は、化粧品の成分でも良く使われており、その副作用が、最近、問題になっておる。
明日は、化粧品の成分として使われておる「甘草」の成分、グリチルリチン酸について、先週書いていた「スキンケアの話」の続きとして取り上げたい。