食物アレルギーの研究(1)

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 
先月末に、理化学研究所から、食物アレルギーの治療に関与する経口免疫寛容について、ニュースリリースが出ていましたので、紹介したいと思います。
なお、かなり長文なので、今日と明日の二日に分けて、紹介します。

  

●理化学研究所、食物アレルギーの治療法につながる経口免疫寛容の仕組みを発見
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=262679&lindID=4

 
食物アレルギーの画期的な治療法につながる経口免疫寛容の仕組みを発見
-マウスの経口免疫寛容の分子作用機構を世界で初めて証明-

 

◇ポイント◇
 ●経口免疫寛容を誘導する腸管内の「樹状細胞(白血球)」の役割を解明
 ●経口免疫寛容の成立に必須な共刺激分子2種をマウスで発見
 ●免疫寛容の仕組みを利用して食物アレルギーの新たな治療法を提示

 
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、免疫システムが飲食物を異物として認識し、食物アレルギー(※1)と呼ぶ免疫反応を引き起こすことを防ぐ「経口免疫寛容(※2)」の仕組みを、マウスの実験で初めて明らかにしました。この経口免疫寛容が成立するためには、腸管に存在する樹状細胞(※3)がB7-H1とB7-DCという分子を介して、免疫抑制能を持つ制御性T細胞(※4)を誘導することが必須であることを見いだしました。これは、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)樹状細胞機能研究チームの佐藤克明チームリーダーらによる研究成果です。

免疫寛容は、生体の防御システムにおいて通常の免疫反応を引き起こすことができなくなった状態のことで、生体が自己の成分を異物として認識せず、免疫反応を引き起こさないのは、この免疫寛容によるものです。この自己に対する寛容性が崩れると、自己免疫疾患を発症することが知られている一方で、さまざまな方法によって免疫寛容を成立させて、自己免疫疾患を抑制する治療法の開発が進んでいます。

食物アレルギーは、免疫寛容が崩れることで起こりますが、通常では、腸管で食物中の異種タンパク質に対する免疫反応を抑制する経口免疫寛容が成立しているため、食物アレルギーは起こりません。この経口免疫寛容の成立には、腸間膜リンパ節(※5)で、免疫細胞の1つであるT細胞の食物に対する過剰な反応を抑えることが重要と考えられていますが、その仕組みは不明のままでした。

研究チームは、マウス食物経口投与免疫モデル(※6)を使い、共刺激分子(※7)のB7-H1とB7-DCが経口免疫寛容の成立に必須であることを初めて突き止めました。さらに、腸間膜リンパ節の樹状細胞が、B7-H1とB7-DCを介して制御性T細胞を誘導し、食物を異物と認識するT細胞の活性化を阻害するという仕組みを明らかにしました。この経口免疫寛容の仕組みを応用することで、食物アレルギーの画期的な治療法につながる可能性が期待できます。

本研究成果は、米国の科学雑誌『Blood』オンライン版(9月30日付け:日本時間9月30日)に掲載されます。

 

1.背 景
食物中には、生体にとって異物である異種タンパク質が含まれ、飲食により食物アレルギーを引き起こすことがあります。食物の種類や生体の免疫システムの状況によってアレルギーの症状は異なりますが、一般的には下痢、湿疹、じんま疹、咳、ぜんそくを発症します。重篤な場合はアナフィラキシーショックを発症し、命にかかわることがあります。卵、ピーナッツ、そばなどがよく知られていますが、こうした食物アレルギーの予防は社会的な課題の1つで、食品衛生法の施行規則により、特定原材料の表示が義務化されるまでに至っています。
腸管では、これらの免疫反応を抑制する経口免疫寛容が成立しており、通常、すべての食物に対するアレルギーは起こりません。しかし、食物アレルギーは、経口免疫寛容が適切に働かないことが原因で引き起こされます。経口免疫寛容の仕組みを応用すると、食物アレルギーの画期的な治療法につながると期待されています。

腸間膜リンパ節を切除したマウスでは、経口免疫寛容成立がしないため、腸間膜リンパ節が、経口免疫寛容の成立に重要な腸管粘膜免疫組織であると考えられています。研究チームのこれまでの研究から、共刺激分子として知られるB7-H1とB7-DCが、腸間膜リンパ節にある樹状細胞で、脾臓(ひぞう)などほかの組織にある樹状細胞よりも高く発現していることが分かってきていました。また、経口免疫寛容の成立には、腸間膜リンパ節において、免疫細胞の1つであるT細胞の食物に対する過剰な反応を抑えることが重要であると考えられていました。しかし、共刺激分子を含む詳細な分子メカニズムは明らかとなっていませんでした。

  

今日は、まず背景のところまでを紹介します。

専門用語が多く、難しいかもしれませんので、今日の部分を簡単に要約すると、

1.人間の体は、自己(自分の体の構成物)以外のタンパク質に対しては、異物と判断して、攻撃を仕掛ける「免疫システム」を持っている。

2.だが、食物など、本来、人間に害をなさないものに対してまで攻撃を仕掛けてはよくないので、攻撃を寛容する、という意味合いの「免疫寛容」というシステムを持っている。

3.普通の人は、この免疫寛容システムが正常に働いているため、食物に対して免疫による攻撃を仕掛けることはなく、アレルギー反応は起こらない。

4.だが、アトピー性皮膚炎の人は、一部の食物に対して、この免疫寛容のシステムが働いていないため、腸管から食物が吸収された際、IgEによる攻撃を仕掛けることになり、アレルギー反応が生じることになる。

5.この免疫寛容のシステムの一つは、腸管で行われていることが確認されている(腸間膜リンパ節を切除すると、経口免疫寛容のシステムが働かなくなるため)

6.さらに、経口免疫寛容のシステムが成立するためには、T細胞の食物に対する過剰な反応を抑えることが重要だと考えられていたが、そのメカニズムは明らかになっていなかった

 
ということです。
明日は、この研究がどのような内容だったのかを紹介したいと思います。

  
おまけ★★★★東のつぶやき

経口免疫寛容については、実は、9月号の特集「IgA免疫複合体が、アトピー・アレルギーを予防する」でも出てきています。
そちらも、ご覧ください。
●IgA免疫複合体が、アトピー・アレルギーを予防する
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=70