アトピーと情報伝達物質

東です。

 

 

 

 

 

 

 

 
アトピー性皮膚炎に関わる研究は、日々、さまざまな機関、大学や医療機関などで行われています。
そして、何らかの発見が行われると、ニュースとして報道されますが、一昨日のニュースでも、アトピー性皮膚炎の新たな発見の記事が掲載されていました。

  
●阪大など細胞のセンサー機構解明 がんやアトピーに関与
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010092901000568.html

細胞表面にあるセンサータンパク質が、周りにあるタンパク質の信号を受け取り、細胞内に周囲の情報を伝える仕組みを大阪大(大阪府吹田市)と横浜市立大のチームが明らかにし、29日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
体内での信号のやりとりは神経などの形成のほか、がんや自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎などの病気の進行に関与。信号を遮断すれば免疫の働きを抑え自己免疫疾患の治療につながり、信号を強くすればアトピー性皮膚炎を抑えられるという。
チームは、マウスの信号タンパク質「セマフォリン」と細胞表面のセンサー「プレキシン」の結晶構造を大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)などで解析。
通常は細胞表面でくっついている2個のプレキシンが、近くに来たセマフォリンを間に挟み込み、細胞内に情報を伝えるとみられる。
大阪大蛋白質研究所の高木淳一教授は「信号授受の様子を原子レベルで明らかにできた。信号の働きを調節する薬をコンピューターでデザインできるかもしれない」としている。

  
人間の体が「動く」「活動する」のは、神経や細胞に情報が伝達され、それぞれの役割応じた「仕事」がなされるからです。
神経は、イメージとしては「つながった線」と考えている人も多いようですが、実際には、「細切れの線」であり、線と線の間は、神経伝達物質により情報が伝達されています。
また、細胞に情報を伝達するのも、各種のヒスタミンなどの伝達物質が行っており、それぞれの伝達物質の性質により、細胞のレセプター(受容体)が反応、それぞれの性質に合わせた反応を生じさせることになります。
今回の研究は、そういった「情報のやり取り」に着目した研究と言えるでしょう。

ただし、記事の見出しでは「アトピーに関与」とあり、記事中にも「アトピー性皮膚炎を抑えられる」とありますが、この部分は正しく表現するならば、「アトピー性皮膚炎により生じる炎症反応を抑えられる、炎症反応が抑えられれば、炎症により生じる痒みも結果的に抑えられる」という意味合いであり、今回の伝達物質の関与が、すなわち「アトピー性皮膚炎」という病気そのものに何らか関与できているものでないことは、承知しておくべきでしょう。

また、一つ気になるのは、記事中において、「信号を遮断すれば免疫の働きを抑え自己免疫疾患の治療につながり、信号を強くすればアトピー性皮膚炎を抑えられるという。」部分でしょうか?
本来、信号を遮断し免疫の働きを抑えれば、免疫の反応により生じる炎症そのものが抑えられますので、炎症から生じるアトピー性皮膚炎の「痒み」も、抑えられるはずです。
ただ、今回の記事では、信号を遮断=免疫を抑制、と書いてあるということは、信号を強くする=免疫を亢進させる、ということと考えられ、免疫活動を活発化させる=炎症を強くさせる、ということにつながるようにも思います。

そのあたりの詳細については、タイミングがあえば取材をお願いして、あとぴナビの特集でも紹介できれば、と考えております。

いずれにせよ、新たな発見が、新たな事実の解明につながることを期待したいところですね。

  
おまけ★★★★北のつぶやき

大学など研究機関においては、学術的な研究を行う「基礎」と、実際の患者の診療を通じて行う「臨床」の、二つの研究が行われています。
たいがい、私たちが取材する際は、臨床に関わる医師よりも、基礎に関わる医師に取材する方が多いのですが、そういった取材を通して感じるのは、「基礎」での考えが、必ず「臨床」につながってはおらず、いずれの研究も「基礎」と「臨床」が同時に行われて欲しいと思います。
今回の研究も、「基礎」の研究ですが、早く「臨床」の現場でエビデンスが取れるようになって欲しいですね。