百日咳とアトピー

しばらく前に朝のニュースで、百日咳が大人に増えておる、というのを放送していた。

 

 

 

 

 

 
百日咳とは、昔は子供の病気として考えられており、実際、10年ほど前までは、全患者数に占める成人の割合は3%ほどで、ほとんどが乳児、幼児じゃった。
ところが、最近調査した結果によると、同じく全患者数に占める成人の割合はなんと50%近くまで上昇しておった。
逆に昔は50%ほどを占めておった乳児の割合が10%程度に減少し、あきらかに傾向が変わってきたことを示しておった。

そして、この百日咳が成人に増加してきた原因として上げられておったのが、予防接種により獲得した免疫が失効したものによる、というものじゃった。
実際、調べてみると、予防接種したにも関わらず、約半数は免疫がないことがわかったそうじゃ。

本来、百日咳は三種混合ワクチンなどで、複数回にわたって接種することになっておる。
そしてその効果は、生涯免疫が獲得できると思われておったのじゃが、実はそうではなかったことが分かったわけじゃ。

考えなければならないことは、いくつかある。

まず一つは、三種混合ワクチンの接種は、何も十年前に始まったものではなく、数十年前から行われておる。
なぜ、今頃になって、こういった傾向が見られたのじゃろうか?
確かに、最近は予防接種が義務化ではなくなったため、接種する人口割合が減少してきたことはあるじゃろう。
じゃが、今回の調査のように、予防接種を受けた人の50%が免疫を失っていたところが問題じゃろう。

それに関連して考えなければならないのが、百日咳に罹ったことのある人の、免疫状況じゃ。
それに関しては、触れられておらなかったのじゃが、もし予防接種の場合は免疫を失い、自然罹患の場合は免疫を失っていないとすれば、ここに何らかのヒントがあるはずじゃ。

なぜ、今回の百日咳のことを考えているかと言うと、免疫の獲得と失効という問題があるからじゃ。
免疫を獲得する、ということは、ヘルパーT細胞などの免疫を作りだす司令塔の役割を果たすリンパ球が「記憶」したことを示しておる。
そして、免疫を失効した、ということは、このヘルパーT細胞の「記憶」が失われた、あるいは他の原因ということが考えられる。

アトピー性皮膚炎に関わるIgE抗体も、同じくヘルパーT細胞の指令を受けて作られる。
もちろん、一つのヘルパーT細胞が核になっているのではなく、あくまで自己免疫を生じるヘルパーT細胞の働きによるものではあるのじゃが、アトピー性皮膚炎に対する免疫も本来は「生涯」免疫であっても不思議ではない、
そのため、子どもの頃、アトピーが治っても、大人になって同じアレルゲンで再発した、ということがおきるわけじゃが、では治った状態の時点では、どのようなことが生じておったのじゃろうか?

それが、ヘルパーT細胞を抑える役割を持つ免疫の働きが関わっておるわけじゃ。
5月号のあとぴナビで特集を行った「制御性T細胞」も、類似の働きを行っておる。

いずれにせよ、こういった体内の免疫の仕組みとは、まだまだ解明されていないことも多く、今回のように年月がたってはじめてわかることもある(百日咳の予防接種の効果が生涯ではないこと、など)。

ただ、考える必要があるのは、人間の体は環境により少しずつ変化していく以上、その変化に合わせた模索を行う必要がある、ということじゃな。
例えば、風邪をひいて高熱が出ると、熱が出ている間は、アトピー性皮膚炎の症状が落ち着いていた、というのを経験したことがある人は少なくないじゃろう。
こういった、体の機能が免疫に働きかける仕組みなども、本来は、考えた上で、さまざまな研究を行って欲しいところじゃな。
免疫の仕組みが解明されることで、開ける道は、きっとあるはずじゃ。
今後の研究に期待したい。

 
おまけ★★★★東のつぶやき

今日の博士のブログにあった「制御性T細胞」のことは、今月の特集で掲載しています。
ぜひ、ご覧ください。

●制御性T細胞がかゆみを消す
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=66