結婚式とステロイド剤

大田です。

 

 

 

 

 

 

 

 
アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤の役割とは、本来は、「炎症を抑えることで痒みを緩和させる」という、病気(アトピー性皮膚炎)により生じた症状(痒み)に対するものでしかなく、病気(アトピー性皮膚炎)そのものを治しているわけではないことは、今までのブログでも何度も書いているので、おわかりいただけるかとは思います。
その「一時的な痒みの緩和」という代償で、副作用という重荷を背負う可能性があり、その可能性は使用期間に比例して高まりやすいと言えます。
したがって、「アトピー性皮膚炎を治す」という点では、「あまり役に立たない」、そして「リスクの高い」薬剤なのですが、とはいえ、ステロイド剤そのものが「不必要な薬剤」ということでもありません。

先日、ある会員の方からご相談をいただきました。

 
●Tさんからのご質問
結婚式が近づいてきています。
にも関わらず、顔や首の症状が緩和せず、何とかして綺麗になり式に出たいのですが・・・
せっかくステロイド剤を止めて半年経ちましたが、式の間だけでステロイド剤を使うと、また激しいリバウンドに襲われるのでしょうか・・・・

  

よく似た質問は、たびたびいただきます。
結婚式以外でも、受験であったり、就職の面接であったり、です。

「疾患」を考えるとき、その疾患から生じる「苦痛」が、どれくらい、生活の質(QOL)を下げているのか、ということは無視してよい問題ではありません。
では、QOLを第一に考えてよいのか、というと、そうでもないのです。
なぜなら、QOLを維持させることで使用する薬剤の影響が、将来、現れた場合には、ほとんどの方が、「使わなければよかった」と後悔しているからです。

病気を治すのならば、まだリスクを甘んじることも受け入れられるのでしょうが、症状は治しても病気は治していない薬剤のために、将来、就職できない、結婚できない、外に出れない、というQOLが著しく低下した状態を迎えることは、一時的な症状を抑える代償としては、あまりに重いものであると言えるでしょう。

とはいえ、「だったら、薬剤の使用は絶対に良くないのか?」というと、そうとも限りません。
矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、そこで関係してくるのが、「自分で受け入れて決める」という部分です。

Tさんのご質問の場合、結婚式に関わる数日の間、ステロイド剤で炎症を抑えることは、決して誤りではありません。
人生の大きなイベントの一つである「結婚式」を、「キレイ」な状態で迎えたいという気持ちは当然だからです。

ここで大切なのは、「キレイな状態で迎える」ための代償を、あらかじめ自分の中で受け入れておくことです。

リスクを抱える薬剤を使用する以上、そのリスクが生じることは、想定しておくことが大切です。
ノーリスクを望むならば、それがQOLより大事だと考えているのであれば、リスクを絶対に生まない=使わない、ということでもあることを忘れてはならないでしょう。
もちろん、リスクを低く抑えることは可能です。
でも、低くてもリスクはリスクなのです。

今回の質問は、特異な状況下における使用ですので、「短期間の使用が、その後、リバウンドなどに必ずつながるわけではない。しかし、使う以上、リスクもあることを忘れないようにして欲しい。また、そのリスクが最大限に低くなるよう、毎日の生活習慣は今まで以上に気をつけて欲しい」というのが答えになるでしょう。
そして、この問題は、結婚式のような特異な状況以外でも、常に考えて欲しいところでもあります。
毎日、痒みを薬剤で抑えることに対するリスクの可能性は、最終的に、患者自身が「受け入れるしかない」のが現状です。
「安全に使えますよ」といった医師は、リバウンドや副作用の影響が出ても、何の責任も取ってくれませんし、それが医療行為の範囲を逸脱していない以上、医師に責任を求めることはできません。

全ては、患者自身が背負わなければならない問題なのが、現状なのです。
こういったことを、患者自身は、十分承知しておくようにして欲しいところです。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

薬剤の使用は、TPOを考え、必要最低限にとどめることが大切じゃ。
じゃが、ヒトは「弱い生き物」じゃ。
楽な方、楽な方を選びたくなるのも理解できる。
しかし、「楽な方」を選択した結果も、選択する前に想定しておくことが大切じゃ。
多くの薬剤の場合、そのリスク、つまり副作用の出現する可能性は、かなり低い。
1000人に一人ぐらいの割合の副作用でも「高いリスク」と言われるぐらいじゃ。
じゃが、ステロイド剤やプロトピック軟膏の場合、長期間使用することで、そのリスクは10人に何人、という問題になってくる。
薬剤を使用している人で、短期間の使用で収まらない場合は、リスクの問題から眼をそむけないようにして欲しいと思う。