アトピーの制御分子を発見

東です。

 

 

 

 

 

 

 
今日は、先日のニュースを紹介したいと思います。

 
●花粉症・アトピー根本治療に道 筑波大、抑制分子を発見

http://sankei.jp.msn.com/science/science/100607/scn1006071330001-n1.htm

 
花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎など、すべてのアレルギー症状を抑制する分子を人体内の肥満細胞から発見した、と筑波大大学院人間総合科学研究科の渋谷彰教授らの研究グループが6日付の米科学雑誌ネイチャーイムノロジー電子版に発表した。

アレルギー反応は、花粉やダニなどの抗原と、免疫細胞が作るIgE抗体が、肥満細胞に作用してヒスタミンなどの物質を血中に放出し、炎症やかゆみを起こす症状。

これまでアレルギーに対してはヒスタミンの働きを抑える薬剤を中心に治療が行われてきたが、対症療法だったため効果も限定的で、より根本的な治療法の開発が望まれていた。

研究グループは、肥満細胞にある新しい分子を世界で初めて発見し、「アラジン1」と名付けた。さらにアラジン1の遺伝子を持たないマウスをつくり、抗原とIgE抗体を投与してアレルギー反応をみたところ、通常のマウスより強い反応を示した。詳細な解析により、アラジン1は肥満細胞からヒスタミンなどの放出を抑制する分子であることが分かった。

渋谷教授は「アラジン1の働きを強める薬剤を開発することで、すべてのアレルギーの根本的な治療が可能になる」と話している。

臨床試験が進めば数年後の実用化が期待できるという。

  

かなり貴重な研究と言えるでしょう。
ただ、これが実際、臨床まで可能な状況になったとして、その効果のほどは、多少疑問が残ります。

アトピー性皮膚炎に対するIgE抗体の反応は、おおざっぱに言うと、下記のとおりです。

   
1.ヘルパーT細胞がBリンパ球に指令を出してIgE抗体を産生する

2.IgE抗体が血中の肥満細胞などに結合する

3.肥満細胞と結合したIgE抗体が、さらにアレルゲンと結合することで、ヒスタミンなどの化学伝達物質を肥満物質が放出する

4.ヒスタミンなどが、皮膚の細胞に働きかけ炎症の起因となり、かゆみが生じる
   

だいたいこんな感じでしょうか?
現在、行われている病院での治療は、「ステロイド剤」「抗アレルギー剤」「抗ヒスタミン剤」が代表的なものです。

まず「ステロイド剤」は、免疫抑制の効果があるため、一番最初の「1」の働きを抑制することが目的となります。
「抗アレルギー剤」は、「2」「3」の働きを総合的にブロックします。
そして「抗ヒスタミン剤」は、皮膚の細胞にあるヒスタミンに対する受容体をブロックする、つまり「4」の働きを抑制する働きがあります。

今回の記事を見る限りにおいて、この「アラジン1」の働きをみると、「2」と「3」の抑制であることから、おそらく「抗アレルギー剤」に近い効果しか得られない可能性があります。

本来、ヒスタミンは化学伝達物質として不可欠なものです。
したがって、ヒスタミン放出を妨げる要因、あるいはヒスタミンの受容体をブロックする要因を体が感知すると、ヒスタミン濃度を上げようとするため、結果的に、少しずつ効かなくなる傾向があります。
「抗アレルギー剤」「抗ヒスタミン剤」が、一定の効果以上を得ることが難しく、ステロイド剤ほどの効果が得られないのもこのためです。

人間の体は「バランス」の上に成り立っています。
先日、制御性T細胞のことに触れましたが、制御性T細胞の働きを強める薬剤が開発されたとして、それがどれくらいの効果を持続させるのかは不明です。
おそらく、人間が持つ恒常性機能(異常状態を回復させようとする力)は強いため、体が望まない状況に陥る働きを強いられれば、その反動は少しずつ蓄積されていく恐れがあります。

ただ、こういった研究がなされないことには、医療としての進歩もないわけですし、ステロイド剤やプロトピック軟膏と同じ失敗の轍を踏まぬよう、後々の影響(長期間使用後の影響)をあらかじめ考慮した形で、研究が進んで欲しいものです。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

今回は、肥満細胞→ヒスタミン産生の部分を取り上げた研究じゃが、アトピー性皮膚炎のかゆみが誘発される経路は、このIgE→肥満細胞→ヒスタミン、の経路だけではない。
それこそ、角質層の乾燥に伴う痒みの神経線維が関わっていることもある。
東君が言うように、一つの結果からは、まず一つの原因が確認できることを忘れずに、複数の原因を解明するために必要なこと、というのも十分考えて欲しいところじゃの。