【Q&A】制御性T細胞の話

今日は、久しぶりのQ&Aじゃ。

 

 

 

以前、制御性T細胞のことを東君がブログで書いたのじゃが、そのブログにコメントをいただいた。
そこで質問いただいたことについて、今日はお答えしたいと思う。
制御性T細胞のブログの内容は、下記を参照いただきたい。

 
●制御性T細胞の話(1)
http://blog.atopinavi.com/2010/02/27/

●制御性T細胞の話(2)
http://blog.atopinavi.com/2010/02/28/

 
これに対して、下記の質問をいただいてコメント内でやり取りを行ったのじゃ。

 

●Aさんのご質問

アトピー性皮膚炎患者では炎症時には制御性T細胞は血中ではどうなっているのでしょうか。それと制御性T細胞がIgE抗体産生に及ぼす影響はどうでしょうか。

 
●あとぴナビからの回答

油井さん、こんにちは。
atopinaviスタッフです。

>> アトピー性皮膚炎患者では炎症時には制御性T細胞は血中ではどうなっているのでしょうか。

取材の際にお伺いした先生のお話によると、炎症時には、炎症を起こしている皮膚細胞付近に制御性T細胞が集まり、その後、治癒状況になると、それがリンパ節に移動する、ということでした。
免疫を亢進させる働きを持つヘルパーT細胞とは逆に、免疫を抑制する働きを持つのが制御性T細胞です(昔は、この免疫を抑制する働きを持つT細胞は「サプレッサーT細胞」と考えられていましたが、今ではサプレッサーT細胞ではなく制御性T細胞であることが分かっているそうです)が、この制御性T細胞の働きにより、免疫は調整されている状況です。
詳しくは、あとぴナビ情報Webの医療ナビにの中にある「制御性T細胞がかゆみを消す」をご覧ください。

>> それと制御性T細胞がIgE抗体産生に及ぼす影響はどうでしょうか。

これは、今後の基礎(研究)、臨床を待つしかないようです。
本来の働きを考えると、制御性T細胞は、IgE抗体産生をも抑制するはずですが、IgEが結合する細胞の受容体は複数あることがわかっており、それが難しくさせています。
例えば、ガレクチンー3といわれる受容体を通じて、ステロイド剤使用中には、逆にIgEに対する表皮マイナスB細胞をプラスに変えることで、IgEを連鎖的に生み出す働きがありますが、制御性T細胞が、こういった状態のIgEに対してどのように影響をもたらすのかは、実際に調査するしかないでしょう。
(本来、IgE抗体を生み出すのは、ヘルパーT細胞の指令により、こういった場合は、制御性T細胞も十分、バランスを調整してくれるとは思いますが、ガレクチンー3という受容体を通して、sIgE+B細胞が結合することで生み出されるIgEそのものは、制御性T細胞の支配下、あるいは影響を受けるのかは不明のため)
いずれにせよ、取材でお聞きした戸田先生のお話では、今後、世界各国でこの理論に基づいた研究がなされる予定ですので、そういった研究の中から、新たな事実がわかってくるのではないでしょうか?ということでした。

仮にですが、ブログ中にもあるように、現在、アトピー性皮膚炎患者に対するステロイド剤の使用は、こういった治癒状況の見極めをすることなく行われていますが、炎症反応を自分で抑える段階においては、制御性T細胞をも抑制する働きを持つステロイド剤の使用は避けた方がよい、などのことが判明するかもしれません。
今後に期待したいところですね。

 
●Aさんからのご質問

コメントありがとうございました。アトピー性皮膚炎では気管支喘息やアレルギー性鼻炎に比べると比較にならないほどIgEや好酸球が血中に増えてます。僕の想像ではアトピー性皮膚炎では制御性T細胞の数あるいは機能が極端に低下(?)しているのではないかと想像しています。また気管支喘息やアレルギー性鼻炎は炎症が局部的ですがアトピー性皮膚炎は全身的です。このような病態が血中のIgEや好酸球を増加させてるのかもしれません。制御性T細胞がアトピー性皮膚炎で単純に皮膚の炎症の場で減少しているのかあるいは機能的な変化があるのかどうかが問題であると思っています。それと制御性T細胞をターゲットとしたアトピー性皮膚炎の治療がどうあるべきかが具体的にイメージ出来ません。その辺をご教示ください。

  

上記の質問について、興味のある人も多いと思うので、ブログで回答させていただくことにした。

まず、制御性T細胞が、アトピー性皮膚炎の人の皮膚細胞や血中において、実際にどのように働いているのかは、これから外国を含めて行われる予定の臨床を待つしかないじゃろう。
したがって、現時点では推測にしかすぎないことを前提にお聞きいただきたと思う。

制御性T細胞の「役割」というものを考えると、通常、炎症を生じさせる最初の段階、つまりヘルパーT細胞が活性化している状況においては、当然、その働きが強いとは考えづらい。
おそらく、皮膚の細胞に生じた炎症が終息しはじめる際に作られる何らかの伝達物質が、制御性T細胞を活性化させて、ヘルパーT細胞の指令を受けて活性化しているBリンパ球の活動を抑制しておるのじゃろう。
問題は、制御性T細胞が常に一定の働きを行っておるのか、あるいは働きに強弱をつけておるのか、という部分かもしれない。
なぜかというと、現在、アトピー性皮膚炎の治療に使われているステロイド剤が持つ「効果」の部分に関わってくるからじゃ。

今回のAさんの質問の本題は「制御性T細胞をターゲットとしたアトピー性皮膚炎の治療がどうあるべきなのか?」という部分じゃと思うが、現在のアトピー性皮膚炎の主たる治療は、ご存知のように、ステロイド剤やプロトピック軟膏のような、免疫を抑制する薬剤によるものじゃ。

この免疫抑制効果とは、単にIgE抗体を増加させる免疫のみをターゲットとして働くのではなく、人間の体の免疫システム全体を低下させることにある。
臓器移植の際の免疫抑制剤の最も大きな問題は、感染症にかかりやすくなってしまうことじゃが、これも、拒絶反応、つまり自己免疫を抑制するために用いた免疫抑制剤が、体全体の免疫を抑制してしまうことから生じる問題じゃ。

今回の制御性T細胞の働きの論文から推測すると、炎症を活性化させる、つまりヘルパーT細胞の働きが強い場合には、制御性T細胞の働きは弱く、炎症が終息に向かう段階においては、制御性T細胞が強く働くことで、T細胞の指令を受けて抗体を作り出すBリンパ球の働きを調整しておると思われる。
炎症が治ると制御性T細胞がリンパ節に移動するというのは、役割を終えたので、炎症部位の細胞から移動した、ということを指しておるのじゃろう。

したがって、炎症が終息を行う段階においては、制御性T細胞の働きは相当に重要であるといえるのじゃが、ステロイド剤などは、免疫全体の働きを抑制する働きから推測すると、ヘルパーT細胞も制御性T細胞も、両方の働きを抑えている可能性がある。
つまり、両T細胞の活動を「冬眠」させているだけであって、除外させているわけではない、ということじゃ。
今後の研究を待つしかないのじゃが、もし、ステロイド剤を使用していると、炎症が治まってきても、制御性T細胞がリンパ節に移動していなければ、炎症部位においては、ヘルパーT細胞、そして制御性T細胞、両者がとどまって、いつでも活動を再開できる状態にある可能性がある、ということじゃ。

そのため、ステロイド剤の「免疫を抑制する」という効果が弱まれば、再び、炎症が生じやすい、という悪循環がここで生まれるということじゃな。
本来の免疫活動を考えれば、免疫活動を終息させるためには、終息させるための「行動」が必要なはずじゃが、こういった強制的な免疫活動の抑制は、免疫活動開始から終息までのプロセスを無視していることで、免疫活動に対する影響を逆に生じさせておる可能性があるということじゃ。

具体的にいえば、炎症が終息する段階を見極めて、ステロイド剤などの使用を中断するなど、使用の方法を検討することが必要ということじゃな。
もちろん、どのような働きがどのような結果を生むのかは、これからの臨床や研究を待つしかないが、少なくとも、生体の活動に合わせて、補助となる薬剤の使用を決めることができれば、薬剤が持つリスクの軽減にもつながるし、本来、人間が持つ免疫活動の邪魔もせんことになる。

いずれにせよ、免疫活動はまだまだ不明な部分が多いのじゃが、判明した事柄から、現在の治療法の問題点と改善点が明らかにされるのであれば、患者の利益につながることじゃろう。
これからの研究に期待したいところじゃの。

 
おまけ★★★★東のつぶやき

制御性T細胞について詳しくは、先月の特集で取材して取り上げていますので、興味のある人はご覧ください。

●制御性T細胞がかゆみを消す

http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=66