病気と症状の違いと治療法

「病気」と「症状」は、本質的に全く異なるものじゃ。

 

 

 

 

 

 

 
アトピー性皮膚炎で言えば、「病気」が「アトピー性皮膚炎」に該当し、「症状」が「痒み」「炎症」などに該当する。
つまり、本当の意味でアトピー性皮膚炎を治すということは、「痒み」「炎症」という症状を治す治療ではないと言える。
もちろん、痒みや炎症という症状が、体感できる不快な状態には違いないわけじゃから、患者の意識が、そういった症状の「治療」に向くことは当然じゃし、間違ってはおらん。
しかし、「症状」の治療=「病気」の治療に必ずつながるわけではないことを知るべきじゃ。

先月末に、Webである記事を見つけたんじゃ。
今日は、その記事を紹介したいと思う。

  

●アトピー性皮膚炎治療薬の共同開発に向け協議へ―アンジェスと塩野義
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26990.html

 
アンジェスMGは3月29日、アトピー性皮膚炎などを適応症として開発中のNF-κBデコイオリゴについて、塩野義製薬と共同開発および独占的販売権の付与を目的とした正式な協議を開始すると発表した。

協議対象は、アトピー性皮膚炎や欧米に患者が多い尋常性乾癬など、外用薬で治療する皮膚疾患全般。既にアンジェスがアトピー性皮膚炎適応のために国内フェーズ2試験を終了した軟膏製剤のほか、皮膚浸透性を改善した製剤も含むとしている。

アンジェスによると、軟膏製剤については、これまでの試験で中等症以上の顔面のアトピー性皮膚炎に対する治療効果を確認。既存のステロイド外用薬やタクロリムス水和物軟膏で認められる皮膚感染症などの副作用については、プラセボと同様に低い発現率だったという。

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を伴う皮膚炎。過剰免疫によるアレルギー反応が原因とされ、卵や牛乳などの飲食や、ダニやほこりなどの環境、ストレスなどによって生じる。アンジェスによると、患者数は増加傾向にあり、現在日本で約140万人。

塩野義製薬は現在、自社開発のアトピー性皮膚炎治療薬(外用薬)のフェーズ2試験を実施しているが、「炎症を抑えるNF-κBデコイオリゴと、炎症とかゆみを抑える(同社の)開発品は作用機序が異なり、共存できる」としている。

  

現在、風邪薬で、鼻水やくしゃみを抑える、といった効果を持つ薬剤を、風邪が治る薬剤と表現することはないじゃろう。
これは、当たり前の話で、鼻水やくしゃみは、風邪という細菌、ウィルスに感染した結果出てくる症状じゃから、症状を薬剤で抑えても、細菌やウィルスの感染・増殖に直接的な影響を与えられるわけではないからじゃ。
ところが、今回の報道もそうなのじゃが、アトピー性皮膚炎の場合、どうも、この「症状」を抑える治療が「病気」を治す治療として、捉えられることが多い。
では、この症状を治す治療を病気を治す治療と「勘違い」することの何が問題かというと、症状が出なくなることで、病気が治ったと勘違いしてしまうことが問題なのじゃ。

風邪で、熱や鼻水などの症状が出ていて、それを薬剤で抑えたとしよう。
すると、不快感はなく、普段の行動ができてしまうことになる。
ところが体内で、ウィルスや細菌の増殖が止まっていなければ、そういった普段の行動が体力を奪うことで、風邪をこじらせてしまうこともあるんじゃ。
風邪でだるくなって横になりたくなるのは、体がそう望んでいる表れでもあると言えよう。

同じように、アトピー性皮膚炎の場合も、例えば受験で睡眠不足が続いて症状があらわれている場合、薬で痒みと言う症状を抑えて、アトピーが治ったと勘違いすれば、受験が近ければ睡眠不足の状況は続けてしまうことになるじゃろう。
そうなれば、薬剤で症状を抑える効果が弱まれば、アトピー性皮膚炎そのものが治ったわけではない以上、再び痒みが生じることになる。
これを繰り返すことで、知らず知らずのうちに、薬剤に依存、その副作用などのリスクを受ける可能性が高まっていくことになるんじゃ。

今回の薬剤が、どのような種類の薬剤であるのかはわからんが、治療の対象は、アトピー性皮膚炎と言う疾患ではなく、アトピー性皮膚炎という疾患によりもたらされた「炎症」であることは見てとれる。
先に述べた風邪薬の例のように、社会的な認知を求めていくのであれば、アトピー性皮膚炎の治療薬ではなく、アトピー性皮膚炎によりもたらされる不快な痒みや炎症など、諸症状の緩和薬、という表現が正しいはずじゃ。
そして、そうした表現を患者側が理解してこそ、はじめて、アトピー性皮膚炎の治療に何が必要なのかが、分かってくるのではないじゃろうか?

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

十年ほど前、ステロイド剤に副作用はない、と公言してはばからない皮膚科の医師は多かったものじゃ。
じゃが、最近は、今回の記事にあるように「ステロイド剤やプロトピック軟膏(タクロリムス水和物)では皮膚感染症などの副作用が認められる」ということは、衆知の事実として認められつつある。
そこで一つ「怖い」のは、こういった副作用について明言する反面、そういった副作用が認められる薬剤が「治療の主体」とされておることじゃ。
治す治療と抑える治療、その本質的意味合いは、医師であれば、しっかり把握しておるわけじゃから、患者がどのように捉えてどのようにその治療を実践しているのかも含めて、考えて欲しいものじゃ。
患者は、医師が「この薬で治る」と言えば、その言葉通り受け取ることを忘れて欲しくはない。