結核と多剤耐性とアトピー

東です。

 

 

 

 

 

 

 
現在の医療の基本は、実質上、「薬剤」をいかに使用するか、という状況にあるといっても過言ではないでしょう。
実際、現在の医療保険制度は、手術や診療などの医師の技術的なところよりも、はるかに薬剤の処方と薬剤自体に対して用いられています。

今日は、先日、発表された結核のニュースを紹介したいと思います。

 
●薬効かない結核、58カ国で確認=WHO
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100319-00000020-jij-int

世界保健機関(WHO)は18日、従来の薬による治療が極めて困難な「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が今年3月時点で、世界58カ国で確認されたと発表した。XDR結核の感染者は推定で、年間2万5000人に上るとした。
また、XDRを含めた、薬による治療が難しい「多剤耐性」(MDR)結核の感染者は08年で年間44万人、死者は15万人に上ったと推計した。 

 
結核とは、「過去の病気」というイメージの人が多いかもしれませんが、実際には世界総人口の約3分の1が感染し、毎年900万人が発病、200万人が死亡しているという、最も危険な感染症の一つです。
今回の記事では、従来の治療薬に耐性を持つ多剤耐性結核、超多剤耐性結核患者が、増えているということを述べています。
結核とは、このように怖い病気でもあるのですが、今日の本題は結核のことではありません。
この「多剤耐性」について考えてみたいと思います。

アトピー性皮膚炎でも問題になる感染症の一つに、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)があります。
これは、黄色ブドウ球菌の治療に、メチシリン系の抗生物質を多用し、その結果、その薬剤に耐性を持つ黄色ブドウ球菌が出現してしまった、ということです。
ブドウ球菌も「生物」の一つです。
自分が生存するために「変化(あるいは進化)」を行っているということです。
最近ではMRSAを治療するための次世代の抗生物質にも耐性を持つブドウ球菌や、複数の抗生物質に耐性を持つ多剤耐性黄色ブドウ球菌も出現しています。

病原菌を薬剤で抑え、病原菌は生き残るために薬剤に対する耐性を身につけ、耐性を持った菌を抑える薬剤が開発され・・・・・ということが、イタチゴッコのように繰り返されています。

結核の場合、薬剤の治療を途中で中断することで、この多剤耐性の結核菌が現れる、ということが言われているのですが、アトピー性皮膚炎に対する薬剤治療と同じような落とし穴が潜んでいないのかが心配です。

結局のところ、薬剤を使用することで耐性菌が生まれるわけですから、耐性菌に効く薬剤の開発も大切でしょうが、薬剤を使用しない治療法の模索も本来は必要ではないでしょうか?
また、薬剤を「医師が言われた通り使用した患者」には、耐性菌を持つ患者が生まれないのでしょうか?

薬剤は適切に使用すれば、大きな効果が得られます。
しかし、この「適切な使用」の範疇が、「いろいろな思惑」によって拡大しているような気がしてなりません。
アトピー性皮膚炎患者の場合でも、ステロイド剤を1回の診療で1カ月分処方されることは珍しいことではありません。
でも、本当に1カ月分、患者任せの使用にしておくことが大切なのでしょうか?

病原菌が変化していく中には、その「進化」に人類が手助けしてしまっていることも少なくはありません。
そして、そのしっぺ返しは、人類に戻ってきています。
同じように、「病気」そのものも、人類が「作って」しまった病気もあります。
アトピー性皮膚炎も、自然増加した疾患ではなく、生活環境の変化で増加させてしまった疾患です。

本当に大切なことは何なのかをもう一度、考えておきたいものです。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

結核に対する薬剤の治療は、生命に関わる状況から考えると、それで救われる患者のことを考えた場合、多剤耐性を持つ菌を生んでしまうリスクは、天秤にかけることすら難しいとも言えるかもしれん。
ただ、医学の進歩が、薬剤の進歩だけに留まる必要はないはずじゃ。
結核なども、感染=発病ではない。
過去に猛威をふるった病原菌の中には、宿主(人間)と共生の道(弱毒化)を選ぶことで生き残った菌もおる。
今後の「医学」の進歩を期待したいところじゃ。