プロトピック軟膏と悪性リンパ腫の関係

西だ。

 

 

 

 

 

 

 
遅くなったが、明けましておめでとう。
今年も、アトピー性皮膚炎に関わる最新情報や、表には出にくい情報を伝えて行くのでよろしく。

今日は、先月、アメリカの科学雑誌で報告されたプロトピック軟膏で、悪性リンパ腫が発症するとの論文が掲載されたので、紹介したい。
全文は、掲載しきれないので、要約した部分のみを書きたいと思う。

 

●局所タクロリムスあるいはピメクロリムス曝露と癌の関連

 

Rita L Hui, William Lide, James Chan, Joanne Schottinger, Monica Yoshinaga, and Mirta Millares

 

背景:米国食品医薬品局(FDA; the Food and Drug Administration)は局所カルシニューリン阻害薬の発癌リスクに関して公衆衛生勧告を発表した。

目的:一般的な皮膚科疾患を有する患者における局所カルシニューリン阻害薬の曝露と非曝露による発癌リスクの比較。

方法:レトロスペクティブ・コホート観察的研究は2001年から2004年12月までアトピー性皮膚炎あるいは湿疹と診断された953,064の登録者を有する総合医療提供システムのデータを使用した。医療記録の閲覧は、局所カルシニューリン阻害薬に曝露された患者において癌診断を確認するために行われた。どの癌においても非曝露患者より少なくとも3倍以上の発癌リスクを有する場合に行われた。データの分析にはCox比例ハザードモデルが用いられた。

結果:全ての発癌の年齢・性別補正ハザード比は、タクロリムス曝露患者vs.非曝露患者で0.93(95%信頼区間 0.81 to 1.07; p=0.306)、ピメクロリムス曝露患者vs.非曝露患者で1.15(95%信頼区間 0.99 to 1.31; p=0.054)であった。T細胞リンパ腫は、タクロリムス曝露(ハザード比=5.04, 95%信頼区間 2.39 to 10.63; p<0.001)およびピメクロリムス曝露(ハザード比=3.76, 95%信頼区間 1.71 to 8.28; p<0.010)によって有意に発現リスクが上昇した唯一の癌であった。T細胞リンパ腫を発現した薬剤曝露群の医療記録を閲覧することによって、16例のうち4例はタクロリムスあるいはピメクロリムス曝露以前にT細胞リンパ腫の初期病変が疑われる皮膚病変を有していたことが判明した。これらの4例を除外した後のT細胞リンパ腫における年齢・性別ハザード比は、タクロリムスで5.44(95%信頼区間 2.51-11.79; p<0.001)、ピメクロリムスで2.32(95%信頼区間 0.89-6.07; p=0.086)であった。メラノーマを含む他の癌のサブグループ解析では、統計学的に有意な発現リスクの上昇は認められなかった。

結論:局所タクロリムスあるいはピメクロリムス曝露は総発癌率の上昇には関連しなかった。しかし、局所タクロリムスの使用はT細胞リンパ腫の発現リスクの上昇に関連した。

 
簡単に言うと、アメリカのFDA(日本の厚生労働省にあたる政府機関)が、アトピー性皮膚炎に対するプロトピック軟膏(タクロリムス水和物)の使用で発ガンのリスクが生じることを勧告した、という内容だ。
報告によれば、約10,000名のプロトピック軟膏の使用患者を調査した結果、明らかに使用しない患者と比較して、T細胞リンパ腫(悪性リンパ腫)が発現するリスクが上昇することが判明した、ということだ。

現在の皮膚科医の見解は、局所的に使用する軟膏によるタムロリクス(プロトピック軟膏の成分)の使用は、その吸収度合いの問題から、発ガン性の危険はない、としていた。
その根拠として強く訴えていたのが、「プロトピック軟膏を使用した患者で、発ガンの事例はない」ということだったのが、それが、今回のFDAの勧告により、覆ったともいえよう。

最も、日本の厚生労働省も、すでに2008年8月には、国内でのプロトピック軟膏の使用者の発ガンが疑われる事例が発生したことから、「プロトピック軟膏を患者に処方する際には、発ガンのリスクがあることを患者に説明すること」という通達を出している。

だが、現在、プロトピック軟膏を使用している患者の多くが体験しているように、そのような説明を受けてはいないのが現状だ。

確かに、発ガンの状況は約1000人に1人という割合であり、発生する確率からいえば高いものではないかもしれない。
だが、一度、悪性リンパ腫が発生してしまえば、生命に危険が生じることにもなる。
その「リスク」の度合いとしては、決して軽視できるものではないだろう。
特に、乳幼児にも「積極的」に使用されている現状ではなおさらだ。

今後、これらの報告がどのように日本国内において、患者側に利益のある形で反映されていくのかは不明だが、少なくとも、患者側は、こういった事実があることを、早めに知っておくべきだろう。

 
おまけ★★★★西のつぶやき

昨年末(12/28)に博士のブログであったが、現在、プロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎の症状が落ち着いた際に、その状況を維持するだけの目的で、使用することが推奨されているようだ。
だが、こういった発ガンのリスクは、使用期間が長くなればなるほど高くなるのは明白であり、医師側が見解を改めない以上、患者側が自己防衛的意識を持って、こういった事実を知って置いて欲しいと思う。