【Q&A】このまま使ってもよいのでしょうか?

今日は、一昨日の西君のブログを読んだ読者から寄せられたご質問にお答えしたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●Jさんからのご質問

小学生の息子ですが、生後間もなくからアトピー性皮膚炎でした。
これまでステロイド剤の治療を続けていましたが、一進一退だったので、医師に相談、今年の10月からプロトピック軟膏を勧められて使用しています。
ただ、10月に処方を最初に受けた際、厚生労働省が通達を出した発ガンする危険性のお話というのは全くありませんでした。
また、今回の西さんのブログを読んで気になったので、昨日、医師に相談に行ったところ、「皮膚科学会の見解は心配ない、ということなので、標準治療として行っているから」と、次のホームページを見せていただきました。

http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/05/kranke.html#08
http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med24/atopy/tacrolimus.html

特に、下のページでは、西さんのブログに書いてあったように、安全性を強調する内容になっています。
そこで、西さんのブログにあったアメリカでの論文の話をしたところ、非常に驚いていました。
その上で「安全と言い切れるのでしょうか?」と尋ねたところ、実際に論文を読んでみないと分からないが、そのような論文が発表されているのならば、新しい事実として受け止める必要はあるかもしれない、と言われました。
子どもに発ガンのリスクがあるとするなら、低いリスクでも使いたくはありません。
このまま使用していいのか、迷っています。
アドバイスをお願いします。

 

 
Jさん、こんにちは。
まず、下のホームページは、作成されたのが2003年12月12日、つまり6年も前に作られたものであることが分かる。
この当時は、まだエビデンスも多くなく、また、関西のある医師が元々リンパ腫を持っていた方の例を、プロトピック軟膏使用により悪性リンパ腫が生じた、と報告したため、反論にあって、以降、逆に安全性が強調されるような状況に陥った経緯がある。

じゃが、2008年の厚生労働省の通達や、今回、西君が紹介した論文にあるように、当時とは、状況も異なり、エビデンスも増加することで、「新たな事実」つまり発ガンの危険性を指摘する事実が現れ始めておることも事実じゃ。

もちろん、この発ガンのリスクとは、決して高いものではない。
どんな薬剤であろうとも、何らかのリスク(副作用)はあるし、そのリスクが高いか低いかという違いは当然ながらあるといえる。
ただ、今回の論文においては、全く使用していない場合、そして他の免疫抑制剤と比較すると、少なくとも悪性リンパ腫においては、有意差が見られたという報告ではあるので、そのリスクと、使用した場合のメリットを考えて、どちらを優先して考えるか、ということではあるじゃろう。

しかし、一つだけ言えることは、プロトピック軟膏に限らず、現在、アトピー性皮膚炎の「治療」として用いられているステロイド剤など、他の薬剤も全て共通していえることは、あくまで、その「治療」の対象は、「炎症→痒み」という症状に対するものであって、アトピー性皮膚炎という病気の原因そのものを治療しているのではないことは確かじゃ。

どのような治療を行うにしろ、まずは主治医とよく相談し、納得して使用することが大切じゃろう。
低い発ガンのリスクよりも、痒みを抑えられるというメリットを重視することに納得すれば、そのまま使用を継続するのも「あり」じゃし、低いとはいえ、自分の子どもに発ガンのリスクは生じさせたくないということで、他の治療法を模索するのも「あり」じゃ。
リスクが万一、生じた場合に、そのリスクを被るのは、医者ではなく患者なのだからの。
まずは、よく主治医と話し合ってみてはいかがかの。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

一つだけ補足しておくならば、今の皮膚科学会が指針としている元となるエビデンスは、常に最新のものを参照して書きかえられてはおらんということは承知しておいた方が良いじゃろう。
もちろん、発表された論文のエビデンスが正しいかどうかは、その後の検証も大切なことじゃしの。
もっと大規模なデータが提示されて、今回の論文のエビデンスが否定されることも、ないとはいえん。
医学は、常に進歩しながら、そして改善されていくものじゃ。
その時点において確立されている治療法は、その時点において「ベター」と判断されてはいるが、その後の新たな事実により、新たな「ベター」な治療法に置き換わることも「世の常」じゃ。
画一的な指導が行われている現在のアトピー性皮膚炎治療においては、どのようにその治療を受け入れていくのかは、患者側も情報を集めた上で、相談すると良いじゃろう。