IgEの第三の受容体とアトピー(1)

もうすぐ12月じゃの。

 

 

 

 

 
本格的な冬も、もうそこまできておる。
乾燥に十分気をつけて欲しい。
さて、10月19日に、アトピーとIgEとステロイド剤というタイトルでブログを書いたが、その中で、

 
●アトピーとIgEとステロイド剤(2009年10月19日のブログ)
http://blog.atopinavi.com/2009/10/19/

 
では、ここで何が問題かというと、IgEのGal-3と呼ばれる受容体を増加させるのが「IL-4(インターロイキンー4)」にあるということじゃ。
これは、今年のアメリカンジャーナル(アメリカの病理学雑誌)のVol.174の922ページから10ページにわたり論文が発表されておるので、興味のある人は探して読んでみて欲しい(原文は英語のみ)。

 
と述べたのじゃが、数名のブログの読者から、この論文を読みたいというご要望をいただいた。
そこで、英語の原文を今回、専門家に翻訳してもらったので、論文の要旨を載せたいと思う。
なお、長い論文なので、部分的に大事と思われるところのみ6回に分けて掲載したい。
それと、図表については、データが入手できないため、省かせていただくので、あしからずご了承いただきたい。

では、今日はまず第一回目じゃ。

 

●1回目

ガレクチン-3はアトピー性皮膚炎のマウスモデルにおいてアレルギー性炎症反応の発現に非常に重要である

Jun Saegusa、Daniel K. Hsu、Huan-YuanChen、Lan Yu、Agnes Fermin、Maxwell A.Fung、Fu-Tong Liu

カリフォルニア大学デービス校 皮膚科(サクラメント、カリフォルニア)

 
ガレクチン-3は、β-ガラクトシドに結合する動物レクチンファミリーに属し、上皮細胞、免疫細胞を含む種々の細胞に発現している。アレルギー性皮膚炎におけるガレクチン-3の役割を証明するため、ガレクチン-3欠損(gal3-/-)マウスと野生型(gal3+/+)マウスで、経皮的卵白アルブミン(OVA)感作による皮膚炎症反応を比較した。
OVA処理gal3-/-マウスでは、gal3+/+マウスに比べて著しい表皮肥厚の軽減、好酸球浸潤の減少、血清IgE濃度の低下が認められた。前者では、OVA処理した皮膚部位でインターロイキン(IL)-4 mRNA発現の減少、インターフェロン(IFN)-γmRNA発現の上昇が誘引された。さらにOVA感作マウスから採取したgal3-/-脾臓細胞では、gal3+/+脾臓細胞に比べてIL-12の分泌亢進が認められた。またgal3-/-樹状細胞ではT細胞への抗原提示によって、gal3+/+樹状細胞に比べてヘルパーT細胞(Th1)に極性を示した(in vitro)。OVA特異的T細胞受容体を発現させたgal3-/-のトランスジェニックマウス(gal3-/-OVA-specific TCR tg マウス)からT細胞を移植したマウスでは、gal3+/+T細胞を移植したマウスより、OVA曝露による皮膚炎は有意に軽減し、Th2反応が著しく減少した。我々は、ガレクチン-3は抗原の経皮的投与による炎症性Th2反応の発現に不可欠であり、ガレクチン-3不在ではTh1反応に極性を示すと結論する。このTh反応発現におけるガレクチン-3の調節作用は、樹状細胞とT細胞の両者で起こっている。我々の研究は、ガレクチン-3がヒトにおけるアトピー性皮膚炎急性期で重要な役割を果たすことが示唆している。(Am J Pathol 2009, 174: 922-931; DOI: 10.2353/ajpath. 2009. 080500)

アトピー性皮膚炎(AD)は、慢性あるいは慢性的に再発を繰り返す炎症性皮膚疾患であり、掻痒症と湿疹症の皮膚病変を特徴とする。種々の試験によって、ADは複雑な病因を有し、免疫および炎症の発現経路において複合的な活性化を示すことが認められている。抗原刺激により、ヘルパーT細胞はIL-2およびIFN-γを分泌するTh1に、あるいはIL-4およびIL-5、IL-13を分泌するTh2に進展する。Th2細胞はADにおいて主要な役割を演じることが提唱されてきたが、その考えは末梢血における好酸球増加症の存在、大多数のAD患者に認められる血清IgE濃度の上昇によって裏付けられる。ADの急性病変部では、IL-4およびIL-5、IL-13のmRNAおよび蛋白を発現する細胞が有意に増加し、Th2細胞の優先的集積が示唆されている。ADの急性病変初期段階ではTh2サイトカイン環境が優位であり、慢性病変ではTh1とTh2が混在しているというのが、ADに関する我々の最近の理解である。1
ガレクチンは動物レクチンファミリーの一つであり、糖認識ドメインにおけるコンセンサスアミノ酸配列とβ-ガラクトシドに対する親和性によって定義される。2,3 ガレクチン-3は唯一のキメラ型ガラクチンで、縦列反復から成る柔軟性のある非レクチン結合C末端糖認識ドメインで構成されている。種々の臓器上皮に豊富に存在し、T細胞や樹状細胞を含む多くの免疫・炎症細胞によっても発現が誘導される。4  ガレクチン-3の発現は細胞の分化や活性化に依存している。5  細胞外のガレクチン-3は様々な細胞を活性化し、細胞間あるいは細胞・細胞外マトリックス間の相互作用に重要な役割を演じ、糖結合特性に関連している。6,7  一方、細胞内ガレクチン-3は細胞の成長、細胞周期の進行、アポトーシスの調節に一定の役割を果たし、その作用は糖非依存性である。8,9
免疫・炎症反応に関しては、ガレクチン-3は免疫細胞の生存を調節することが知られている。内因性ガレクチン-3は、ガレクチン-3の異所性発現を形質移入したヒトT細胞Jurkat株において抗アポトーシス作用を示し、マウスではマクロファージにおいても同様の作用を示す。10,11  対照的に、外因性に添加したガレクチン-3は、ヒトT細胞株において細胞表面糖蛋白に結合しアポトーシスを誘導することが報告されている。12,13 さらに外因性ガレクチン-3は様々なげっ歯類およびヒト免疫細胞を活性化し、4 ヒト末梢血、肺胞マクロファージおよびヒト単球に対する化学誘引物質として機能することが示されている。14  ガレクチン-3欠損(gal3-/-)マウスを用いた最近の試験報告から、内因性ガレクチン-3はマクロファージの貪食作用、15  細胞内機能によるマスト細胞反応16 において重要な役割を果たすことが明らかにされている。さらにガレクチン-3は好酸球の内皮細胞上でのローリング、内皮細胞への接着を補助するため細胞表面接着分子として機能することが明らかになった。17  これらの知見はガレクチン-3が炎症反応を促進することを示唆している。
我々は既にマウスの喘息モデルにおいて、gal3-/-マウスでは野生型マウスに比べてアレルギー性気道炎症の程度が軽度であることを示した。18  このアレルギー炎症において、細胞基盤におけるガレクチン-3の役割はまだ解明されていない。さらにアレルギー性皮膚炎におけるガレクチン-3の役割も知られていない。今回の試験では、マウスの経皮的OVA反復感作で誘発したAD急性相モデルにおいてガレクチン-3がどのような役割を果たすのかを調べた。これらのマウスは表皮肥厚(棘細胞症)、真皮への好酸球浸潤、局所性および全身性の著明なTh2反応など、ヒトADでよく見られる特徴を示す。19,20  我々は経皮的感作後に皮膚に浸潤した白血球にガレクチン-3が発現していることを示した。gal3-/-マウスではgal3+/+マウスに比べて皮膚炎症の有意な軽減、Th2反応の低下とTh1反応の亢進が示された。さらにガレクチン-3欠損樹状細胞でOVAペプチドを提示するとTh1極性を示した(in vitro)。また、gal3-/-OVA特異的T細胞受容体トランスジェニック(OVA-TCR tg)マウスからT細胞を移植したマウスでは、gal3+/+ マウスから移植したマウスに比べて、Th2反応の著明な低下と、OVA曝露後の皮膚炎の有意な軽減が示された。これらの結果は、経皮的導入された抗原に対するTh2反応発現にガレクチン-3は不可欠であり、またTh反応発現におけるガレクチン-3の調節作用は樹状細胞とT細胞の両者で発現していることを示唆している。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

今日から6日間に分けて、論文の一部を掲載する予定じゃ。
難しい内容だと思うが、アトピー性皮膚炎の症状を増強させる要因としては、かなり重要な面を有していると思う。
興味のある人は、ぜひ読んでみて欲しい。
明日は、今回の論文のもととなった実験の方法についてじゃ。