【Q&A】症状を緩和させる必要性(2)

今日は、昨日の続きじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

解熱剤で熱を下げた場合の、もう一つの問題点と言えるのが「勘違い」をしてしまう、ということじゃ。

ここで、最初に話は戻るのじゃが、「熱」が出て、全身症状が悪くなると、患者はどうするじゃろう?
また、そういった状態で「熱」を解熱剤で下げると、患者はどうするのじゃろうか?

全身症状が悪い場合は、もちろん、体を動かすことすらおっくすうなので、横になって「寝ている」状態になるじゃろう。
もちろん、食欲がない、深い眠りもえれない、など、全身状態をさらに悪化させているように感じる状態に陥ることもあるじゃろう。

じゃが、本当は、この「動けない状態」こそが、身体が求めている状態、だとしたら、「熱」を下げることは必要なのじゃろうか?

例えば、食欲がない、ということは、胃腸の働きが低下しているので、食物を摂りたくないという体のサインじゃ。
無論、その場合は「体力の低下」というリスクを生じるが、身体の働きを全て免疫活動に使いたいと思っている「体自身」が、その他の行動(消化活動、代謝行動など)を制限させたいと思っておるから、食欲を出さなくしたり、横になってじっとしておいて欲しいために、「辛さ」を感じさせるわけじゃ。

ところが、こういった状態で「熱」がなくなると、どうなるのか?
「熱」が一時的に下がることで、体感的には「楽」に感じるため、次に再び「熱」が上がるまで、行動を活発化させることになる。
食欲も出て、物を食べれるようにもなるかもしれんが、その行動は「胃腸を働かせる」ことになる。
もちろん、その行動により、体力が少しでも持ち直すというメリットは生じるが、熱という絶対的なウィルスに対する防御を一時的に失った状態で、さらに免疫活動を最大限働かせることを阻害させてしまうことになる。

つまり、「熱」を下げる、ということは、体感的に不快な状態から一時的に脱却はさせてくれるものの、体がウィルスや細菌と「戦っている状況」には、水をさしておるといえよう。

これが、「勘違い」という部分じゃな。

アトピー性皮膚炎でいえば、ステロイド剤により痒みや炎症を抑えてしまうと、治った気分になってしまい、これまでの生活習慣を見直さなくなってしまう、つまり、「病気を治す」という行為を妨げてしまう、ということじゃ。

では、「熱」を下げた場合のメリットは何なのか?

まゆちんさんがご質問で書かれていたように、メリットとは、一時的にでも「全身状態」を良くすることで、バイタルサインが相当悪化した状態の場合には、それをあげてくれることにある。
じゃが、このメリットは、実は決定的に、風邪やインフルエンザの治療として必要なものではない。
逆に、デメリットもある。

そのデメリットとは、昨日書いたように、解熱剤を使用することで「死亡率が上がる」ということにある。
もちろん、その「死亡率が上がる」といっても、もともとの死亡率が極端に高いわけじゃないから、深刻に考えられることはあまりない。

従来の季節性インフルエンザの場合、死亡率は0.1%未満じゃ。
1000人が罹って、1人以下しか死なない、ということじゃな。
「0.1%」ではなく「0.1%未満」としているのは、死亡者が0人のことも多いことを示しておる。
それに対して、現在、世間を騒がせておる新型インフルエンザの場合、先日のWHOの発表では、この死亡率は0.4%~0.5%ということじゃった。
1000人が罹って、4~5人が死亡する、という確率じゃな。
あまり多くないように思えるかもしれんが、このままいけば、インフルエンザウィルスの活動が活発になる秋の終わり~冬を迎える前に、100万人規模での感染者が出ても不思議ではないといわれる状況じゃ。
もし、100万人が罹患すれば、死者は4000~5000人となる可能性がある。
あの阪神・淡路大地震の被害者に匹敵する死者が、冬までに現われる可能性があるのじゃ。

その死者の多くは、すでに何らかの重度の疾病を抱えている人が、インフルエンザに罹患することで全身症状を悪くしたり、その他の合併症を生じることによるものじゃろう。
じゃが、何の疾病もない人、乳児、幼児、小児だけではなく成人も含まれるが、これまで特に何の病気も抱えていなかった人が、今回のインフルエンザで死亡した場合、その一因の一つは、解熱剤を使用したことが挙げられても不思議ではない。

当然、新型インフルエンザに対する今後の対策は、いろいろと行われるじゃろうし、WHOの数字も、欧米でのこれまでの状況に対するものじゃから、上記に書いた数字は、あくまで推測の域は越えておらんのじゃが、その「リスク」としての可能性は低すぎる確率ではない、というのが今の現状であることを忘れてはならんじゃろう。

通常のインフルエンザの場合は、大きな問題を抱えることはないのじゃが、今回のような死亡率が高いインフルエンザの場合に解熱剤を使用することは、体が楽なり全身状態が「一時的」に良くなる、というメリットを得られる代償として、相応のリスクを抱える危険性があるということじゃ。

まゆちんさんが書いたように、解熱剤を使用することのメリットはあるし、従来は、デメリットやリスクは、無視できるようなものかもしれんが、状況が変化した状態(今回の新型インフルエンザのような特別な状況の場合)では、そのリスクが相応のモノになる可能性があるということじゃな。

早い話、「熱を下げる」ということは、身体が楽には感じても、風邪そのものを治すという面では逆に邪魔をしていることもあるということじゃな。
つまり、極端にバイタルサインが下がった状態ならば解熱剤が必要なケースもあるじゃろうが、そのように生命に危険が生じている場合でなければ、熱が上がったらすぐに解熱剤で下げるという治療は、風邪を治すという面では逆に働くことがあるので、風邪の治療として積極的に利用する治療法ではない、ということじゃ。

では、アトピー性皮膚炎で状態が悪化した場合に使用するステロイド剤はどうなのか?
詳しくは、明日書きたいと思う。

 
おまけ★★★★博士のつぶやき

症状を抑えることが病気を治している、と勘違いしやすい人は、多いのじゃが、これも一番の主因は、医者が「症状を抑えることによる有益性」の情報に偏った説明を行いやすいことにあるといえるじゃろう。
症状は、体が「何らか必要に応じて自ら出しているもの」であることを忘れてはいかん。
身体にとって全く意味のない「症状」など、ほとんどないということじゃな。