アトピー治療のガイドライン(6)

昨日は、ガイドラインに掲載されているプロトピックについて述べた。
今日は、薬物療法のところの最後の項目である「全身療法」について取り上げたいと思う。

 

 

 

 

 

 

(日本医事新報 NO.4447(2009年7月18日)より)
2.薬物療法

3)全身療法

アトピー性皮膚炎は自覚症状として痒みを伴うことが特徴であり、その苦痛の軽減と掻破による悪化を予防する目的で、抗ヒスタミン作用を有する薬剤(いわゆる抗ヒスタミン薬 [第一世代抗ヒスタミン薬)または抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)] を使用する
抗ヒスタミン薬内服の併用は、アトピー性皮膚炎の痒みを有意に抑制すること、さらに12週間の維持療法試験において連続投与法が間欠投与法よりも痒み抑制効果が高いことが、大規模調査により明らかとなっている。

(中略)

第二世代抗ヒスタミン薬を含む、抗アレルギー薬が有するケミカルメディエーター遊離抑制などの作用は、外用療法の補助療法としての効果を期待するものであり、単独でアトピー性皮膚炎の炎症を抑制するものではない。
2008年より我が国においても、シクロスポリンのアトピー性皮膚炎に対する適応が追加された。シクロスポリンの適応となるのは既存の治療に抵抗する成人例で、間欠的に使用を繰り返してもよいが、使用開始(再開)後3か月以内に休薬することが使用指針により求められている。
アトピー性皮膚炎では、ブドウ球菌あるいは溶血性連鎖球菌による皮膚感染症や、単純ヘルペスウィルスによるカポジ水痘様発疹症を合併しやすい。
全身療法を施行中、ないし考慮する症例においてこのような感染症が疑われた場合は、速やかに適切な抗菌薬や抗ウィルス薬の内服加療を行う。

(以下、略)

 
全身療法については、抗ヒスタミン、抗アレルギー薬とシクロスポリンのことが載っておる。
その他、漢方のことも少し載っておったが、症例が少ないということで書かれていたので、今回は省略した。
今回は、抗ヒスタミン薬とシクロスポリンについて考えたい。

まず抗ヒスタミン薬じゃが、アトピー性皮膚炎の痒み対して効果があるものの、その効果の持続性はあまり強くはなく、また使用を継続することで、その効果が弱まると訴える人が多い。
これは、ヒスタミンという化学伝達物質は痒み(炎症)に関わっておるのじゃが、その他、血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用を有しており、体内には必須の化学伝達物質じゃ。
したがって、ヒスタミンの受容体をブロックすることで、その働きを低下させると、体がヒスタミンをより作ろうとしてしまい、徐々に効果が薄れてくるといわれておるようじゃ。
ステロイド剤のように、免疫そのものを抑制するわけではないので、アトピー性皮膚炎に対して大きな副作用はないといわれており、乳幼児の食物アレルギーに対する体質改善として抗アレルギー薬が用いられることもある。
ただ、上記に書かれておるように、抗ヒスタミン薬は、単独でアトピー性皮膚炎の炎症や痒みを全て抑えることは難しく、補助として併用して使われておるようじゃ。
ただ、薬剤である以上、副作用が皆無というわけではなく、長期連用による問題も指摘されておることは知っておいた方が良いじゃろう。

次にシクロスポリンじゃが、こちらは、アトピー性皮膚炎に対する炎症の抑制効果は非常に強く、痒みを抑える働きは強いといわれておるのじゃが、効果に比例する副作用も有しておる。
プロトピックと同じく、シクロスポリンは免疫抑制剤なのじゃが、プロトピックが外用(軟膏)として使用するのに対して、シクロスポリンは内服薬として使用される。
プロトピックで問題とされる発ガンの問題は、シクロスポリンの場合も、当然、つきまとうことになる。
正式にアトピー性皮膚炎の適応が認められたのが2008年じゃから、問題が表面化するにはまだ数年先のことになるじゃろう。
実際、プロトピック軟膏も、発ガンのリスクが発売当初から言われて続けながら、厚生労働省がそのリスクを認めたのは、発売後、数年経過してからじゃ。

今後、アトピー性皮膚炎の治療で、新薬として内服のシクロスポリンを処方された場合は、注意が必要じゃろう。

ところで、このシクロスポリンのところに記載で、ある矛盾に気づいた人はおるかの?

それは「感染症に対する注意の喚起」じゃ。
シクロスポリンと同じ免疫抑制剤であるプロトピック(タクロリムス軟膏)には、この記載がないのは変じゃと思わんか?
もちろん、内服と外用の違いがあるのじゃから、吸収の度合いの差は生じるじゃろう。
じゃが、プロトピックにしろ、シクロスポリンにしろ、薬剤として効果を発揮しいてる=免疫を抑制した結果、ということじゃから、シクロスポリンだけアトピー性皮膚炎に対する感染症の注意を喚起しておるのは、片手落ちともいえるじゃろう。

これは、今の医師の現場において、アトピー性皮膚炎に対して感染症がどのような悪化因子になっているのかを、あまり重要視しておらんせいでもあるのじゃが、シクロスポリンと同様の注意を払って、ステロイド剤やプロトピックの使用の際は、感染症にも注意を払って欲しいものじゃ。

さて、これで「薬物療法」のところまで述べてきたわけじゃが、今回のガイドラインの残りの項目は「悪化因子の検索」「生活指導・合併症」「アトピー性皮膚炎と白内障」「その他の治療法」とあるのじゃが、明日と明後日は、ジョシュアくんがブログを書くようじゃから、続きは、29日以降に書きたいと思う。

 
おまけ★★★★南のつぶやき

シクロスポリンの内服は、かなり古くから臨床試験などで、アトピー性皮膚炎の人に使われてきました。
私も、過去に何度か、シクロスポリンを内服してきた方のご相談を受けていますが、中断後のリバウンド症状は、全身に及んでいたのが印象的でした。
内服である以上、その影響は全身に出やすいわけですので、使用する人は、慎重に自分の状態を見ながら、主治医に相談された方が良いでしょう。
また、昨年の学会で、シクロスポリンの処方に対する説明が行われたところ、医師の間から、副作用の出現に対する見極めなどに対して、質問が相次いだそうですが、そのような現状下の中、処方されていることも承知しておいた方が良いでしょう。