アトピー治療のガイドライン(5)

昨日までで、ガイドラインに載っておるステロイド剤について述べてきた。
今日は、最近、処方が増えてきているタクロリムス軟膏(プロトピック)についてみていきたい。

 

 

 

 

 

 
 

(日本医事新報 NO.4447(2009年7月18日)より)
2.薬物療法

2)タクロリムス軟膏

タクロリムスは副腎皮質ステロイドとはまったく異なる機序でTリンパ球の機能を抑制する。タクロリムス軟膏はステロイド外用薬では治療が困難であったアトピー性皮膚炎に対しても、高い有効性を期待しうる。しかし、本薬の薬効は薬剤の吸収度に依存しており、塗布部位およびそのバリア機能の状態に大きく影響を受ける。2歳未満の小児には安全性が確立していないため使用できない。また妊婦や授乳中の婦人にも使用しない。
本薬を用いる場合、1回塗布量が0.1%成人用では成人で1回1g、0.03%小児用については2~5歳(20kg未満)では1g、6~12歳(20kg以上50kg未満)では2~4g、13歳以上(50kg以上)では5gを超えないようにする。さらに、1日の使用回数は2回までとする。1回1gの外用量で成人の手4枚分の面積に外用できる。
本薬はしばしば塗布部位に一過性の灼熱感、ほてり感などの刺激症状が現れることがあるが、皮疹の改善に伴い消失することが多いので、あらかじめそのことを患者に説明しておく。経皮吸収のよい顔面や頚部にはきわめて有効である。
ステロイド外用薬による局所性副作用が認められる部位など、ステロイド外用薬等の既存療法では効果が不十分、または副作用によりこれらの投与が躊躇される場合には高い適応を有する。
なお、体幹、四肢を対象とした本薬(成人用0.1%)の有効性はストロングクラスのステロイド外用薬とほぼ同等である。強力な薬効を必要とする重症の皮疹を生じた部位に使用する場合には、原則として、まずベリーストロングクラス以上のステロイド外用薬により皮疹の改善を図った後に、本薬に移行するとよい。本薬との使い分けによってステロイド外用薬の使用量を減量しうる場合も少なくない。本薬により皮疹の改善が得られれば、適宜1回塗布量を減少ないし塗布間隔を延長する。
本薬の血中への移行が高まる、刺激性が強まる可能性が考えられる部位、皮疹、すなわち粘膜および外陰部、びらん・潰瘍面には使用しない。

 

今回、掲載している記事は、2009年7月6日のものじゃ。
実は、タクロリムス軟膏(プロトピック)は、臨床で使用されるようになった当初から、発ガンの問題が指摘されておった。
本来、主成分であるタクロリムス水和物は、免疫抑制剤として、臓器移植などに使用されている薬剤じゃ。
この臓器移植の際の免疫抑制作用による、発ガンの報告は多く、上記の文中にあるように、血中に吸収されて効果を発揮する関係からも、この発ガンについては一部の医師から危険視されておったのじゃ。
当初は、この発ガンのリスクは非常にわずかなものであり、自然発生する発ガンのリスクと有意差が認められず安全だと、されておったのじゃが、先行して使われた欧米諸国において、次々とアトピー性皮膚炎の人に使われて、発ガンした論文が発表され、ついに、昨年の8月には、日本においても、厚生労働省が、国内で発ガンの例が疑われる患者が発生したことから、処方する際には、発ガンのリスクがあることを患者側に伝えるよう、異例の通達を出したんじゃ。

 
●アトピーQ&A第14回 プロトピック軟膏は子どもにとって安全?
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=atopifaq&c2=14&c3=1

 
じゃが、通達後、あとぴナビに相談に来られた方の中で、プロトピックを処方されている方、あるいは新たに処方された方で、そのリスクの説明を受けた方は、ほぼ皆無の状況だった。
逆に、発ガンの危険について尋ねたところ、そのようなエビデンスはないから安心しなさいと言われたケースがあったほどじゃ。

今回のアトピー治療のガイドラインの記事は、今年の7月に掲載されたものじゃ。
日本皮膚科学会が以前に作成したアトピー治療のガイドラインを元に作られておるようなので、注意書きの加筆は特に加えなかったのかもしれん。
じゃが、本来、患者側にとってみれば、この情報は大きな意味を持っておる。
そういったことも含めて考えてみると、厚生労働省の通達後、約1年近くたった今も、医師に向けた治療のガイドラインの中に、そういったリスクについて、全く触れられていないのは残念なことじゃ。

それと、タクロリムス軟膏(プロトピック)も、炎症を抑えるという働きは、免疫抑制作用によるものじゃから、ステロイド剤と同じく、感染症に対しては、悪化させる方向にあり、ステロイド剤が抱える問題点と同じ問題を抱えることも知っておいた方が良いじゃろう。

明日は、薬物療法の最後、「全身療法」についてみていきたい。

 
おまけ★★★★西のつぶやき

プロトピック軟膏は、現在、ステロイド剤に変わる薬剤として、積極的に使用されている薬剤だ。
だが、今日の博士のブログであったように、本来、患者側に告知されるべきリスクは、全く伝えられていないのが現状だ。
ガン発生のリスクは、確かに、相当確率が高いリスクではない。
だが、分母となる使用する患者数が増えれば、必然的に分子となる発ガン患者も増加することになる。
特に、子どもに対する使用は、症状が長期化すれば、使用期間も長期化しやすく心配な部分だ。