アトピー治療のガイドライン(4)

今日は、昨日の続きで、ステロイド剤についての後半部分を見ていきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

(日本医事新報 NO.4447(2009年7月18日)より)
2.薬物療法

1)ステロイド外用薬 (昨日の続きから)

乳幼児、小児においては通常、より少量の初期外用量で開始されるが、体重を元に一日使用量を成人での使用量から換算し、目安とする。
炎症症状の鎮静後にステロイド外用薬を中止する際には、急激に中止することなく、症状を見ながら漸減あるいは間欠投与を行い、徐々に中止する。ただし、ステロイド外用薬による副作用が明らかな場合は、この限りではない。
顔面は高い薬剤吸収率を考慮して、原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用薬を使用する。また腋窩、鼠径部、陰部でもステロイドの経皮吸収率が高いので、不可逆性の局所副作用である皮膚線状を引き起こさないように十分に注意する。その場合でも1日2回の外用は1週間程度にとどめ、間欠投与に移行し、休薬期間を設けながら使用する。

(中略)

ステロイド外用薬に対する誤解(ステロイド内服薬の副作用と混同、およびアトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用薬の副作用との混同が多い)から、ステロイド外用薬への恐怖感、忌避が生じ、コンプライアンスの低下がしばしば見られる。その誤解を解くためには十分な診察時間をかけて説明し、指導することが必要であり、それが治療効果を左右する。第二指の先端から第一関節部までチューブから押し出した軟膏量が、成人の手で2枚分、すなわち体表面積のおよそ2%に対する外用適量である。

(中略)

外用回数は1日2回(朝、夕:入浴・シャワー後)を原則とする。症状が軽快したら1日1回とする。ただし、ストロングクラス以上のステロイド軟膏は、1日2回外用しても1回外用しても治療効果に有意差はない。外用回数が少なければ副作用が少ないことを考慮すると、急性増悪した皮疹には1日2回外用して早く軽快させ、軽快したら1日1回外用してもらうようにするのが良い。ただし、マイルドクラスの場合には、1日2回外用のほうが1日1回外用よりも有効である。

 

まず最初に、ここで書かれておるのが、ステロイド剤を中止する際には、急激に中止することなく、症状を見ながら少しずつ減らしていくことが大事、ということじゃ。
ここで問題なのは二つじゃ。

一つ目は、ステロイド剤は長期間使用することで、「効かなくなってくる」ということじゃ。
これは、長年アトピー性皮膚炎で悩んできた人であれば、炎症、痒みに効かなくなって、強いランクのステロイド剤に変わっていくという状況は、ほとんどの人が経験しておることじゃろう。

なぜ、ステロイド剤が効かなくなるのじゃろうか?

今の医師の説明は「アトピー性皮膚炎が増悪したから」という答えが多い。
医師はアトピー性皮膚炎の炎症を、火事に例えることが多いが、火事でいえば、火の勢いが強くなったから、強いステロイド剤(消火剤)でないと効かない、というわけじゃ。
じゃが、ここで興味深いエビデンスがある。

それが、長期間ステロイド剤を使用し続けると、ステロイド剤を体に吸収するための受容体が消失した、というエビデンスじゃ。

エビデンスの内容を簡単に言うと、「ステロイド継続が26日間であれば受容体の回復が見られたが、2年間の場合は、その後、6週間にわたりステロイドなしで細胞を培養しても、受容体の回復が見られなかった」というものじゃ。
ステロイドの受容体が減るということは、ステロイドが効かなくなることを示しておる。
このエビデンスは培養で行われており、実際の臨床の場における皮膚への塗布とでは条件は違うが、「ステロイドを塗り続けているとだんだん効かなくなり、強いレベルのものに移行するが、それも最終的には効かなくなる」という実際の患者の意見が非常に多いことから考えると、このエビデンスもうなづける。

そして二つ目の問題は、長期間、ステロイド剤を使用してきた人が、果たして少しずつ減らしながら、ステロイド依存の状況から抜けれるのか、ということじゃな。

これも、ステロイドを塗布して16時間密封したところ、その後、塗布をせずに2週間経過しても、ステロイド剤の薬理作用の影響が確認できた、というエビデンスがある。
つまり、ステロイド剤は一定期間、皮膚に蓄積するため、断続的な使用では、ステロイド剤の影響が抜けきることが難しい、ということじゃ。
実際の臨床の場において、密封療法が常に行われておるわけではないが、この蓄積効果は、使用期間に比例すると推測されており、数年にわたり使用を続けてきた人の場合、その影響も長くなりやすい。

これらのエビデンスは、下記の特集の3P目にに詳しく掲載されておるので、興味のある人は見て欲しい。

 
●感染症の克服がアトピーのカギ 感染症ってなに?どうしてかかるの?
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=42

 
このように、ステロイド剤には、皮膚への蓄積、受容体の減少などによる、長期連用の影響及び、減らしながらの使用が難しいことがあるのじゃが、リバウンド時に減らしながら使用することの問題として、感染症の問題がある。

リバウンド時における悪化した皮膚症状の何割かは、感染症による症状じゃ。
じゃが、ステロイド剤は、免疫を抑制することで炎症を抑え、痒みを緩和させる薬剤じゃから、使用することで感染症は悪化させてしまう。
つまり、リバウンド時や、通常時で感染症が悪化した状態のときに、ステロイド剤を併用すると、皮膚下における炎症反応は抑制してくれても、感染症そのものは悪化させ、一進一退の症状に陥りやすい、ということじゃ。
この、ステロイド剤を減らしながら使用していると、症状が急激に悪化した状態になる、という状況は、体感している人も多いはずじゃ。

今の医師の見解においては、このステロイド剤を中断、あるいは減らしながら生じる悪化状態は、それまで抑えられていた炎症がステロイド剤を使用しないことで、強く反応することで、悪化状態に陥る、と説明されることが多いようじゃが、感染症を悪化させておることにより生じている部分もあるんじゃ。

実際、ほとんどのステロイド剤の薬剤に添付されている説明書には、禁忌症状(使用してはいけない症状)として感染症が書かれておる。
カポジ水痘様発疹症(ヘルペスが悪化した感染症)と診断されながら、ステロイド剤が処方されたなど、他の医師が聞いてびっくりするようなケースも耳にすることがある。

皮膚表面に、赤いブツブツや水泡状の湿疹が現われている、ジュクジュクした炎症が出ている、皮膚表面に鈍い痛みがある、などの場合には、感染症にかかっている可能性があるので、十分注意して欲しいと思う。

明日は、タクロリムス軟膏(プロトピック)について述べたい。

 
おまけ★★★★東のつぶやき

このガイドラインでは、顔など吸収が良い部位への使用は、1日2回を最大1週間程度でとどめて、間欠投与に移行するように書いていますが、実際の治療の現場において、それが遵守されていないケースも多いようです。
逆に、症状がなかなか引かなければ、強いクラスのステロイド剤に変わることの方が多く、また感染症などの検査が定期的に行われることもありません。
ステロイド剤がアトピー性皮膚炎の炎症、痒みをどのように抑えて、どのようにアトピー性皮膚炎の「症状」に悪化した影響を及ぼすのか、処方する医師は、「安全な薬剤」という前提で考えるのではなく、これだけ副作用の報告や悪化した報告が多い現状を踏まえ、「慎重に使う薬剤」という前提で考えて欲しいところです。