アトピー治療のガイドライン(2)

昨日は、今の医師が行う「治療の目的」と、その目的に潜んでいる矛盾点について述べた。
その治療として行われておるのが「薬物療法」なのじゃが、今日は、その点について考えていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

まずは、日本医事新報に掲載されておった「アトピー性皮膚炎治療の考え方」の「薬物療法」のところを挙げてみよう。
「薬物療法」に関する記載は、「(1)スキンケア」「(2)炎症に対する外用療法」「(3)全身療法」の三つの項目からなっておる。
今日は、最初の「スキンケア」の記載を見てみたい。

 
(日本医事新報 NO.4447(2009年7月18日)より)
2.薬物療法

アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる薬物療法はない。よって、対症療法を行うことが原則となる。

(1)スキンケア

乾燥およびバリア機能の低下を補完し、炎症の再燃を予防する目的で、ステロイドあるいはタクロリムスを含まない外用薬(保湿薬・保護薬など)でスキンケアを行う。
すなわち、軽微な皮膚症状に対しても外用療法を継続する必要があり、これを怠ると炎症が容易に再燃し、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏使用の意義の低下につながる。1日2回の保湿薬(ヘパリン類似物質含有製剤)の外用は、無処置群(無外用群)に比べてアトピー性皮膚炎の炎症の再燃を有意に抑制することが報告されている。

(中略)

スキンケアでの維持療法中にアトピー性皮膚炎の再燃が見られた部位については、炎症の程度に応じてステロイド外用療法あるいはタクロリムス外用療法に戻り、炎症の早期鎮静化および維持療法へと回帰することを目指す。

 
アトピー性皮膚炎の主たる症状(炎症→痒み)の要因といえる、乾燥とバリア機能の低下の補完としてスキンケアの必要性を記載しておるのじゃが、このこと自体について特に異論はない。
問題は、「乾燥」という部分に対する処置として、皮膚の機能を考えた場合に、スキンケアの内容を一律で捉えておることにある。

アトピー性皮膚炎で角質層の問題が何かというと、次の二つじゃ。

 

1)角質層の水分保持能力の低下に伴う乾燥

この部分は、次に挙げる「バリア機能の低下」にもつながるし、角質層の乾燥自体が、痒みを知覚する神経線維を表皮から角質層内に伸ばしてしまうことで、アレルギー的要因とは別に、皮膚への直接の刺激などにより痒みを生じさせることにある。
じゃが、アトピー性皮膚炎において、角質層の機能が相当低下した状態においては、水分そのものが相当に失われており、保湿などにより水分保持能力の低下を補完するだけでは、角質層が潤うことは難しい。
極端な例えを言うと、「砂漠(相当乾燥した肌)にシート(保湿)をかぶせても、シートの下は潤わない」ということじゃ。
何が必要かというと、シートで覆う前に「水分補給」が必要、ということじゃ。
もちろん、医師が行うスキンケアの主体は「軽微な皮膚症状」にあるわけじゃから、相当な乾燥状態がこれに含まれるわけではない。
じゃが、「相当な乾燥状態」の皮膚に対して行われる医師の治療は、ステロイド薬を第一選択肢とするということにある。
つまり、乾燥した角質層に本来必要な「水分の補給」というところを重視しておらん、ということじゃな。
角質層に必要なのは、水分であって、その上を覆う皮脂膜は、その水分が蒸散してしまうのを防ぐことを目的としておる。
そして、アトピー性皮膚炎の人にとって必要な「角質層の水分保持能力の低下に伴う乾燥」に対するスキンケアとは、この「水分の補給」と「水分の蒸散を防ぐための保湿」という二つが必要と言うことじゃ。

 
2)バリア機能の低下

皮膚は、乾燥したり、掻き壊しなどにより、バリア機能が低下することになる。
このバリア機能の低下は、外部からの異物の接触による炎症(アレルゲンや接触性皮膚炎など)を引き起こしたり、感染症を引き起こすことになる。
特に、感染症に罹りやすくなる、という状況は、アトピー性皮膚炎の人の多くに共通して見られるのじゃが、それは、このバリア機能の低下が原因の一つになる。

したがって、バリア機能を補完することが必要になり、「保護」を目的としたスキンケアが必要になるんじゃ。
このように、スキンケアとは本来、皮膚の状況に合わせて、保水、保湿、保護の三つを考える必要があるんじゃ。
この皮膚の状況とは、医師が言う軽微な状況である「炎症状に乏しく乾燥症状主体」であっても、この三つを組み合わせて考えなければいけないことは多い。

例えば、汗をかけるか、汗をかけないのか、という状況も、このスキンケアには深く関わっておる。
なぜなら、自らの体が行うスキンケアとは、皮脂膜をどのように作るのか、ということじゃが、これは汗と皮脂が関わっておるからじゃ。

じゃが、医師が行うスキンケアは、実質、「保湿」のみを考えたスキンケアになっておるから、皮膚の状況に合わせた対処ができておらん状況を、良く見受ける。

アトピー性皮膚炎の患者は、自らの皮膚の状況が、どのような状況なのかを良く見極めて、適したスキンケアを行うことを心がけたいものじゃ。

明日は、次の「炎症に対する外用療法」について考えたい。

 

おまけ★★★★博士のつぶやき


上記の文章中においては、保湿薬として「ヘパリン類似物質含有製剤」が出ておるが、良く使われるのは「ヒルドイドクリーム」「ヒルドイドローション」などじゃ。
じゃが、このヘパリン類似物質の働きとは、血行を良くすることにある。
ここで言う血行とは、むろん、塗布した部位の皮膚表面の血行を指しておる。
もちろん、保湿作用もあるとは書かれておるが、ヘパリン類似物質は、凍傷や血行障害に基づく炎症性疾患などの治療薬として用いられており、血行を促進させる働きが主たる目的であり、角質層の水分をどのように保持し、どのように水分蒸散を防ぐのか、という観点のものではない、ということじゃな。
とはいえ、医師が処方する以上、「保険適用」される「薬剤」である必要があるから、どうしても選択肢はせまくなるのかもしれんが、逆に考えれば、「保険適用」される範囲内で選択している以上、皮膚の状態に合わせた最適なものを選ぶことは難しい、ということでもあるのじゃろう。