家庭医は「森」が見えるのか?

先日、日経新聞の「インタビュー 領空侵犯」というコラムで、京都大学の鎌田教授が「風邪薬を安易に飲むな」というインタビュー記事が掲載されていました。

 

 

 

 

 
その中で、鎌田教授は、

「現代人はあまりにも薬に頼りすぎています。ちょっとした風邪でもすぐに薬を飲んで、症状を緩和させて仕事を続けようとする。そうやって無理をするのが体に良いはずがありません。風邪をひいたら人間の体が本来持っている自然治癒力を生かして、休養を取ればよいのです」

と述べています。
さらに、病気の症状を部分的に見て、その部分に対応する「対症療法」に走るのではなく、もっと体全体のことを考えた治療を行っていくべきである、ということを述べていました。

鎌田教授は、火山学の専門家ですが、地球科学の分野では最近、細分化された要素研究から脱して、地球全体のことを統合的に研究する必要性が認識されるようになってきており、そんなところから、西洋医学や日本の医療行政にも関心を持つようになったそうです。

この記事に関しては、「日経ネットPlus」のフォーラム内で、この「木を見て森を見ない現代医療では根本解決にいたらない」ということで、他の識者の投稿を読むことができます。
興味のある人は、下記で記事を検索してみてください。

 

●日経ネットPlus
http://netplus.nikkei.co.jp/index.html

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その識者の意見の中で、今年から「家庭医認定制度」が始まった、ということが書かれていました。

医療には、予防・診断、治療・リハビリ、という4つのプロセスがあるのですが、その中で「予防」と「リハビリ」というプロセスは、医師の収入に直結しづらい保険制度の関係上、現在、軽んじられている傾向があり、特に「予防」というプロセスを強化する意味合いで、「家庭医」を養成しようということでした。

そして「森を見る家庭医」と「木を見る専門医」が上手に連携することで、総合的な医療サービスが提供できていくのでは、という内容でした。

イギリスでは、昔から「ホームドクター」と呼ばれる制度があり、患者はまずホームドクターに相談、ホームドクターは、診療・治療も行うのと同時に、その疾病の度合いに応じて、どの分野の医師に受診すれば良いのかをアドバイスを行ったりしています。
今回の家庭医の制度は、同様の意義を持っているものと考えられます。

今年の秋には、家庭医の最初の試験の合格者が発表されるそうなので、少しずつ話題になってくるものと思います。

多くの病気は、「予防」という概念がしっかりしていれば、未然に防ぐことは十分可能です。
アトピー性皮膚炎の場合も同じでしょう。

まずは毎日の食事のバランスを考え、睡眠を十分にとる。
そして、運動や入浴で、代謝をしっかり上げて、自律神経や内分泌のバランスを整えることを意識できれば、免疫機能が異常にいたることも少なくなり、結果的に、アトピー性皮膚炎予防につながるでしょう。

ただ、家庭医の制度が本格的に導入されたとして、各疾病の予防と、その疾病の治療という両面を「正しく」医師が認識しないと、意味がないことになります。

今のアトピー性皮膚炎を、多くの皮膚科医は「皮膚の異常」と捉えて、薬剤による「皮膚の治療」を第一に行います。
しかし、アトピー性皮膚炎により皮膚に生じる炎症・痒みは、病気により生じた「結果」でしかありません。
風邪をひいて「熱」という症状がでたからといって、「熱」を下げる治療を行っても、風邪の治療にはいたっていないのと同じです。

「家庭医」という制度は、有意義だと思いますし、「予防」というプロセスを大事にすることも素晴らしいことだと思います。
しかし、今のアトピー性皮膚炎の治療の実態からは、その「予防」を行う「森を見る家庭医」が、「木を見る家庭医」になってしまう危惧をどうしても感じてしまいます。

この家庭医の普及のカギは「国民意識の変化」にあることが載っていました。
ただ、国民意識が変化するだけでは足りないように思います。
森を見る、ということは、病気だけではなく、関係性も含めて全てを見る、ということです。
アトピー性皮膚炎でいうならば、「痒み」「炎症」という皮膚の症状ではなく、「なぜアトピー性皮膚炎が発症したのか」ということを、患者の生活の中からヒントを見つけていかなければなりません。

現在の、アトピー性皮膚炎の治療において、皮膚を見るのではなく、患者の生活を見る治療は、事実上、行われていないのが実態です。

家庭医が今のいろいろな疾病の治療の延長線上で、「予防」というプロセスを考えると、「木を見る(症状を見る)」ことの集合体が「森を見る(病気を見る)」と勘違いしてしまい、森を見ているつもりが、結果的に「林」を見ていたという状況に陥らないことを祈るばかりです。

 

おまけ★★★★北のつぶやき

この前、古本屋で「Dr.コトー」という漫画を買ってきました。
テレビドラマで、知ってる人もいますよね!
僻地医療では、人員や設備の不足もあるので、細分化された「木を見る」医療は望めません。
そのため、必然として「森を見る」医療が中心となります。
まさしく、今日の東くんのブログに書かれていた「家庭医」の在り方が、その漫画にはあったように感ました!
日本の医療が良い意味で変われる、きっかけになれば良いですね。