患者の防衛意識

月一、ブログを書いている西だ。

 

 

 

 

 

今日は、昨年9月26日にニュースで取り上げられた「プロトピック軟膏」の、その後の状況を報告したい。

昨年9月26日の産経新聞で、下記のニュースが報道されたことは、覚えている方も多いだろう。

 

◆2008年9月26日産経新聞

アトピーの新薬治療 添付文書改訂を指導

ステロイドに代わる新たなアトピー性皮膚炎の治療薬として注目されているアステラス製薬(東京都中央区)の「プロトピック軟膏(なんこう)」について、厚生労働省が「使用上の注意」(添付文書)の改訂を指導したことが25日、分かった。
厚労省は医療関係者向けの警告欄に「本剤使用例において関連性は明らかではないが、リンパ腫、皮膚がんの発現が報告されている」と記載するよう先月8日に指導。処方する際は患者や保護者に説明することを求めている。
これまで同軟膏の警告欄には、リンパ腫、皮膚がんの外国での報告例が記載されていた。
厚労省は「リンパ腫、皮膚がんの報告が国内で年1例程度寄せられているため、改訂を指導した。因果関係を特定するのは難しい」(安全対策課)としている。

 

内容を簡単に説明すると、厚生労働省が、アトピー性皮膚炎の新薬として数年前より使われてきた「プロトピック軟膏」を使用する際には、国内で発ガンの報告が年1例程度出ているために、その警告を薬剤の添付書に記載すること、さらに医師は患者に処方する際には、発ガンのリスクを説明するよう指導した、という内容だ。

では、その後、医療現場において、それらの指導は守られているのだろうか。
あとぴナビに相談に来る方の中で、10月以降、新たにプロトピック軟膏を処方された患者37名に、状況について聞き取り調査を行った。

その結果は驚くべきものだった。

まず、厚生労働省が発表したこれらの指導にそって、発ガンのリスクの説明を受けた患者は0人だった。
さらに、大まかにどのような説明を受けて処方をされたかを聞くと、下記のようなグループに分かれた。

 
1.アトピー性皮膚炎の新薬、という説明・・・・25人
2.発がんなどのリスクが言われることがあるが、国内において明確なエビデンスはなく、安全な薬だから、という説明・・・・4人
3.その他・・・・8人(特に説明を受けなかったケースを含む)

 

厚生労働省からは、発ガンのリスクを患者に説明するようにという指導がありながら、逆に、発ガンについては安全だから、という説明を行っていたケースがあったのには驚いた。
さらに上記37名中、小児に処方されたケースは約半数の18例だった。

また、指導を受けたアステラス製薬のホームページを見ると、「プロトピック軟膏の安全性について」というページには、上記の厚生労働省からの指導については、一切、コメントがなく、逆に安全だという見解のみが掲載されていた。

 
◆プロトピック軟膏の安全性について
http://www.astellas.com/jp/topics/proto.html

 

プロトピック®軟膏の安全性について

「プロトピック®軟膏」の安全性について

2005年4月
アステラス製薬株式会社

当社のアトピー性皮膚炎治療剤『プロトピック®軟膏』(一般名:タクロリムス水和物)につきましては、国内では、1999年11月より成人用0.1%軟膏、2003年12月より小児(2歳以上)用0.03%軟膏の発売を致しております。本製品は日本だけでなく、米国・欧州・アジアを含む30以上の国々で承認・販売されております。
プロトピック®軟膏の有用性は十分に証明されており、当社と致しましてはアトピー性皮膚炎にお悩みの患者様にとって有用な製品であると確信しております。
本製品につきましては、発がん性の懸念等が一部マスコミにおいて報道されましたが、世界で実施された臨床試験例1万9千人(小児7千6百人を含みます)及び市販後300万人以上の使用例において、発がんリスクの増加は認められておりません。当社が実施した動物試験(マウスがん原性)の成績、臨床試験から得られた本剤の血中濃度推移、さらに上記動物試験がヒトと比べたとき明らかにリンパ腫を好発することが知られているマウスを用いた試験であることを考慮しますと、添付文書に記載されております用法・用量で適正に使用していただければ、成人用、小児用とも安全性(発がん性)の問題は生じないものと判断しております。
当社は、今後も引き続き本剤が安全にお使いいただけるよう、適正使用の推進に真摯に取り組んでいく所存でございます。

以上

米国におけるプロトピック®軟膏の添付文書改訂について

2006年1月
アステラス製薬株式会社

このたび、弊社の米国子会社アステラス ファーマ US, Inc.が、米国で販売しておりますプロトピック®軟膏の添付文書を一部変更いたしました。本件に関して、同社が現地で現地時間1月19日に対外発表を行ないましたが、その内容についてはアステラス ファーマUS, inc. リリースを参照下さい。
今回の改訂は、米国において本剤の適正な使用をより一層推進するためのものであり、新たに重大な副作用が発生したというものではありません。日本国内で販売しているプロトピック®軟膏0.1%(成人用)、プロトピック®軟膏0.03%小児用(2歳以上用)については、添付文書の警告、禁忌や使用上の注意等で今回の米国における改訂内容は既にカバーされていると考えております。従来どおり、適正なご使用を賜りますようお願い申し上げます。
弊社は、1999年11月よりプロトピック®軟膏0.1%(成人用)を、2003年12月よりプロトピック®軟膏0.03%小児用(2歳以上用)を国内で発売しております。本製品は国内のみならず、米国・欧州・アジアを含む45以上の国々で販売されております。これまで、臨床試験症例1万9千人(小児7千6百人を含みます)及び市販後300万人以上の方々にご使用いただいており、日本および海外においても本剤の有用性は広くご評価いただいております。
弊社は、今後も引き続き本剤の使用状況に関する情報等の収集に努め、適正使用の推進に取り組んでいく所存でございます。

以上

欧州におけるプロトピック®軟膏の添付文書改訂について

2006年3月
アステラス製薬株式会社

このたび、弊社の欧州子会社アステラスファーマヨーロッパ Ltd.が、欧州で販売しておりますプロトピック®軟膏の添付文書を一部変更いたしました。今回の改訂は、欧州において本剤の適正な使用をより一層推進するためのものであり、新たに重大な副作用が発生したというものではありません。従来どおり、適正なご使用を賜りますようお願い申し上げます。

以上

 

2009年2月21日現在では、上記の3つのみの報告がなされている。
もちろん、厚生労働省の発表にあるように、プロトピック軟膏と発ガンの因果関係は明確にされてはいない。
しかし、外国においては、プロトピック軟膏の発ガンに関する論文は、相当数発表されており、そのリスクが皆無であるとは、とても断言はできないだろう。

もし、今、これらの警告に沿わずに処方を受けた子どもたちが、5年後、10年後、何らかの発ガンのリスクにさらされた場合、その責任は誰が取るのだろうか?

製薬会社?、指導を徹底できなかった厚生労働省?、処方した医師?

今の日本の状況をみる限りにおいて、その責任は誰もとらずに、結局、「泣きを見るのは患者」ということになりかねないように感じる。
患者自身が、自己防衛意識を必要とする社会が、健全だとは思えないが、少なくとも、一方の情報だけに踊らされることのないよう、注意したいものだ。

 
おまけ★★★★西のつぶやき

ステロイド剤から、プロトピックに処方を切り替えるときの医師の説明で、「プロトピックはホルモン剤ではないから安全ですよ」と話す医師が、ときどきいる。
大間違いである。
ステロイド剤は、ホルモン剤だから危険なのではない。
もちろん、ホルモン剤だから生じるリスクはある。
だが、それと同等以上に危険なのは「免疫抑制剤」だからである。
なぜ、ステロイド剤と同じ免疫抑制剤であるプロトピック軟膏を、安全だと言い切れるのか、理解に苦しむ。