脱保湿ってアトピーに良いの?

今日は、読者からいただいたメールのご質問に答えたいと思う。

 

 

 

◆40歳・女性の方からのご質問

子どものころからのアトピーで、毎年、冬になると乾燥でひどくなります。今までは近所の皮膚科に通っていたのですが、最近、知人から紹介されて、病院を変えました。そこで、アトピーの人は、肌の保湿力を弱めるから、スキンケアは行わない方が良いと言われました。その方が、早く肌の状態が良くなる、ということなのです。これから、乾燥する季節を迎えますが、スキンケアはせずに我慢した方が良いのでしょうか?

しばらく前に、脱保湿という方法が話題になったことがある。
文字通り、保湿を行わない方法じゃ。

人間の皮膚は、皮脂膜で覆われることで、守られておる。
この皮脂膜は、汗腺から出る汗と、皮脂腺から出る皮脂が乳化することで作られる、いわゆる天然のスキンケアじゃ。
この皮脂膜を作り出す体の力は、外部からのスキンケアを行うことで、それに頼ってしまい、弱まるから良くない、ということから、スキンケアを行わずに自らの力を高めるようにするという「脱保湿」という方法が、使われていたのじゃ。

保湿する力を、自らの体に求めること自体は一理あるし、間違ってはおらん。
しかし、この脱保湿という方法は、「アトピー性皮膚炎」という病気そのものに効くわけではない。

まず、アトピー性皮膚炎にはいろいろなタイプがある。
乾燥するタイプ、ジュクジュクした炎症をもたらすタイプ、両方が入り混じっていたり、交互に繰り返したりと、その時々の環境や体調にも左右されることが多い。

また、痒みを知覚する神経繊維は、角質層の水分が失われることで、表皮内に侵入する。
皮膚の乾燥を放置することで、直接、皮膚が痒みの刺激を感じるようになることもあるのじゃ。
詳しくは、医療ナビのコーナーで特集記事があるのでそれを見て欲しい。

◆かゆみのメカニズムとアトピー
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=health&c2=1&c3=2

肌の乾燥も少なく、体の免疫系だけが、アトピー性皮膚炎の主な原因として関わっている人であれば、この「脱保湿」が有効な場合もあるじゃろう。
しかし、肌の水分不足が生じている人の場合、自らの体がしっかり、その状況を改善できるような保湿の力が育つのを待っている間に、乾燥からくる痒みの神経線維が伸びてくることで、皮膚自体が刺激に敏感になって、掻き壊しの状況は改善されにくいことになる。

さらに、スキンケアには、単に水分を保持する、という目的だけではなく、弱った肌のバリア機能を強化させる目的もあるのじゃ。

実は、体の免疫系が主なアトピー性皮膚炎の人でも、痒みが強く、掻き壊しがひどい場合には、肌のバリア機能も喪失している状況のため、そこから水分保持が出来なくなることもあるのじゃ。

したがって、掻き壊しが繰り返し続いている人はバリア機能を強化するためのスキンケアを、肌の乾燥が激しい人は肌の水分保持を行うためのスキンケアを行うことが必要になる。

もし、自ら保湿する力が育つまで待ってる間に、皮膚がダメージを受けて保湿する力、保護する力が弱まってしまえば本末転倒ともいえる。
特に、これから空気が乾燥する季節を迎えて、外的な要因が肌の状況を悪化させる可能性がある時期に、スキンケアを行わないということは、痒みがあっても肌のダメージがなく、さらに運よく自らの保湿する力が強くなるという状況を待つしかない。
じゃが、毎年、冬に乾燥しやすいということは、角質層のセラミド脂質が不足しているなど、肌の機能的な原因も関わっている可能性が高いから、そのセラミド脂質の不足状況も「待つ」だけで改善することは、ほぼ無理な話といえよう。

今は、脱保湿という方法が、あまり聞かれなくなったのも、その方法が有効になる対象の人が限られているためであって、「脱保湿」=「アトピー性皮膚炎の改善」とはならんのじゃ。

スキンケアとは、文字通り「ケア」であるのじゃから、必要に応じて適切なケアを肌に行うことは、痒みの神経繊維に関わる水分保持の部分、そして掻き壊しが見られる肌のバリア機能の維持・強化という面で大切なことといえるじゃろう。

ちなみにスキンケアは、上で書いたようにお肌の状態に合わせて必要なことではあるのじゃが、同時に、肌に非自己、すなわち見方によっては「異物」をつけることでもあるので、その内容には十分な注意は必要といえるじゃろう。
保護が必要な肌に水分保持を目的としたスキンケアを行っても浸みて痛むだけ、ということもあるし、逆に水分が必要な肌に保護を目的としたスキンケアを行っても水分が保持されるわけではない。
肌の状態に合わせたスキンケアの種類を選ぶことが大切、ということじゃな。
同時に、成分も十分、注意すべきじゃ。
合成の着色料や香料などは、見た目や臭いはいいかもしれんが、肌にとっては刺激の成分でしかないし、天然でも刺激の強い成分は良くないこともあるので、合わせて注意して欲しい。

 
おまけ★★★★東のつぶやき

以前、小児科の先生を取材したときに、脱保湿のことが話題に出たのですが、その先生がおっしゃっておられたのは、
「スキンケアが肌に異物を与えるので良くないということであれば、もし徹底した脱保湿を行うのであれば、衣類さえ否定することになるよ」
ということでした。
また、「肌には適合と耐性という二つの力もあるわけだから、必要に応じた「ケア」は、そのケアに依存するというデメリットが仮にあるとしても、もっと大きなメリットがある」
ということもお話されていました。
少し極論の部分はあるのかもしれませんが、なるほど、という部分は多かったですね。