| 2008 年 11 月 19 日 博士 |
前回まで、アトピーの悪化要因には、体内の免疫に関わる要素、皮膚の機能に関わる要素の二つがあることを述べた。
今日は、最後の要因となる薬物治療の影響について書きたいと思う。
現在、アトピー性皮膚炎の標準治療として行われているのが、ステロイド剤やプロトピック軟膏などの免疫抑制剤による治療じゃ。
その他、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、あるいは漢方などもあるのじゃが、圧倒的に中心になっているのは、免疫抑制剤といえよう。
実際、あとぴナビのアンケートでも、病院の治療法で最も多いのはステロイド剤じゃ。
そして、この免疫抑制系の薬剤は、薬剤そのものが持つ副作用という問題も抱えておるが、アトピー性皮膚炎に対しては、悪化要因の一つになることがあるのじゃ。
その大きな原因は二つある。
まず一つが、ステロイド剤やプロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎の症状を引き起こす原因であるIgEを増加させる傾向にある、ということじゃ。
確かに、これら免疫抑制系の薬剤は、炎症を抑えることで痒みを緩和させることができる。
しかし、その炎症をもたらしている一つの原因が、IgEにあるのじゃから、炎症を抑えつつ、IgEを増加させているのでは、何をかいわんや、じゃ。
もちろん、この影響は、短期に即、現れるというものではない。
だが、アトピー性皮膚炎に長年悩んでいる人は、長期間、それらの薬剤を使用することになる。
そのため、体内の免疫系に与える影響は、使用期間が長くなると、比例して大きくなりやすいといえる。
IgEの受容体は大きく分けると「高親和性受容体」「低親和性受容体」「IgE結合蛋白」の3種類があることが分かっておる。
高親和性受容体は、主に肥満細胞にあって、即時型の反応を示す(ショックや蕁麻疹など)
低親和性受容体は、主にケラチノサイト(皮膚の表皮を作る細胞)にあって、様々な炎症反応(サイトカイン産生)を示す。
そして最後のIgE結合蛋白の受容体は、主にB細胞(リンパ球)にあって、他のタイプのIgE受容体を通じて、IgE誘導の免疫反応を行い、IgEがIgEを増やすという悪循環に陥らせる。
分かりづらいかもしれんが、簡単に言うと、通常、B細胞が増強するのは、その司令塔ともいえるT細胞からの指示を受けてになる。
じゃが、アトピー性皮膚炎の方に特有のsIgE+B細胞(通常の人は、sIgE-B細胞)は、アレルゲン暴露により、IgEを増強させてしまうんじゃ。
そして、ステロイド剤などの免疫抑制剤は、このIgEの受容体に関わることで、逆にIgEを増強させてしまう。
このように、免疫抑制剤は、アトピー性皮膚炎の症状を一時的には抑えることができても、アトピー性皮膚炎の症状を生み出すIgEそのものは、少しずつ増強させてしまうことが問題の一つ目といえるんじゃ。
そして二つ目の問題は、アトピー性皮膚炎の人のほとんどが罹患している感染症を悪化させることにある。
アトピー性皮膚炎の人は、約9割以上が、何らかの感染症に罹っていることが分かっているが、当然、免疫を抑制する薬剤を使用する以上、それらの感染症を悪化させてしまうのじゃ。
ステロイド剤やプロトピック軟膏、あるいは今度、アトピー性皮膚炎の治療薬として認められたネオーラル(シクロスポリン)などの免疫抑制剤は、一時的に炎症、痒みといった、アトピー性皮膚炎の症状を緩和させることには役立っても、アトピー性皮膚炎という病気の原因は、何も治しておらん。
逆に、IgEを増強させることで、アトピー性皮膚炎という病気そのものを悪化させてしまったり、感染症を悪化させることがあることを、その治療を受けるアトピー性皮膚炎患者は、知っておくことが大切じゃろう。
これまで8回にわたり、アトピー性皮膚炎の発症要因と悪化要因を述べてきた。
では、アトピー性皮膚炎を克服していくためには、どのようにすれば良いのじゃろうか?
次回からは、「アトピー克服の条件」について書いていきたい。
おまけ★★★★西のつぶやき
今回、博士が書いたIgEがステロイド剤などの免疫抑制剤により増強することは、実は、古くからエビデンスで知られていたことだ。
だが、その影響について、治療を行う側が真剣に研究してこなかったことは、非常に残念でならない。
10年、20年とステロイド剤の治療を受けて、治らないと感じている人は大勢いる。
もし、その要因の一つが、言葉が悪いかもしれないが「マッチ・ポンプ」のような役割をステロイド剤が果たしていたことにあるのならば、これは大きな問題ともいえよう。
ぜひ、アトピー性皮膚炎の治療に携わる全ての機関は、ステロイド剤などの免疫抑制剤の治療がアトピー性皮膚炎の標準治療として必要だ、というのならば、「正しい薬剤の使い方」を、その治療を受ける患者の立場に立って、探っていって欲しいものだ。





